働き方改革関連法

2019年12月 6日 (金)

2019年11月28日(木曜日)大原記念労働科学研究所が2019年 第7回 労働科学研究所セミナー「誰もが生き生きと働ける社会を創る」(講演者・村木厚子氏)を開催

20191128日(木)14:0016:00

 公益財団法人 大原記念労働科学研究所が、講演者に村木厚子氏を迎えて、2019年 第7回 労働科学研究所セミナー「誰もが生き生きと働ける社会を創る」を開催した(場所 桜美林大学・新宿キャンパス)。

Logo

 

社員の強みを見つけ、それに合った仕事をさせるのが社長の仕事

障害が「ある・ない」は関係ない

 

変化の時代では「ずっと学び続けること」「異なるものとつながること」が大事

混乱を受け入れ乗り越えて

2_20191206155501

 

…………………………………………………

◆ 障害者雇用

…………………………………………………

 「人が働くことを応援する意味では何も変わらないこと」に気づくきっかけとなった社長さんの言葉

 

 村木氏は、講演の冒頭に

 「20年位前、労働省の障害者雇用対策課長になりましたが、そのとき私はたいへん戸惑いました。障害のある人と接点もなかったし、…不用意なことを言って、障害のある人の気持ちを傷つけるんじゃないかとか…自分のことを手足が縮こまって甲羅の中に首も手足も入った亀みたいだと思ったことも覚えています」と語った。

 そして、その気持を解きほぐしてくれたある社長の言葉を紹介した。
 

 「障害者をたくさん雇っている中小企業の社長さんが私に『社員の良いところ、何が得意か、何が強みかを見て、それに合った仕事をさせるのが社長の仕事、プロの経営者の仕事。だから障害のある・なしは関係ないんだ』と言ってくれました。それを聞いて、『ああ!そうか、私は20年間も労働問題を、人が働くことをやってきたんだ。障害があろうがなかろうが、その人が働くってことを応援するという意味で言えば今までやってきたことと何も変わらないんだ』ということを『はっ』と気がつき、それから、やっと普通に仕事ができるようになりました」と労働省時代のエピソードを語った。

 そして、「その人の強みをきちんと把握して、それぞれの人が自分の強みで仕事をする」というアメリカや一部の日本の企業で取り入れられている『ストレングス・ファインディング』という雇用管理の方法を紹介した。

 さらに、村木氏は、立ち仕事ができる車椅子が20年前に存在していたこと、階段が上れる車椅子があることを紹介し、「結局、社会しだい」であると語った。

 また、障害者雇用率制度については、「最初の頃に(企業が障害者雇用を)勉強するきっかけとなる『宿題』だと思っている」と述べていた。
 

4_20191206155501

…………………………………………………

◆ これからの社会に求められるもの

…………………………………………………

 令和の時代は「前向きな改革」を

 

 村木氏は、平成の時代では、「痛みを伴う改革」が行われたが、令和の時代は、「前向きな改革」が行われるべきと述べた。

 具体的には、「経済活動については、平成時代は、徹底的な効率化、労働分配率の抑制などが行われたが、令和の時代は、より創造的で付加価値の高い分野に資本と労働をシフトして生産性を向上させることが求められる。社会保障については、負担増と社会保障給付の効率化・重点化が行われたが、消費税10%で赤字がなくなるわけではない。令和時代には、税・社会保険料を払う人=働き手を増やすことが求められる。本当に苦しい改革だけですか? 危機意識をもって全員参加を」などと語った。

5_20191206155501

…………………………………………………

◆ 「働き方改革」でやるべきこと

…………………………………………………

 健康維持、フェアな処遇、仕事と生活の質の向上が「働き方改革の本質」

 村木氏は、「働き方改革」で行うべきこと(働き方改革の本質)として、

① 健康を維持し、家族を大切にすること(長時間労働の廃止)

② 様々な働き方をする人を公平に扱うこと(同一労働同一賃金、違うように働くので違う処遇となるがフェアでなければならない)

③ 仕事と生活の質を上げる多様で柔軟な働き方(場所と時間の柔軟化)

──の3つを掲げた。

 

…………………………………………………

◆ 変化の速い時代をどう生きる?

…………………………………………………

 変化の時代に対応するために

 学び続け異なるものとつながる

 村木氏は、「今ほど変化のペースが速い時代は過去になかった。だが今後、今ほど変化が遅い時代も二度とこないだろう」というカナダ・トルドー首相のダボス会議での発言を引用して、「変化の速い時代をどう生きるか」について、持論を展開した。

 

 村木氏は、ロンドンビジネススクール・マネジメント実践のリンダ・グラットン教授の日本に対する提言などを紹介し、変化の時代に対応するためには、①「ずっと学び続けること」、②「異なるものとつながること」──が重要であることを指摘。

 特に②については、ラグビー日本代表のエディ・ジョーンズ前監督が代表に多くの外国人を選んだことなどを例に出して、「日本人は『異なる人』と協力して何かを行うことが非常に苦手。強みであった『同質性』が欠点になっている。異なる人と協力することができれば新たな可能性が」と指摘。

 「必ず混乱が起こるが、それが科学的反応を起こし組織は強さを増す。混乱を受け入れ乗り越えて」と呼びかけていた。

3_20191206155501

 

 村木氏は、穏やかでときに熱く、スタンディング&ノンストップで2時間の講演を続けた。

 講演終了後、村木氏の前には、参加者が長い列をつくっていた。

 

…………………………………………………………………………………………………………

● 村木厚子(むらき・あつこ)

 厚生労働事務官(平成25年7月~平成27年9月)を務めた後、伊藤忠商事社外取締役、津田塾大学客員教授等にて活躍。著作に「あきらめない―働くあなたに贈る真実のメッセージ」(日経BP社)、「日本型組織の病を考える」(角川新書) 他多数。

…………………………………………………………………………………………………………

 

1_20191206155501

 

 次回(2019年 第8回 労働科学研究所セミナー )は、

2020年1月29日(水)14:00~16:00

桜美林大学 新宿キャンパス 3F J301教室

――にて開催される予定。

 

 テーマは、「働き方改革に使えるシフトワーク研究の成果」

 講師は、佐々木司氏(大原記念労働科学研究所 上席主任研究員)

 詳細はこちら

| | コメント (0)

2019年11月22日(金曜日)令和元年の「いい夫婦の日」に中央大学戦略経営研究科「ワーク・ライフ・バランス&多様性推進・研究プロジェクト」が「第11回成果報告会」を開催 ~テーマは「多様な人材が活躍できる企業経営を目指して」

20191122日(金曜日)13151745

令和元年の「いい夫婦の日」に中央大学駿河台記念館にて、中央大学戦略経営研究科「ワーク・ライフ・バランス&多様性推進・研究プロジェクト」が、プロジェクトの研究成果を報告する「第11回成果報告会」を開催した。

 

テーマは「多様な人材が活躍できる企業経営を目指して」

令和最初の「いい夫婦の日」(11月22日)に
カップルでの子育て実現のための支援など検討

P

 

 「ワーク・ライフ・バランス&多様性推進・研究プロジェクト」(共同代表・佐藤博樹中央大学大学院戦略経営研究科教授、武石恵美子法政大学キャリアデザイン学部教授)は、平成20年(2008年)10月に東京大学社会科学研究所と民間企業が共同して発足させたもので、ワーク・ライフ・バランス(以下「WLB」)の推進と働き方の関係などについて民間企業と共同研究を行ってきた。平成26年(2014年)4月からは、中央大学の後楽園キャンパスの戦略経営研究科(ビジネススクール)に研究拠点に移し、「多様性」を研究テーマに加えている。

 同プロジェクトは、これまで、人材の多様化へ対応するためのWLB支援の必要性や具体策、WLBと働き方の関係などについて調査研究・情報交換などを行い、成果については、政策提言としてとりまとめて発信している。

 研究成果を社会に幅広く還元することを目指して開催している「成果報告会」には、企業や自治体において人事管理や多様性推進に取り組んでいる担当者が毎年300人程度参加して、活発な議論が行われている。

 令和元年11月22日(いい夫婦の日)に開催された「第11回 成果報告会」では、「多様な人材が活躍できる企業経営を目指して」をメインテーマに、管理職の役割、女性活躍と男性の子育て、高齢者雇用、ダイバーシティ経営などに関する講義やグループディスカッション、パネルディスカッションが展開された。

 「多様な人材が活躍できる企業経営を目指して」

 「第11回 成果報告会」のプログラムは、4つの分科会が開催される第Ⅰ部と、全体会が行われる第Ⅱ部から構成されていた。

――――――――――――――――――――――――――――――

【第Ⅰ部】13:15~16:00 4つの分科会

――――――――――――――――――――――――――――――

第Ⅰ部(13:1516:00)では、ADの4つの分科会が開催された。

 

24_20191209133101

 

分科会A 変わる管理職の役割:「部下を伸ばす」管理職をどう生み出すか

A

A2

 

分科会B 女性活躍と男性の子育て

B

 

 分科会C 高齢者雇用を本気で考える:「福祉的雇用」から「活躍」へ

C

 

分科会D ダイバーシティ経営の基礎を学ぶ:マネジメントの役割

D1

 

 上記の4つの分科会では、企業からの事例報告や参加者全員で1つのテーマに対し意見を出し合ってグループの意見としてまとめあげるワークショップ、働き方改革に関するドラマを視聴し自らの考えを発表しあうコーナーなど、様々な趣向を凝らした講習が行われた。

 小誌では、主に分科会Dを取材したが、どの分科会も魅力的な内容で、この身が1つなのが悔しく「分身できたらなぁ」などと思ってしまった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――

分科会D

――――――――――――――――――――――――――――――

…………………………………………………………………………………………………………

《前半》佐藤博樹中央大学大学院戦略経営研究科教授が登壇

…………………………………………………………………………………………………………

 分科会Dの前半では、佐藤博樹中央大学大学院戦略経営研究科教授が、「ダイバーシティ経営の基礎を学ぶ」というタイトルで講義を行った。

 佐藤氏は、「ダイバーシティ経営の基本は『適材適所』だが従来『適材』としてきた『望ましい人材像』の見直しが不可欠。従来の『適材』のみでは必要な人材を質と量の両面で確保できない時代であり、多様な人材が新しい『適材』として活躍できる働き方改革などが不可欠になる」と説明した。

 そして、ダイバーシティ経営を実現するためには、

① 「理念統合」経営(企業の経営理念や行動規範などの社員への浸透と社員の深い関わり合いが不可欠)

② 多様な人材が活躍できる「働き方」の実現(「働き方改革=残業削減」ではない。安易な残業依存体質を変える)

③ 多様な部下をマネジメントできる管理職(WLB管理職)の育成・登用(自分と価値観などが異なることを前提に部下を知ること(仕事以外の生活面などでの希望や課題などを含めて理解すること)

――が重要であるとした。

 また、「定時退社の週2日以上の実現」と「残業を行う場合はまとめて(メリハリワーク)」が「働き方改革と生活改革の好循環」の実現のためには重要であることなどを提言した。

…………………………………………………………………………………………………………

グループディスカッション

『働き方改革を成功させる ダイバーシティマネジメント』

…………………………………………………………………………………………………………

 佐藤氏は、グループディスカッションに先立ち、

『働き方改革を成功させる ダイバーシティマネジメント』(日経DVD

の第1部(約20分、「ダイバーシティマネジメント」ができない管理職編)を上映した。

D2

 ディスカッションでは、ドラマの課長(古木課長)のマネジメントの問題(部下の話を聞かないで、思い込みで判断するアンコンシャス・バイアスなど)や自分が当事者だった場合の行動を考えて、その内容をグループ内で意見交換し、望ましい部下マネジメントを考える場となった。

 グループの代表者からは、「古木課長は部下の意向を聴いていない」「コミュニケーションが大事」「全員が7時に帰る必要はない。メリハリが重要」などの意見が出ていた。

 

 その後上映された第2部(約20分、「ダイバーシティマネジメント」ができる管理職編)では、

① 無意識な思い込み(アンコンシャス・バイアス)は無意識な行動を引き起こす。それを解消するためには,日頃から部下の能力や意向を傾聴することが大事

② メリハリをつけて働くことで豊かな生活を実現する

③ 変化対応力を備えることや学習棄却(アンラーニング)が重要

④ 管理職自身が自分の業務を見直すことが大事

――などの働き方改革を成功させるポイントが紹介された。

 

…………………………………………………………………………………………………………

《後半》高見具広(独)労働政策研究・研修機構 副主任研究員が登壇

…………………………………………………………………………………………………………

 分科会の後半では、高見具広(独)労働政策研究・研修機構 副主任研究員が「働き方改革を進めるマネジメント ―生産性向上と従業員満足の両立―」をテーマに講義を行った。 

 高見氏は、「何のための働き方改革か。残業削減が自己目的化していないか」「仕事量が減らないならば、残業が数字上減ったとしても、問題は残る(労働強度の上昇、持ち帰り残業、休日就業など)」「時間が限られる中で、特定の者への業務の偏り、教育訓練への影響は生じていないか」――などの働き方改革を進める上で考えるポイントを指摘した。

 そして、「オフの時間の過ごし方は、仕事によるストレスや生産性に関係する」「情報通信機器の発達により、オフの時間に仕事が持ち込まれるケースもあり、オン・オフの境界があいまいに」「常に仕事を気にしなければならない状態だと、豊かなオフは実現しない」――ことなどを示し、「仕事からきちんと離れないといけない」ということを提起した。

 そして、特に営業職などの「社員のオフへの目配り」、「オフの管理」もマネジメントの課題になると指摘していた。

 

D3

――――――――――――――――――――――――――――――――

【第Ⅱ部】16:20~17:45 全体会:パネルディスカッション

「カップルでの子育てを実現するために:企業・職場の支援のあり方」

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 第Ⅱ部(16:2017:45)の全体会では、「カップルでの子育てを実現するために:企業・職場の支援のあり方」をテーマに、各分科会の代表者4名が集結。

 佐藤氏の講義の後、パネルディスカッションが行われた。

P

 

…………………………………………………………………………………………………………

《前半》佐藤博樹中央大学大学院戦略経営研究科教授が登壇

…………………………………………………………………………………………………………

Z5

 佐藤氏は、「自社の女性社員がカップルで子育てできるようにするためには女性社員の配偶者(他社に務めている夫)の子育て参加の促進が不可欠。夫が長時間労働だと妻は短時間勤務を長期に選択せざるを得ない」、「短期の『点』としての男性の育休取得を、その後の長い子育て期におけるカップルでの子育ての実現につながるよう『面』としての男性の生活改革や働き方改革につなげることが不可欠」などと述べた。

 男性の育休取得の有給化に関しては、「育休取得の場合は雇用保険から67%の給付+社会保険料免除で収入減になるが、育休取得者の企業側の社会保険料免除分で取得者の収入減の補填もでき100%近くカバーすることも可能」、「育休取得の場合は、育休取得者の賃金相当分で仕事をカバーした他の職場成員にボーナス等で評価することも可能」などを指摘していた。

 そして、男性の育休取得を支援する際の留意点としては、

① 給付金など法定の制度を含め自社の制度に関する情報提供をすること

② その後の長い「面」としての子育て参加につながる支援を行うこと

③ 共働きカップルばかりではない現状への対応をすること

④ 女性社員の配偶者の家事・子育て参加の促進の取組みも同時に行うこと

――などを提示した。

 「男性の子育て参加促進のために育児・介護休業法などの法改正の必要性」については、「育児など両立支援制度の利用期間を分割し、男性のみに割り当てられた期間を設定すること」などを検討点として掲げた。

 そして、「一番大事なのは配偶者である夫、つまり自社の女性社員の夫の子育て参加」であり、「女性社員の夫の会社に、上司や人事がお手紙を出すことで世の中は変わるのでは」と提言していた。

…………………………………………………………………………………………………………

《後半》パネルディスカッション

「カップルでの子育てを実現するために:企業・職場の支援のあり方」

 

司会進行 武石恵美子 法政大学キャリアデザイン学部教授

〔パネリスト〕

分科会A 坂爪洋美 法政大学キャリアデザイン学部教授

分科会B 池田心豪(独)労働政策研究・研修機構 主任研究員

分科会C 松浦民恵 法政大学キャリアデザイン学部教授

分科会D 高見具広(独)労働政策研究・研修機構 副主任研究員

…………………………………………………………………………………………………………

P2

 パネルディスカッションでは、司会進行をつとめた武石恵美子法政大学キャリアデザイン学部教授と各分科会からの代表者4名が並んで着席した。

 

 司会進行をつとめた武石恵美子法政大学キャリアデザイン学部教授は、「今日は、いい夫婦の日(後で気づいたのですが)」との旨を述べて、冒頭から会場を沸かせていた。

 

…………………………………………………………………………………………………………

 まず、「① 男性の子育て支援について」は、

「残業が減り早く帰宅しても子どもと遊ぶだけで家事はしない」

「自分が子育てをして、妻のキャリアを応援したいという夫も」

「妻、上司、人事に加えて、(職場結婚の)夫と夫の上司が参加する5者面談をする企業も」

「育児は私生活、どこまで立ち入るのか」

「何時に帰宅できるかが重要。オフの時間の確保、オフの権利が大事。仕事にメリハリをつけ定時で帰る日をつくるべき」

「カップルの子育てはパートーナーの状態がとても大きい」

「いつかどこかで1人になるかもしれない。1人で生活できる方が良い」

「男性の育休は育児参加のきっかけのはずだが、それで育児が終わったと捉えられることも」

「育児は続くのにどうするかが休業取得後の課題」

――など様々な意見が交わされていた。

 

Z

「② 職場はどこまで、何ができるのか?」については、

 「統制より対話。対話をすることが基本中の基本」

「若い人の新感覚を経営の活力に」

「対話によって問題が解決していく」

「どう折り合いをつけていくのか」

「場づくり、研修が現実的な落とし所ではないか」

「女性社員も夫にもっと言うべき」

「夫婦の間では感情的にながち。なぜ仕事のように(冷静に)できないのか。仕事だと思えば家事もやるのでは」

「会社がおせっかいをすることに基本的には反対だが必要があることも」

「オフの過ごし方が健康面、心理的な面で、パフォーマンスに影響を与える」

「上司と部下のコミュニケーションに大事なのは会社が『こうあって欲しい』という思いを伝えること」

――など様々な意見が交わされていた。

P3 

 

 パネルディスカッションは、終始笑みが溢れる(ときに会場が爆笑の渦に包まれる)楽しく温かな雰囲気で進められ、会場は穏やかな熱気で包まれていた。

 ふと手元の時計に目をやると、174243分になっていて、スビーディに締めくくられる展開になった。

 

「職場がやるべき重要なこと」と「育児休業の問題は女性も同じ」

 

 司会進行を務めた武石氏は、締めくくりに

「二点ほど申し上げたいと思います。

 ひとつは、労使のコミュニケーション、職場のコミュニケーションの話が出ました。…話し合いのなかで、一番良い解決、それはカップルの状況によって多様であるはずで、そういうことを支援するということは、職場がやるべきひとつの重要なことではないか、ということ。

 二つ目は、男性の育児休業の話をすると、評価や仕事責任などの問題が出てきます。しかしこの点は女性も同じで、…男性の育児を考えると、女性の育児の課題が、もう一度、浮き彫りになってくるという気がします。もちろん男性特有の問題もありますが、男女共通の課題として、評価や職場のマネジメントを改めて考える必要があるのではないか、と今日の議論を聴きながら感じました」

と述べていた。

 

 

Z3

 終了後も、佐藤氏、武石氏と4名のパネリストのもとには、多くの参加者が列をなしていた。

 

P

| | コメント (0)

2019年1月 9日 (水)

【2019年 年頭所感】 厚生労働省雇用環境・均等局長 小林洋司

Photo_5



平成三十一年 年頭所感

厚生労働省雇用環境・均等局長 小林 洋司

 

新春を迎え、謹んでお慶び申し上げます。

 皆様には、日頃から雇用環境・均等行政の推進に御理解と御協力を賜り、厚く御礼申し上げます。

一昨年七月に設置された雇用環境・均等局も、二年目の新春を迎えました。「成長過程」にある雇用環境・均等行政を更に充実させる年にするべく、職員一丸となって取り組んでまいります。

 

「働き方改革」に代表されるように働く人も働き方もますます多様化が進む一方で、人手不足が深刻化しています。このような状況の中で、多様性を受け止められる職場や社会、そして人材確保のための魅力ある職場づくりが一層求められています。そのためには働き方改革と人材確保を一体的に推進していく必要があり、労働行政の各分野が強みを発揮し合う総合的な取組が不可欠です。今年も、雇用環境・均等行政は、その調整役を果たしていきたいと考えています。

 

今年の雇用環境・均等行政の最大の課題は、女性活躍の推進とハラスメント対策です。一億総活躍社会の実現のためには、女性の職業生活における活躍を推進するとともに、働きやすい職場環境を整備することが重要です。ハラスメント対策については、今年のILO総会で、ハラスメントに関する条約及び勧告が採択されることが想定されており、社会的にも関心が高まっています。女性活躍推進法の施行後三年の見直し、パワーハラスメント・セクシュアルハラスメントの防止対策の強化等について、労働政策審議会での議論も踏まえ、法改正が必要な場合には、次期通常国会への法案提出を目指します。

 

働き方改革の大きな柱の一つである同一労働同一賃金も重要な課題です。同一企業内でのいわゆる正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差を解消し、どのような雇用形態を選択しても納得感をもって活躍できる社会を目指します。二〇二〇年四月(大企業と派遣労働。中小企業は二〇二一年四月)からの施行に向けて、特に中小企業・小規模事業者の方に改正内容を十分理解していただく必要があります。関連省令、指針等の周知とともに、全都道府県に設置している働き方改革推進支援センターによる相談援助、業種別の同一労働同一賃金導入マニュアルや業種横断的な取組手順書の策定などの支援にしっかりと取り組んでまいります。

 

 また、「働き方改革実行計画」では、いわゆるフリーランスの方など、雇用類似の働き方に関する保護等の在り方について中長期的に検討することとされています。昨年十月に立ち上げた検討会において、その法的保護の必要性を含めて、引き続き、検討を進めていくこととしています。

 

仕事と生活の両立支援では、女性の継続就業や男性の育児を促進し、介護離職を防止するため、仕事と育児や介護を両立できる環境の整備に取り組みます。また、勤務間インターバル制度の導入促進や年次有給休暇の取得促進を進めてまいります。

 

勤労者生活の向上に関しては、中小企業退職金共済制度の安定的運営、勤労者財産形成促進制度の利用促進に取り組むなど、勤労者の福利厚生の充実を図ります。また、労働金庫の適正な運営のため、引き続き、指導・監督を行ってまいります。

 

このように、雇用環境・均等局は、政府の喫緊の課題を多く抱えておりますが、本年も労使をはじめとする国民の皆様の期待に応えられるよう全力で取り組んでまいります。本年が皆様にとりまして幸多き年となりますよう御祈念申し上げ、新年の御挨拶とさせていただきます。

 

| | コメント (0)

【2019年 年頭所感】 厚生労働省職業安定局長 土屋喜久  

Photo_4

年頭所感

厚生労働省職業安定局長 土屋 喜久  

 

新年を迎え、謹んでお慶び申し上げるとともに、職業安定行政へのご理解とご協力に感謝申し上げます。

 

昨年は、多数の国の行政機関において障害者の法定雇用率を満たしていない状況にあったことが明らかとなりました。民間の事業主に対し率先して障害者を雇用すべき立場にありながら、このような事態に至ったことは遺憾であり、障害者雇用施策を推進する立場として、深くお詫び申し上げます。こうした事態を重く受け止め、関係閣僚会議においてとりまとめられた「公務部門における障害者雇用に関する基本方針」等に基づき、組織全体として再発防止にしっかり取り組むことはもとより、法定雇用率の速やかな達成と障害者の活躍の場の拡大に向け、政府一体となって取り組んで参りますあわせて、こうした取組において必要となる障害者雇用の一層の促進を図るための改正法案の提出を目指します。

昨年4月からは、民間企業における法定雇用率が2.2引き上げられるとともに、精神障害者の雇用が義務化されました。ハローワークと関係機関との連携により、本人の希望や障害特性を踏まえた、これまで以上にきめ細かな職業相談・職業紹介等のサービスを行っていくことで、障害者が活躍できる場の拡大に取り組んで参ります

 

高齢者雇用については、生涯現役社会の実現に向けて、働く意欲のある高齢者がその能力を十分に発揮できるよう、70歳までの雇用と就業機会の確保について、未来投資会議の中間整理を踏まえ、検討を進めて参ります。あわせて、65歳を超えた継続雇用延長や定年延長等を行う企業への支援や、ハローワークの生涯現役支援窓口等を通じた求職者への支援、地方公共団体を中心として地域における高齢者の就労を促進する生涯現役促進地域連携事業の実施、シルバー人材センターにおける多様な就業機会の確保等に取り組んで参ります。

また、働く方々の主体的なキャリア形成や再チャレンジが可能な社会としていくため、中途採用の拡大に取り組んで参ります。具体的には、高齢者を含めた転職・再就職支援の採用機会の拡大のための取組を推進するとともに、厚生労働大臣と経済産業大臣が共催する「中途採用・経験者採用協議会」における提案等を踏まえ、社会全体の機運を醸成して参ります。

 

雇用情勢は着実に改善が進む中、求人が求職を大幅に上回って推移しており、特に中小・小規模企業において人手不足が深刻化しています。女性、高齢者、障害者等の多様な人材の活躍を促進し、企業における生産性向上や人材確保を支援するため、雇用関係助成金の積極的な活用を図るとともに、ハローワークの人材確保対策コーナーにおいて、人手不足分野を対象に、求人充足に向けたコンサルティングや求職者へのきめ細かな就職支援、事業所見学会、就職面接会等を実施し、マッチング支援を重点的に進めます。

 

 

一方、生産性向上や国内人材確保のための取組を行ってもなお、人材を確保することが困難な分野において、一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人材を受け入れるため、新たな在留資格の創設に関する出入国管理及び難民認定法改正案が、昨年12月に成立し、本年4月から施行されることとなりました。あわせて、昨年末の関係閣僚会議において「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」がとりまとめられたことを受け、職業安定局としても、、「外国人雇用管理指針」の見直し等を通じて、外国人がその有する能力を有効に発揮できる環境の整備に取り組んで参ります。

 

労働者派遣法については、昨年6月に成立した働き方改革関連法において、正規雇用労働者と派遣労働者を含めた非正規雇用労働者との間の不合理な待遇差の実効ある是正を図るために改正され、平成32年4月より施行されることとなりました。また、昨年9月には、平成27年改正法の施行から3年を迎え、期間制限の到来に伴う雇用安定措置等の適切な実施が求められています。それぞれの改正内容について、引き続き周知・啓発を強化して参ります。

 

労働者がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現する働き方改革を推進し、深刻な人手不足に対応するため、全力で取り組んでまいりますので、皆様方には、一層のご指導、ご支援を何卒よろしくお願い申し上げます。

| | コメント (0)

【2019年 年頭所感】 厚生労働省人材開発統括官  吉本明子

Photo_3

年頭所感

厚生労働省人材開発統括官  吉本 明子

 

 

 謹んで新春の御挨拶を申し上げます。

平成三十一年の年頭に当たり、日頃からの人材開発行政への多大なる御理解と御協力に御礼を申し上げますとともに、所信の一端を述べさせていただきます。

 

少子高齢化による労働供給制約と第四次産業革命による技術革新に対応しつつ、働き方改革に向けた取組を強力に推進していくためには、働く方一人ひとりの生涯を通じた能力開発を支援し、生産性の向上を図っていくことが不可欠です。そのためには、幾つになっても、誰にでも学び直しと新しいチャレンジの機会を確保する、リカレント教育を抜本的に拡充することが鍵となります。

このような中、平成二十九年九月に総理のもと、「人生100年時代構想会議」が立ち上げられ、リカレント教育が主要なテーマとして取り上げられました。その議論の成果は、昨年六月に取りまとめられた「人づくり革命 基本構想」や「経済財政運営と改革の基本方針2018」(いわゆる「骨太の方針」)の中で、教育訓練給付の拡充などの施策として反映されています。

本年は、「人づくり革命 基本構想」等に掲げられた施策を実現させ、働く方々をとりまく社会・経済情勢の変化に応える人材開発政策を推進してまいります。

 

まず、地域、産業等のニーズに応じた多様な訓練機会を提供するため、都道府県労働局、都道府県、(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構、民間教育訓練機関の連携をさらに強化し、効果的に公的職業訓練を実施してまいります。

特に、人手不足が顕著な中小企業等に対し、職業訓練を通じた生産性向上のための支援を引き続き実施してまいります。

また、障害者職業能力開発校等における職業訓練の着実な実施を通じて障害者の職業能力の向上にも取り組んでまいります。

公的職業訓練については、より多くの方々にその存在、機能をご理解いただき、ご活用いただけるよう、愛称(ハロートレーニング)・キャッチフレーズやロゴマークも活用して積極的な広報に努めており、さらに、昨年九月にはハロートレーニングをはじめとした人材開発施策全体の認知度及び関心度向上のための広報活動に協力する「ハロートレーニングアンバサダー」としてAKB48チーム8を任命し、人材開発施策のさらなる活用促進を図ることとしています。また、民間教育訓練機関の職業訓練サービスの質の向上を図るため、引き続き職業訓練サービスガイドラインの普及に努め、「公的職業訓練に関する職業訓練サービスガイドライン適合事業所認定」の普及・活用促進を図ってまいります。

 

次に、若者の安定した雇用を確保する視点から、「学卒者全員正社員就職」実現に向け、大学等との連携強化による支援対象者の確実な把握・新卒応援ハローワークへの誘導、特別支援チームの活用等による就職実現までの一貫した支援の強化を図ってまいります。

また、若年無業者等への支援について、「地域若者サポートステーション」を拠点に、地方公共団体と協働した専門的な相談等の支援の充実を図るとともに、就職氷河期世代等の無業者を対象に、就職支援と福祉支援をワンストップ型で提供するモデル事業に着手してまいります。

 

併せて、労働者個人の主体的なキャリア形成、社会人の「学び直し」を推進するため、一般教育訓練給付のうち、キャリアアップ効果の高い講座について、給付率引き上げの対象とすることを検討するなど、支援の拡充を図っていきます。

そして、労働者が企業内外で定期的にキャリアコンサルティングを受ける仕組みの普及などにより、中高年齢期をも展望に入れたキャリアコンサルティングを推進し、さらに、生涯を通じたキャリア・プランニング及び職業能力証明のツールであるジョブ・カードについて、様式や活用方法の改善等により更なる活用促進を図ってまいります。

 

企業内における人材育成への支援については、引き続き効果的に推進するとともに、雇用する労働者の職業能力の向上や企業の労働生産性の向上に資するよう、人材開発支援助成金の制度の一つとして、事業主が長期の教育訓練休暇制度を導入し、一定期間以上の休暇取得の実績が生じた場合に助成する制度を新たに創設するなど、助成対象の拡充を図ってまいります。

 

職業能力評価制度については、技能検定、資格制度、業界団体等による検定制度などの企業横断的なものさしとなる資格制度等による技術・技能の評価の賃金への反映状況について調査し、技能レベルの見える化を図るとともに、職業能力評価の促進を図ってまいります。

また、ものづくり分野など地域における人材の育成を支援するため、若者が技能検定を受検しやすい環境の整備に取り組んでまいります。

さらに、昨年十月、二〇二三年の技能五輪国際大会の日本・愛知県での開催に向けて、招致に立候補を行いました。今後、招致活動に全力で取り組んでいくとともに、併せて国内の技能振興や技能尊重機運の醸成等を推進してまいります

 

人材開発分野における国際協力として、開発途上国等への技能移転を目的とする技能実習制度については、平成二十九年十一月に施行された技能実習法において、管理監督体制の強化による制度の適正な運用確保と技能実習生の保護に取り組んでいくほか、ASEANの開発途上国を中心に日本の技能検定や職業訓練の移転の協力に取り組んでまいります

 

これらの取組を含め人材開発行政に対する皆様の御理解と御協力をお願い申し上げるとともに、皆様の御多幸を祈念いたしまして、私の新年のご挨拶といたします。

| | コメント (0)

【2019年 年頭所感】 厚生労働審議官 宮川 晃

Photo

年頭所感

 

(はじめに)

新年を迎え、謹んで年頭の御祝辞を申し上げます。

年の初めに当たり、改めて皆様の日頃からの厚生労働行政への御理解と御協力に感謝申し上げますとともに、今後の厚生労働行政の展開につきまして述べさせていただきます。

 

(二〇四〇年を展望した社会保障・働き方改革)

本年十月の消費税率の引上げ及び社会保障の充実によって、二〇二五年を念頭に進められてきた社会保障・税一体改革が一区切りとなります。今後は、団塊ジュニア世代が高齢者となり、現役世代の減少が進む二〇四〇年頃を見据え、全ての世代が安心できる社会保障制度の構築に向けて取り組みます。

このため、昨年十月に、私が本部長となって、「二〇四〇年を展望した社会保障・働き方改革本部」を厚生労働省内に設置したところであり、今後国民誰もが、より長く、元気に活躍できるよう、高齢者をはじめとした多様な就労・社会参加の促進、就労や社会参加の前提となる健康寿命の延伸、労働力の制約が強まる中での医療・福祉サービス改革による生産性の向上などの検討を着実に進めていきます。

まず、働く意欲のある高齢者が年齢にかかわりなく活躍できるようにするため、高齢者の雇用と就業機会の確保について、しっかりと検討を進めてまいります。

あわせて、働く方々の主体的なキャリア形成や再チャレンジが可能な社会としていくため、中途採用の拡大に取り組んでまいります。

年金制度については、本年に実施する財政検証とその結果を踏まえた制度改正に向け、多様な働き方に応じた年金制度の在り方を含めて検討を進めてまいります。

 

(健康寿命の延伸等)

健康寿命の延伸等を目指し、予防・健康づくりを推進していくことが重要です。「健康日本21(第二次)」に基づき、健康無関心層を含めた疾病の発症予防や重症化予防に向けた取組を進めるとともに、保険者による特定健診・保健指導や糖尿病の重症化予防などの取組について、インセンティブも活用しながら進めます。さらに、認知症予防を加えた認知症施策を進めるとともに、介護予防・フレイル対策と生活習慣病等の疾病予防・重症化予防が市町村において一体的に実施されるよう取組を進めます。

 また、医療・福祉分野において、労働力の制約が強まる中で、専門人材が能力を最大限発揮することができるよう、人材の確保にも取り組みつつ、効率的な業務分担の見直しや効率的な配置の推進、AI・ロボット・ICT等のテクノロジーの徹底活用や組織マネジメント改革等を進めます。

こうした国民の健康寿命の延伸や医療・介護サービスの生産性の向上を図るため、健康・医療・介護に関するデータ利活用基盤の構築を軸に、被保険者の予防・健康づくりなど保険者が果たすべき役割の強化やゲノム医療・AI等の最先端技術の活用など、データヘルス改革を戦略的・一体的に推進します。また、医療と介護のレセプト情報等のデータベースの連携、高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施、審査支払機関の改革については、こうした取組を進めるための改正法案の提出を目指します。

さらに、本年十月の消費税率引上げに伴い、診療報酬等の改定を行うとともに、税制上の措置の創設を目指します。

 

(障害者雇用)

障害のある方も含めて、誰もがその能力を存分に発揮できる一億総活躍社会を創り上げることは重要です。昨年は 、多数の国の行政機関において障害者の法定雇用率を満たしていない状況にあったことが明らかとなりました。民間の事業主に対し率先して障害者を雇用すべき立場にありながら、このような事態に至ったことは誠に遺憾であります。この問題については、第三者による検証委員会より、厚生労働省の問題と各行政機関側の問題とがあいまって、大規模な不適切計上が長年にわたって継続するに至ったものと言わざるを得ないと指摘されており、障害者雇用施策を推進する立場として、深くお詫び申し上げます。こうした事態を重く受け止め、制度所管省として、国における障害者雇用の促進にしっかりとした役割が果たせるよう、法の理念に立ち返り、関係閣僚会議でとりまとめた「公務部門における障害者雇用に関する基本方針」に基づき、不適切計上の再発防止に努めることはもとより、組織全体として障害者雇用を推進するという意識を徹底し、法定雇用率の速やかな達成と障害者の活躍の場の拡大に向け、政府一体となって取り組んでまいります。あわせて、公務部門及び民間企業における障害者雇用の一層の促進を図るための改正法案の提出を目指します。

 

(各地の災害への対応、東日本大震災への対応等)

昨年の夏は、豪雨被害や地震による被害が多く発生しました。全国各地で相次ぐ自然災害からの一日も早い復旧・復興に向けて、関係省庁とも連携しつつ、スピード感を持って全力で取り組みます。また、前臨時国会で成立した平成三十年度第一次補正予算に基づき、医療施設の災害復旧等の取組を推進します。

さらに、先般の地震等では、老朽化した水道管が多数破損し長期間の断水が発生しました。前臨時国会で成立した改正水道法に基づき、広域連携、水道事業者の適切な資産管理、多様な官民連携の推進により、老朽化した水道施設の更新・耐震化といった水道事業の基盤強化に取り組みます。

東日本大震災の発生からもうすぐ八年が経過します。引き続き、被災者の心のケア、医療・介護提供体制の整備、雇用対策などに全力で取り組みます。

また、前通常国会で成立した改正食品衛生法に基づき、広域的な食中毒の発生時における国と自治体間の連携強化等を着実に進めます。

さらに、昨年六月に施行された改正旅館業法に基づき、いわゆる「違法民泊」の取締り対策を推進してまいります。

 

(子ども子育て)

待機児童の解消に向けて、「子育て安心プラン」に基づき、二〇二〇年度末までに三十二万人分の保育の受け皿を整備するとともに、そのために必要な保育人材の確保や処遇改善等を更に進めます。

放課後児童対策についても、待機児童の解消等に向けて、「新・放課後子ども総合プラン」に基づき、二〇二三年度末までに三十万人の受け皿整備をしっかりと行ってまいります。

幼児教育・保育の無償化について、本年十月からの実施を目指して関係省庁とも緊密に連携した上で検討を進めるとともに、その質の確保についても検討を進めます。

妊娠期から子育て期まで切れ目なく支援する「子育て世代包括支援センター」の全国展開、産婦健診や産後ケアの充実、不妊治療への支援等にも取り組みます。

児童虐待の防止については、痛ましい虐待事件が二度と繰り返されることのないよう、昨年七月に関係閣僚会議で決定した「児童虐待防止対策の強化に向けた緊急総合対策」の更なる徹底を図ります。また、子どもの命を守る社会づくりを進める観点から、昨年末に策定した「児童虐待防止対策体制総合強化プラン」に基づき児童相談所と市町村の体制強化を図るとともに、児童虐待に関する相談支援体制の強化等を図るための改正法案の提出を目指します。

虐待などの事情により、親元で暮らせない子どもたちも、温かい家庭的な環境で育まれるようにする必要があります。里親のなり手を増やすため、里親制度の広報啓発や里親家庭に対する相談・援助体制の充実に努めます。また、児童養護施設等の小規模・地域分散化や職員配置基準の強化などを推進してまいります。

子どもの貧困対策については、特に厳しい経済状況にあるひとり親家庭の支援を充実します。児童扶養手当について、本年十一月から、年六回の支払を着実に実施するほか、就職に有利な資格の取得支援等に取り組みます。

 

(働き方改革関連法の施行等)・

前通常国会で成立した働き方改革関連法については、長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保を着実に推進すべく、関係省令等の整備や制度の周知など、円滑な施行に取り組みます。時間外労働の上限規制や年次有給休暇の時季指定義務等については、本年四月(中小企業における時間外労働の上限規制に係る改正規定の適用は来年四月)から、同一労働同一賃金に係る改正規定については来年四月(中小企業におけるパートタイム・有期雇用労働法の適用は再来年四月)から施行されることとなっております。法律の内容が地方の中小企業まで浸透するよう、四十七都道府県に設置した「働き方改革推進支援センター」におけるセミナーの実施や、都道府県労働局・労働基準監督署における経済界と協力した説明会の開催など、丁寧な周知を行ってまいります。働き方改革の実現・定着に向けて、IT化や業務効率化など生産性向上、非正規雇用労働者の待遇改善に取り組む中小企業等に対する各種助成金による支援や働き方改革推進支援センターをはじめとした相談窓口による相談支援などについて、しっかり取り組みます。また、長時間労働の事業場への監督指導の徹底等の対応を行います。

医師の働き方改革については、医師の健康を守りつつ、地域の医療提供体制が維持できる働き方の実現を目指して検討を行っており、本年三月を目途として、時間外労働規制の具体的な在り方や労働時間の短縮策等についての結論をとりまとめます。

また、全ての人材がその能力を存分に発揮できる社会や個々人の人生の再設計が可能となる社会を実現するため、リカレント教育をはじめとした人材育成の強化、女性・若者・高齢者・障害者等の就労支援等を実施します。

女性の職業生活における活躍を推進するとともに、働きやすい職場環境を整備するため、女性活躍推進法の施行後三年の見直し、パワーハラスメント・セクシュアルハラスメントの防止対策の強化等について、労働政策審議会の建議を踏まえ、改正法案の提出を目指します

前臨時国会で成立した改正出入国管理法に基づく一定の専門性・技能を有する新たな外国人材の受入れについては、厚生労働省としては、本年四月の施行に向けて、労働条件・安全衛生等に関する雇用管理の改善、適切な社会保険の適用促進、安心・安全に医療機関を受診できる環境の整備などに取り組み、外国人材がその能力を有効に発揮できる環境を整備してまいります。

最低賃金については、「働き方改革実行計画」等において、年率三%程度を目途として引上げ、全国加重平均千円を目指すとされています。昨年は全国加重平均で二十六円引き上げ、時給換算になった平成十四年度以降、最大の上げ幅となりました。中小企業・小規模事業者が賃上げしやすい環境を整備するため、生産性向上のための支援や支援策の利用促進を進めます。

また、二〇二三年の技能五輪国際大会の我が国への招致を通じた技能尊重機運の醸成に取り組むとともに、我が国産業の基盤である、ものづくり技能の一層の向上に努めます。

 

(障害者支援、社会福祉等)

障害のある方々が生き生きと地域生活を営むことができるよう、生活や就労の支援、グループホームの整備、文化芸術活動の推進などに引き続き取り組みます。また、精神障害のある方々が地域の一員として自分らしい暮らしをすることができるよう、包括的な支援を受けられる仕組みづくりを進めます。さらに、障害福祉人材の更なる処遇改善を行います。

アルコール健康障害対策をはじめとする依存症対策については、医療体制の整備や民間団体の活動支援等に取り組みます。特に、ギャンブル等依存症対策は、ギャンブル等依存症対策基本法の趣旨を踏まえ、関係省庁と共に必要な取組を進めてまいります。

生活困窮者自立支援制度及び生活保護制度については、前通常国会で成立した改正生活困窮者自立支援法及び改正生活保護法に基づき、就労、家計、住まい等に関する包括的な支援体制の強化に向けた取組等を着実に進めます。

自殺対策については、自殺総合対策大綱や座間市における事件の再発防止策に基づき、若者が利用するSNS等を活用した相談対応の強化を図るなど、関係府省と連携し、誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現に向けた取組を推進します。こうした一連の取組を進め、「地域共生社会」の実現を目指します。

 

(地域包括ケアシステムの構築、医療等)

地域包括ケアシステムの構築を一層推進します。質が高く効率的なサービス提供体制の整備や自立支援・重度化防止に資するサービスの実現など、国民一人ひとりに必要なサービスが提供され、地域で安心して暮らすことができる体制の構築を目指します。

また、家族の介護のために離職せざるを得ない状況を防ぎ、働き続けられる社会の実現を目指します。このため、介護の受け皿五十万人分の整備を進めるとともに、他の産業との賃金格差をなくしていくための介護職員の更なる処遇改善のほか、介護分野へのアクティブシニア等の参入促進、介護の仕事の魅力の全国的発信など、介護人材の確保に総合的に取り組み、二〇二〇年代初頭までに「介護離職ゼロ」を目指します。

地域医療構想の実現に向け、医療機関ごとの具体的対応方針の速やかな策定を進めます。前通常国会で成立した改正医療法及び改正医師法に基づき、医師の偏在を可視化できる指標を整備し、都道府県が主体的に医師確保対策を推進する体制を構築するなど、医師の地域偏在・診療科偏在の解消に着実に取り組みます。

外国人による医療保険の利用については、加入要件の確認を厳格に行うなどの取組を行っており、更に、適正な利用に向けて取組を進めてまいります。

 

(医薬品・医療機器、がん対策、受動喫煙対策等)

医薬品・医療機器産業については、革新的な医薬品等の開発を促進する環境の整備に取り組むとともに、後発医薬品の使用促進やベンチャー企業への支援を実施します。また、医薬品等の品質・有効性・安全性の確保、かかりつけ薬剤師・薬局の推進を図るとともに、これらに関する制度の見直しのための改正法案の提出を目指します。さらに、「第五次薬物乱用防止五か年戦略」に基づき、覚醒剤や大麻等の取締りや啓発等に取り組みます。

受動喫煙対策については、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて対策を徹底することが必要です。このため、前通常国会で成立した改正健康増進法の円滑な施行に向けた準備等を進め、望まない受動喫煙のない社会の実現を目指します。

がん対策については、「第三期がん対策推進基本計画」に基づき、がんゲノム医療の提供体制の実現、思春期世代や若年成人世代のがん対策、治療と仕事の両立支援、地域での相談支援体制の充実等を推進します。

昨年七月以降、風しんの患者数が増加しています。昨年は、患者数が多い地域において妊娠を希望する女性の方などに風しんの抗体検査及び予防接種を受けていただくよう環境整備を行ってまいりました。今後は、追加的対策として、抗体保有率の低い世代の男性に対して、抗体検査を原則無料で受けていただいた上で、三年間原則無料で定期接種の実施を行うなど、さらなる環境の整備に取り組んでまいります。

国際保健の分野においても、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの推進、薬剤耐性菌を含む感染症対策等のグローバルな課題に的確に対応します。

 

(G20関係閣僚会合)

本年、我が国はG20の議長国となります。厚生労働分野においても、九月には愛媛県松山市においてG20労働雇用大臣会合を開催し、十月には岡山県岡山市においてG20保健大臣会合を開催する予定です。開催地の地方自治体と一体となって全力を挙げて取り組み、国際社会に貢献してまいります。

 

(援護施策)

援護施策については、戦没者遺骨収集推進法に基づき、国の責務として、可能な限り多くの御遺骨を収容し、御遺族に引き渡すことができるよう、全力を尽くします。また、慰霊事業に着実に取り組むとともに、戦傷病者や戦没者遺族に対する年金等の支給、中国残留邦人等に対する支援策について、引き続き、きめ細かく実施します。

 

 以上、厚生労働行政には多くの課題が山積しています。国民の皆様には、一層の御理解と御協力をお願い申し上げ、年頭にあたっての私の挨拶といたします。

 

 

平成三十一年元旦

 厚生労働審議官 宮川 晃

| | コメント (0)

2019年1月 7日 (月)

【2019年 年頭所感】 厚生労働省労働基準局長 坂口卓

 

Photo_3

 あけましておめでとうございます。

 新年を迎え、心からお慶び申し上げます。本年も何とぞよろしくお願い申し上げます。

 平成三十一年の年頭に当たり、改めて日頃の労働基準行政への御理解と御協力に感謝申し上げますとともに、今後の労働基準行政の展開について述べさせていただきます。

 労働基準行政の主な役割は、労働時間や賃金など労働条件の確保、労働者の健康と安全の確保、労災保険の適正かつ迅速な給付、労使関係の調整でございます。

 本年も、働く方々が安心して安全に働くことができるよう、次の施策を中心に取り組んでまいります。

 

 第一に、働き方改革についてです。

 働き方改革は、一億総活躍社会の実現に向けた最大のチャレンジとして位置づけられておりますが、昨年、第百九十六回国会において、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律が成立し、時間外労働の上限規制や年次有給休暇の時季指定義務等については、本年四月(中小企業における時間外労働の上限規制に係る改正規定の適用は翌年四月)から施行されることとなっております。法律の内容について、大企業はもとより全国各地の中小企業まで浸透するよう、四十七都道府県に設置した「働き方改革推進支援センター」の活用や、経済界と協力した説明会の開催など、丁寧な周知を行い、円滑な施行に取り組んでまいります。

 また、副業・兼業については、自身の能力を一企業にとらわれずに幅広く発揮したい、スキルアップを図りたいといった希望を持つ労働者の健康確保に留意しつつ副業・兼業を行える環境を整備するため、昨年一月に策定したガイドラインや改定版モデル就業規則の周知に努めております。働き方の変化等を踏まえた実効性のある労働時間管理の在り方等の制度的課題について、引き続き、検討を進めてまいります。

 さらに、病気の治療と仕事の両立を支援するため、主治医や企業・産業医を対象としたガイドラインの周知啓発、病気を抱えながら働き続ける労働者の方と企業・産業医、主治医とを繋ぐコーディネーターの養成、企業・医療機関・地方自治体等と都道府県労働局との更なる連携等を図ることなどを通じて、企業の意識改革・支援体制の整備等を促進してまいります。

 

 第二に、長時間労働の是正についてです。

 長時間労働の是正については、昨年、残業が月八十時間を超えていると考えられるすべての事業場や長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場に対する監督指導を実施してまいりました。本年も、引き続き、これら事業場に対する監督指導を徹底することとしております。また、昨年七月に閣議決定がなされた「過労死等の防止のための対策に関する大綱」を踏まえ、引き続き、長時間労働の是正を図るための取組を進めてまいります。

 

 第三に、最低賃金・賃金の引上げについてです。

 最低賃金については、「働き方改革実行計画」等において、年率三%程度を目途として引上げ、全国加重平均千円を目指すとされています。昨年は、全国加重平均で二十六円引き上げて八百七十四円となり、時給換算になって以降、最大の上げ幅となりました。

 今年も中央・地方の最低賃金審議会での最低賃金引上げに向けた議論を促すとともに、賃金引上げに向けた助成措置や専門家による相談支援など、中小企業・小規模事業者の賃金引上げの環境整備に向けて、しっかりと取り組んでまいります。

 

 第四に、労働災害防止対策についてです。

 労働災害の防止については、一人の被災者も出さないという基本理念の下、昨年二月に第十三次労働災害防止計画を策定しました。本計画に基づき、就業者の高年齢化や、仕事や職業生活に関するストレス等がある労働者が多いこと等を踏まえて、転倒防止や腰痛予防のための取組事例の周知や、ストレスチェックの適切な実施等のメンタルヘルス対策を進めてまいります。

 

 以上の施策を中心に職員一同、全力を挙げて取り組んでまいりますので、今後とも、一層の御理解、御協力を賜りますようお願い申し上げ、新年の挨拶とさせていただきます。

| | コメント (0)

【2019年 年頭所感】 厚生労働大臣 根本匠

Photo_2

年頭所感

 

(はじめに)

平成三十一年の新春を迎え、心よりお慶び申し上げます。本年も何とぞよろしくお願い申し上げます。

厚生労働大臣に就任してから約三ヶ月が経過しました。この間、国民の皆様の安全・安心の確保に万全を期すべく努力してまいりました。引き続き、私自身が常に先頭に立ち、厚生労働省一体となって様々な課題に全力で取り組んでまいります。

 

(二〇四〇年を展望した社会保障・働き方改革)

本年十月の消費税率の引上げ及び社会保障の充実によって、二〇二五年を念頭に進められてきた社会保障・税一体改革が一区切りとなります。今後は、団塊ジュニア世代が高齢者となり、現役世代の減少が進む二〇四〇年頃を見据え、全ての世代が安心できる社会保障制度の構築に向けて取り組みます。

このため、昨年十月に、私が本部長となって、「二〇四〇年を展望した社会保障・働き方改革本部」を厚生労働省内に設置したところであり、今後国民誰もが、より長く、元気に活躍できるよう、高齢者をはじめとした多様な就労・社会参加の促進、就労や社会参加の前提となる健康寿命の延伸、労働力の制約が強まる中での医療・福祉サービス改革による生産性の向上などの検討を着実に進めていきます。

まず、働く意欲のある高齢者がその能力を十分に発揮できるようにするため、七十歳までの雇用と就業機会の確保について、しっかりと検討を進めてまいります。

あわせて、働く方々の主体的なキャリア形成や再チャレンジが可能な社会としていくため、中途採用の拡大に取り組んでまいります。

年金制度については、本年に実施する財政検証とその結果を踏まえた制度改正に向け、受給開始時期の選択肢の拡大や短時間労働者への被用者保険の適用拡大、私的年金の充実など、人生百年時代の到来や国民の多様な働き方に対応した年金制度を構築するべく検討を進めてまいります。年金事業運営については、引き続き、事務の適切な実施に努めてまいります。

 

(健康寿命の延伸等)

健康寿命の延伸等を目指し、予防・健康づくりを推進していくことが重要です。「健康日本21(第二次)」に基づき、健康無関心層を含めた疾病の発症予防や重症化予防に向けた取組を進めるとともに、保険者による特定健診・保健指導や糖尿病の重症化予防などの取組について、インセンティブも活用しながら進めます。さらに、認知症予防を加えた認知症施策を進めるとともに、介護予防・フレイル対策と生活習慣病等の疾病予防・重症化予防が市町村において一体的に実施されるよう取組を進めます。

 また、医療・福祉分野において、労働力の制約が強まる中で、専門人材が能力を最大限発揮することができるよう、人材の確保にも取り組みつつ、効率的な業務分担の見直しや効率的な配置の推進、AI・ロボット・ICT等のテクノロジーの徹底活用や組織マネジメント改革等を進めます。

こうした国民の健康寿命の延伸や医療・介護サービスの生産性の向上を図るため、健康・医療・介護に関するデータ利活用基盤の構築を軸に、被保険者の予防・健康づくりなど保険者が果たすべき役割の強化やゲノム医療・AI等の最先端技術の活用など、データヘルス改革を戦略的・一体的に推進します。また、医療と介護のレセプト情報等のデータベースの連携、高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施、審査支払機関の改革については、こうした取組を進めるための改正法案の提出を目指します。

さらに、本年十月の消費税率引上げに伴い、診療報酬等の改定を行うとともに、税制上の措置の創設を目指します。

 

(障害者雇用)

障害のある方も含めて、誰もがその能力を存分に発揮できる一億総活躍社会を創り上げることは重要です。昨年は、多数の国の行政機関において障害者の法定雇用率を満たしていない状況にあったことが明らかとなりました。民間の事業主に対し率先して障害者を雇用すべき立場にありながら、このような事態に至ったことは誠に遺憾です。障害者雇用施策を推進する立場として、こうした事態を重く受け止め、関係閣僚会議でとりまとめた「公務部門における障害者雇用に関する基本方針」に基づき、組織全体として再発防止にしっかり取り組むことはもとより、法定雇用率の速やかな達成と障害者の活躍の場の拡大に向け、政府一体となって取り組んでまいります。あわせて、公務部門及び民間企業における障害者雇用の一層の促進を図るための改正法案の提出を目指します。

 

(各地の災害への対応、東日本大震災への対応等)

昨年の夏は、豪雨被害や地震による被害が多く発生しました。全国各地で相次ぐ自然災害からの一日も早い復旧・復興に向けて、関係省庁とも連携しつつ、スピード感を持って全力で取り組みます。また、前臨時国会で成立した平成三十年度第一次補正予算に基づき、医療施設の災害復旧等の取組を推進します。

さらに、先般の地震等では、老朽化した水道管が多数破損し長期間の断水が発生しました。前臨時国会で成立した改正水道法に基づき、広域連携、水道事業者の適切な資産管理、多様な官民連携の推進により、老朽化した水道施設の更新・耐震化といった水道事業の基盤強化に取り組みます。

東日本大震災の発生からもうすぐ八年が経過します。私はかねてより被災地の復興に取り組んでまいりましたが、引き続き、私自身も復興大臣であるとの強い意識の下、被災者の心のケア、医療・介護提供体制の整備、雇用対策などに全力で取り組みます。

また、前通常国会で成立した改正食品衛生法に基づき、広域的な食中毒の発生時における国と自治体間の連携強化等を着実に進めます。

さらに、昨年六月に施行された改正旅館業法に基づき、いわゆる「違法民泊」の取締り対策を推進してまいります。

 

(子ども子育て)

待機児童の解消に向けて、「子育て安心プラン」に基づき、二〇二〇年度末までに三十二万人分の保育の受け皿を整備するとともに、そのために必要な保育人材の確保や処遇改善等を更に進めます。

放課後児童対策についても、待機児童の解消等に向けて、「新・放課後子ども総合プラン」に基づき、二〇二三年度末までに三十万人の受け皿整備をしっかりと行ってまいります。

幼児教育・保育の無償化について、本年十月からの実施を目指して関係省庁とも緊密に連携した上で検討を進めるとともに、その質の確保についても検討を進めます。

妊娠期から子育て期まで切れ目なく支援する「子育て世代包括支援センター」の全国展開、産婦健診や産後ケアの充実、不妊治療への支援等にも取り組みます。

児童虐待の防止については、痛ましい虐待事件が二度と繰り返されることのないよう、昨年七月に関係閣僚会議で決定した「児童虐待防止対策の強化に向けた緊急総合対策」の更なる徹底を図ります。また、子どもの命を守る社会づくりを進める観点から、昨年末に策定した「児童虐待防止対策体制総合強化プラン」に基づき児童相談所と市町村の体制強化を図るとともに、児童虐待に関する相談支援体制の強化等を図るための改正法案の提出を目指します。

虐待などの事情により、親元で暮らせない子どもたちも、温かい家庭的な環境で育まれるようにする必要があります。里親のなり手を増やすため、里親制度の広報啓発や里親家庭に対する相談・援助体制の充実に努めます。また、児童養護施設等の小規模・地域分散化や職員配置基準の強化などを推進してまいります。

子どもの貧困対策については、特に厳しい経済状況にあるひとり親家庭の支援を充実します。児童扶養手当について、本年十一月から、年六回の支払を着実に実施するほか、就職に有利な資格の取得支援等に取り組みます。

 

(働き方改革関連法の施行等)

前通常国会で成立した働き方改革関連法については、長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保を着実に推進すべく、関係省令等の整備や制度の周知など、円滑な施行に取り組みます。具体的には、これらの取組の内容が地方の中小企業まで浸透するよう、四十七都道府県に設置した「働き方改革推進支援センター」の活用や、経済界と協力した説明会の開催など、丁寧な周知を行ってまいります。働き方改革の実現・定着に向けて、IT化や業務効率化など生産性向上に取り組む中小企業に対する支援などについて、しっかり取り組みます。また、長時間労働の事業場への監督指導の徹底等の対応を行います。

医師の働き方改革については、医師の健康を守りつつ、地域の医療提供体制が維持できる働き方の実現を目指して検討を行っており、本年三月を目途として、時間外労働規制の具体的な在り方や労働時間の短縮策等についての結論をとりまとめます。

また、全ての人材がその能力を存分に発揮できる社会や個々人の人生の再設計が可能となる社会を実現するため、リカレント教育をはじめとした人材育成の強化、女性・若者・高齢者・障害者等の就労支援等を実施します。

女性の職業生活における活躍を推進するとともに、働きやすい職場環境を整備するため、女性活躍推進法の施行後三年の見直し、パワーハラスメント・セクシュアルハラスメントの防止対策の強化等について、労働政策審議会の建議を踏まえ、改正法案の提出を目指します。

前臨時国会で成立した改正出入国管理法に基づく一定の専門性・技能を有する新たな外国人材の受入れについては、厚生労働省としては、本年四月の施行に向けて、労働条件・安全衛生等に関する雇用管理の改善、適切な社会保険の適用促進、安心・安全に医療機関を受診できる環境の整備などに取り組み、外国人材がその能力を有効に発揮できる環境を整備してまいります。

最低賃金については、「働き方改革実行計画」等において、年率三%程度を目途として引上げ、全国加重平均千円を目指すとされています。昨年度は全国加重平均で二十六円引き上げ、時給換算になった平成十四年度以降、最大の上げ幅となりました。中小企業・小規模事業者が賃上げしやすい環境を整備するため、生産性向上のための支援を進めます。

また、二〇二三年の技能五輪国際大会の我が国への招致を通じた技能尊重機運の醸成に取り組むとともに、我が国産業の基盤である、ものづくり技能の一層の向上に努めます。

 

(障害者支援、社会福祉等)

障害のある方々が生き生きと地域生活を営むことができるよう、生活や就労の支援、グループホームの整備、文化芸術活動の推進などに引き続き取り組みます。また、精神障害のある方々が地域の一員として自分らしい暮らしをすることができるよう、包括的な支援を受けられる仕組みづくりを進めます。さらに、障害福祉人材の更なる処遇改善を行います。

アルコール健康障害対策をはじめとする依存症対策については、医療体制の整備や民間団体の活動支援等に取り組みます。特に、ギャンブル等依存症対策は、ギャンブル等依存症対策基本法の趣旨を踏まえ、関係省庁と共に必要な取組を進めてまいります。

生活困窮者自立支援制度及び生活保護制度については、前通常国会で成立した改正生活困窮者自立支援法及び改正生活保護法に基づき、就労、家計、住まい等に関する包括的な支援体制の強化に向けた取組等を着実に進めます。

自殺対策については、自殺総合対策大綱や座間市における事件の再発防止策に基づき、若者が利用するSNS等を活用した相談対応の強化を図るなど、関係府省と連携し、誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現に向けた取組を推進します。今後とも、地域住民が抱える様々な生活課題を解決につなげていくための包括的な支援体制の構築等を進めることで、「地域共生社会」の実現を目指します。

 

(地域包括ケアシステムの構築、医療等)

地域包括ケアシステムの構築を一層推進します。質が高く効率的なサービス提供体制の整備や自立支援・重度化防止に資するサービスの実現など、国民一人ひとりに必要なサービスが提供され、地域で安心して暮らすことができる体制の構築を目指します。

また、家族の介護のために離職せざるを得ない状況を防ぎ、働き続けられる社会の実現を目指します。このため、介護の受け皿五十万人分の整備を進めるとともに、他の産業との賃金格差をなくしていくための介護職員の更なる処遇改善のほか、介護分野へのアクティブシニア等の参入促進、介護の仕事の魅力の全国的発信など、介護人材の確保に総合的に取り組み、二〇二〇年代初頭までに「介護離職ゼロ」を目指します。

地域医療構想の実現に向け、医療機関ごとの具体的対応方針の速やかな策定を進めます。前通常国会で成立した改正医療法及び改正医師法に基づき、医師の偏在を可視化できる指標を整備し、都道府県が主体的に医師確保対策を推進する体制を構築するなど、医師の地域偏在・診療科偏在の解消に着実に取り組みます。

外国人による医療保険の利用については、加入要件の確認を厳格に行うなどの取組を行っており、更に、適正な利用に向けて取組を進めてまいります。

 

(医薬品・医療機器、がん対策、受動喫煙対策等)

医薬品・医療機器産業については、革新的な医薬品等の開発を促進する環境の整備に取り組むとともに、後発医薬品の使用促進やベンチャー企業への支援を実施します。また、医薬品等の品質・有効性・安全性の確保、かかりつけ薬剤師・薬局の推進を図るとともに、これらに関する制度の見直しのための改正法案の提出を目指します。さらに、「第五次薬物乱用防止五か年戦略」に基づき、覚醒剤や大麻等の取締りや啓発等に取り組みます。

受動喫煙対策については、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて対策を徹底することが必要です。このため、前通常国会で成立した改正健康増進法の円滑な施行に向けた準備等を進め、望まない受動喫煙のない社会の実現を目指します。

がん対策については、「第三期がん対策推進基本計画」に基づき、がんゲノム医療の提供体制の実現、思春期世代や若年成人世代のがん対策、治療と仕事の両立支援、地域での相談支援体制の充実等を推進します。

昨年七月以降、風しんの患者数が増加しています。昨年は、患者数が多い地域において妊娠を希望する女性の方などに風しんの抗体検査及び予防接種を受けていただくよう環境整備を行ってまいりました。今後は、追加的対策として、抗体保有率の低い世代の男性に対して、抗体検査を原則無料で受けていただいた上で、三年間原則無料で定期接種の実施を行うなど、さらなる環境の整備に取り組んでまいります。

国際保健の分野においても、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの推進、薬剤耐性菌を含む感染症対策等のグローバルな課題に的確に対応します。

 

(G20関係閣僚会合)

本年、我が国はG20の議長国となります。厚生労働分野においても、九月には愛媛県松山市においてG20労働雇用大臣会合を開催し、十月には岡山県岡山市においてG20保健大臣会合を開催する予定です。開催地の地方自治体と一体となって全力を挙げて取り組み、国際社会に貢献してまいります。

 

(援護施策)

援護施策については、戦没者遺骨収集推進法に基づき、国の責務として、可能な限り多くの御遺骨を収容し、御遺族に引き渡すことができるよう、全力を尽くします。また、慰霊事業に着実に取り組むとともに、戦傷病者や戦没者遺族に対する年金等の支給、中国残留邦人等に対する支援策について、引き続き、きめ細かく実施します。

 

 以上、厚生労働行政には多くの課題が山積しています。国民の皆様には、一層の御理解と御協力をお願い申し上げ、年頭にあたっての私の挨拶といたします。

 

平成三十一年元旦

厚生労働大臣 根本 匠

| | コメント (0)

2018年12月27日 (木)

『労働基準広報』2019年1月1日・11日は、労働基準局長インタビュー、入管法改正、退職代行業者への対応など全88ページの 新年特別合併号です!

 

H1_

『労働基準広報』2019年1月1日・11日は、
 

【新春対談】 どうなる今年の労働基準行政

~ 坂口卓 労働基準局長& 労働評論家・飯田康夫氏 ~
 
長時間労働の是正や年休の取得促進など働き方改革に向けた取組を着実に進める
 
 
【特集】 出入国管理及び難民認定法と法務省設置法の改正
 
特定産業分野に外国人労働者受入れのため「特定技能」の在留資格を創設
 
 
【新連載】 労働保険審査会の裁決事例に学ぶ
 
過労死やハラスメントのない職場づくりは急務
 
 
【新春企業訪問】 株式会社ハピラの独創的な新卒採用活動 
 
採用担当が新卒応募者の希望場所に出向く『今、会いに行きます面接』を実施
 
 
【企業税務講座】 相続税法改正 ~ 遺言制度を中心に
 
 
【労務相談室】
 
〔労組の役員を非組合員となる課長に昇格〕不当労働行為になるか
 
〔2週間欠勤中の者の件で退職代行業者からの連絡〕応じるべきか
 
〔労災療養中に1日2時間のリハビリ勤務〕休業補償給付の支給は
 
――など全88ページの新年特別合併号です。

181227

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年11月13日 (火)

オススメ新刊書籍 『働き方改革のすべて』 元厚生労働審議官 岡崎淳一 著 (本体1,600円+税)

我々は「働き方改革」にどう対応すべきか?

改革の実務に携わった著者自らが詳細に解説!

1

 

『働き方改革のすべて』(元厚生労働審議官 岡崎淳一著)

日本経済新聞出版社 201810月刊

定価(本体1,600円+税)

ISBN978-4-532-32233-5

並製四六判/252ページ

 

 「働き方改革関連法」が成立し、来年4月から順次本格的に施行される。

 本書は、働き方改革の実務を担った著者が自ら、改革のねらい、実現の経緯、そして適切な対応のポイントまで、丁寧にバランスよく解説している。

 

【本書の構成】

章 「働き方改革」が目指すもの

章 労働時間の上限規制

章 労働時間制度の柔軟化

章 年次有給休暇

章 労働者の健康と産業保健制度

章 同一労働同一賃金

章 賃金水準と最低賃金制度

 

 

日本経済新聞出版社のホームページ

働き方改革のすべて』

https://www.nikkeibook.com/item-detail/32233

こちらから「まえがき」と「目次」が立ち読みできます。

https://nikkeibook.tameshiyo.me/9784532322335

 

 

【オススメ・ポイント】

 いよいよ「働き方改革」が本活的にスタート、企業にとっては対応が急務となっています。また働く人も、自らの生活と健康を守るため、新しい制度を知っておくことが必要です。

 本書は、内閣官房働き方改革実現推進室で、改革の実務を担った著者が、働き方改革のねらい、改革実現までの経緯、さらに具体的な制度の中身と適切な対応ポイントまで、自ら詳細に解説します。

 労働時間、休暇制度、同一労働同一賃金……。「働き方改革」について、正しい知識を学び、具体的なアクションを検討するための必読書です。

続きを読む "オススメ新刊書籍 『働き方改革のすべて』 元厚生労働審議官 岡崎淳一 著 (本体1,600円+税)"

| | コメント (0)