安全衛生

2020年11月25日 (水)

『労働基準広報』2020年12月1日号の特集は「政府のテレワーク関係『令和3年度予算概算要求』」

労働基準広報』2020年12月1日号の特集は

政府のテレワーク関係『令和3年度予算概算要求』

地方のサテライトオフィス整備等支援し東京圏一極集中の是正図る交付金を創設

――を掲載!

 

 テレワークに関しては、政府全体でその普及促進に当たっている。内閣官房IT室が政府目標を設定して、総務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省が連携して普及展開を図っているが、コロナ禍における感染拡大の防止の観点からも、政府の「骨太方針2020」や「成長戦略フォローアップ」(令和2年7月17日閣議決定)などに、その導入支援を強力に推進することなどが盛り込まれた。
 令和2年10月26日の所信表明演説の中で、菅総理がテレワークの普及促進に意欲的な姿勢をみせるなど、今後、政府のテレワーク関係施策は、その加速度を増していくものとみられる。令和3年度予算の概算要求額として、厚生労働省では、「良質な雇用型テレワークの導入・定着促進」に約31億円を、内閣府地方創生推進室は、「地方創生テレワーク交付金の創設」に150億円を計上した。
 ここでは、厚生労働省をはじめとする関係府省のテレワーク関連施策の令和3年度予算概算要求などをみていく。

 

ニュースは、

◆ 大阪医科薬科大学・メトロコマース事件最高裁判決/賞与・退職金不支給は不合理と認められない

◆ 日本郵便事件で最高裁判決/扶養手当や年末年始勤務手当などの格差は不合理

◆ 令和元年度新卒者内定取消し/79事業所で201人が内定取消うち102人が就職済

◆ 「もにす認定制度」で初の認定/「有限会社 利通」など優良中小事業主の3社を認定

――などを掲載!

 

 

 

北海学園大学法学部教授・弁護士 淺野高宏氏の

「転ばぬ先の労働法」

第55講のテーマは、

ウイズ・コロナ時代の労働法の論点《1》テレワーク②

企業がテレワークに適した雇用形態や業務を熟考し選択することが重要

テレワークでも労働時間は管理しなければならないが、労働時間管理を厳格に考えてしまうと、テレワークのメリットを全く活かしきれない事態にもなりかねない。指揮命令下の労働といっても、日常的な人事管理が要らない業種や職種がテレワークに適しているので、これからは、自社のどのような仕事がテレワークに向くかということを企業が熟考し選択していくことが問われているといえよう。

テレワークを導入するのであれば、使用者には、「多少サボるのは織り込み済みと割り切る覚悟」や「従業員を信頼して細かいことには目くじらを立てない度量の広さ」も必要だろう。

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2019年10月17日 (木)

令和元年10月16日(水)「第15回 過労死等防止対策推進協議会」開催される(厚生労働省)

「過労死等防止対策白書」及び「令和2年度概要要求」が報告される

各省の「過労死等の防止対策の実施状況」などに多数の質問や意見が

(令和元年1016日(水)14591655

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 「過労死等防止対策推進協議会」(会長・中窪裕也一橋大学大学院法学研究科教授)は、過労死等防止対策推進法に基づき厚生労働省に設置された協議会(第1回は平成261217日に開催)。

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 令和元年1016日に5ヵ月ぶりに開催された第15回の協議会では、まず、厚生労働省から「令和元年版 過労死等防止対策白書」(令和元年10月1日閣議決定)及び「過労死等防止対策の推進(令和2年度概要要求の概要)」の説明があり、その後、厚生労働省、人事院、内閣人事局、総務省、文部科学省から、「令和元年度の過労死等の防止対策の実施状況」の説明があった。

 防止対策の実施状況について、主に民間企業の過労死等防止対策に取り組んでいる厚生労働省からは、「11月の過労死等防止啓発月間における取組事項(過重労働解消キャンペーン、令和元年1027日に実施する無料の「過重労働解消相談ダイヤル」(0120794(なくしましょう)713(長い残業)など)、「労働基準監督行政における長時間労働削減対策の取組状況」、「メンタルヘルス対策の実施状況」──などの説明が行われた。

 

 委員からは、

「若い世代は業務量をコントロールすることが困難」

「若い人達へのメンタルヘルス教育を」

「若い人達のメンタルヘルスを守っていただきたい」

「勤務間インターバルを導入していない業界はどこが多いのか」

「勤務間インターバルの助成金について教えていただきたい」

「勤務間インターバルの努力義務を前に進める政策提言を」

「勤務間インターバル制度の助成金の申請に傾向はあるか」

「長時間労働削減と勤務間インターバル(の導入)は1つのセット」

「勤務間インターバル制度を導入しない理由に「発動しないから(必要性を感じないため)」とあるが、制度を導入しておいて、(超過勤務が)発生したら発動すれば良いのでは」

「マネジメント研修も良いと思うが、職員を含めた意識改革をしていかないと」

「『過重労働解消相談ダイヤル』の周知方法は」

「教師の持ち帰り残業は在校等時間に含まれていない」

「白書はゼネコン系の建設業だと思うが、通信系の建設業もある。時間枠、プレッシャーがある」

「各取組みに対する効果の把握方法は」

「(白書の建設業)発注者側の皆様にも周知を」

「どんな仕事にも働く人がいる」

「(過労死遺児交流会)自分と同じ(境遇の)人とあうだけでも安心する」

「悪いことをしていないのに命を失ったと感じている子どもたち(過労死遺児)。働くことは怖いことではない、働くことは楽しいこと、夢と希望を」

「国の教育はどのようなものか」

「命を削ってまでの国会対応は必要か」

「公務員と国会待機の関係が触れられていない。ぜひ国会待機について議論を」

「国会対応についてトータルの見直しが必要では」

「(学校では)部活等の負担が大きく、公務災害を発生している事例が多い」

「(教師が)仕事を持ち帰った例が20.3%あった」

「在校等時間だけではなく…」

「民間企業では監督署の指導があるが、学校は不夜城と呼ばれる…」

「高校に着目するときは、平均値ではなく1校1校みてほしい」

「採用活動におけるハラスメント、内定後の研修等におけるハラスメントが問題になっている。厚生労働省では、どこが相談窓口になるのか」

――などの様々な意見や質問が出ていた。

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 次回は、来年4月以降に開催され、令和元年度の取組みの総括などが報告される見通し。

 

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2019年1月 8日 (火)

【2019年 年頭所感】 安全衛生部長 椎葉茂樹

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平成31年 安全衛生部長年頭所感

 

新年を迎え、謹んで年頭の御挨拶を申し上げます。

平成31年の年頭に当たり、改めて日頃の労働安全衛生行政への御支援と御協力に厚く御礼申し上げますとともに、今後の労働安全衛生行政の展開について述べさせていただきます。

 

まず、働き方改革について申し上げます。

昨年7月には産業医・産業保健機能の強化や労働時間の状況の把握を盛り込んだ「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が公布されました。労働安全衛生法の具体的な改正内容は、産業医の活動環境の整備や産業医に対する情報提供の強化、医師による面接指導を適切に行うための、全ての労働者を対象とした労働時間の状況の把握などとなっています。その後、昨年12月までに、関係省令の整備に関して労働政策審議会で御議論いただいており、本年4月1日には今回の改正事項の大部分が施行される予定となっております。施行に向けて、パンフレットの配布等により、周知徹底を図ってまいります。

また、労働人口の3人に1人を占める、病気を治療している労働者の方について、病気の治療と仕事の両立支援を推進していくことも重要です。そのため、主治医や企業・産業医を対象としたガイドラインの周知啓発、労働者の方と企業・産業医、主治医とを繋ぐコーディネーターの養成、企業・医療機関・地方自治体等と都道府県労働局との更なる連携等を図ることなどを通じて、企業の意識改革・支援体制の整備等を促進してまいります。

 

次に、労働災害防止について申し上げます。

近年の労働災害の発生状況を見ると、死亡災害は発生件数こそ減少しているものの、いまだその水準は低いとは言えません。また、休業4日以上の死傷災害については、近年増加傾向にあります。あわせて、第三次産業に従事する労働者数の増加や労働人口の高齢化、今後更なる増加が見込まれる外国人労働者の方の安全衛生確保に対応していく必要があります。さらに、過労死やメンタルヘルス不調による健康障害が大きな問題となっているほか、MOCAなど従来把握されていなかった化学物質による健康障害事案の発生を踏まえた化学物質による健康障害防止対策の強化も重要な課題です。

これらの課題に総合的に対応するため、昨年2月に平成30年度を初年度とする5か年計画である「第13次労働災害防止計画」を策定し、その中で数値目標を立てて取組を進めているところです。具体的には、

・ 平成29年と比較して、死亡者数を15%以上、休業4日以上の死傷者数を5%以上減少させるため、高所作業時における墜落制止用器具を原則フルハーネス型とすることなどを内容とする政省令等の改正・周知や、高年齢労働者の労働災害防止対策の取組事例の普及啓発、外国人労働者が理解できる安全衛生教育等の事業者に対する指導・支援、

・ メンタルヘルス対策に取り組む事業場の割合を80%以上にし、労働者の方のメンタルヘルス不調による健康障害を防止するため、ストレスチェックの適切な実施のための事業場への指導に加え、小規模事業場がメンタルヘルス対策に取り組むための産業保健人材の派遣や費用助成、

・ ラベル表示と安全データシートの交付を行っている化学物質提供者の割合を80%以上にするため、リスクアセスメントの重要性を含めて、本仕組みの周知徹底などの必要な指導・啓発

などに取り組むこととしております。本年も、引き続きこれらの取組を進めるとともに、一層効果的に対策を進めるため、関係者への働きかけ・支援等も併せて行ってまいります。

 

安全衛生行政として取り組むべき課題は山積しておりますが、労働者の方の安全・健康の確保のため、厚生労働本省・都道府県労働局・労働基準監督署が一丸となって、労働災害防止団体や関係団体の皆様、関係省庁とも連携し、今年の干支のように、猪突猛進かつ全力で取り組んでまいりますので、引き続き皆様方の一層の御支援、御協力を賜りますようお願い申し上げます。

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2017年2月24日 (金)

本日(2月24日) 塩崎恭久厚生労働大臣に日本禁煙学会などから「受動喫煙防止対策に関する要望書」が手渡される

「今回頂いたさまざまな立場からの懸念事項と要望事項をしっかり受け止めて、法案をつくる際の審議にも活かしていきたい」(塩崎大臣)

 

 

塩崎恭久厚生労働大臣は224日、厚生労働大臣室で一般社団法人日本禁煙学会などから受動喫煙防止対策に関する要望書を手交された。

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塩崎大臣は「今国会冒頭の安倍総理の施政方針演説の中でも、受動喫煙対策の徹底をするという言葉が入っている。これを受けて、政府のなかで、厚生労働省で法案を考えている。政府としてゆくゆくは正式に決めて、今国会に出すというのが私共の方針である。今回頂いたさまざまな立場からの懸念事項と要望事項をしっかり受け止めて、法案をつくる際の審議にも活かしていきたい」と述べた。

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要望書を手交したのは次の通り。

・一般社団法人日本禁煙学会

25学会禁煙推進学術ネットワーク

・公益財団法人健康・体力づくり事業財団

・公益財団法人日本対がん協会

・全国結核予防婦人団体連絡協議会

・たばこと健康問題NGO協議会

・日本肺がん患者連絡会

・元タクシー運転手 井上準一氏

 ・九州看護福祉大学 川俣幹雄教授

 
 

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2017年1月18日 (水)

【平成29年 年頭所感】 塩崎恭久厚生労働大臣

年頭所感

 

(はじめに)

平成二十九年の新春を迎え、心よりお慶び申し上げます。本年も何とぞよろしくお願い申し上げます。

厚生労働大臣に就任してから約二年四ヶ月が経過しました。その間、国民の皆様の安全・安心の確保に万全を期すべく努力してまいりました。引き続き、私自身が先頭に立って、様々な課題に全力で立ち向かう決意を新たにしています。

 

(一億総活躍)

昨年六月、「ニッポン一億総活躍プラン」が閣議決定されました。まずは五十年後も人口一億人を維持し、その一人ひとりの人生を豊かにしていくことを目指し、男性も女性も、高齢者も若者も、障害者や難病のある方も、一度失敗を経験した方も、あらゆる方がそれぞれ活躍できる包摂的な社会の実現に取り組みます。そして、回り始めた経済の好循環を更に加速化させ、経済成長の成果を子育てや介護などの社会保障分野に分配し、更に成長につなげる「成長と分配の好循環」を構築していきます。

 

(働き方改革)

働き方改革は、一億総活躍社会の実現に向けた最大のチャレンジであり、日本の企業や暮らし方の文化を変えるものです。「働き方改革実行計画」の年度内の取りまとめに向けて、働き方改革担当大臣ともしっかり連携して確実に取り組みます。

長時間労働の是正については、私を本部長とする「長時間労働削減推進本部」において、平成二十八年四月から、監督指導の対象を従来の月一〇〇時間超から月八〇時間超の残業を把握した全ての事業場に拡大するなど、法規制の執行強化に取り組んでいます。今後、働き方改革実行計画において、実効性のある対策が取りまとめられるよう、検討を進めていきます。

 公正な評価に基づく「同一労働同一賃金」の実現は、非正規雇用の方々の処遇改善による女性、若者、高齢者等の能力の発揮につながるとともに、働く個々人の納得性を高めることになり、一人ひとりが輝く社会とするために重要です。このため、どのような待遇差が合理的であるか又は不合理であるかを事例等で示す昨年末のガイドライン案に引き続き、今後は、必要な法改正に向け、躊躇することなく準備を進めていきます。

 企業の生産性向上の実現に向けて、生産性要件の設定や金融機関との連携などの労働関係助成金の抜本改革や、人材育成の充実、成長産業への転職や復職の支援を進めていきます。

 雇用保険制度については、昨年八月に閣議決定された「経済対策」のほか、働き方改革の観点からも人材育成の充実が重要であること等を踏まえ、制度全般の見直しについて議論を行ってきました。職業紹介事業の機能強化や求人情報等の適正化と併せ、必要な制度改正に取り組みます。

生涯現役社会の実現に向けた環境整備のため、今年度中に策定する継続雇用延長・定年引上げのためのマニュアルの普及や、六十五歳以上への定年引上げ等を行う事業主に対する支援を進めていきます。また、ハローワークの高齢者専門窓口の増設などにより、働きたいと願う高齢者の希望を叶えるための支援を一層進めていきます。

さらに、本年一月から施行された改正育児・介護休業法、改正男女雇用機会均等法の周知徹底に取り組むとともに、保育所に入れない場合の育児休業期間の再度の延長や、男性の育児休業取得促進について検討を進めていくほか、女性の活躍を一層推進していきます。

 

(持続可能な社会保障制度の確立)

今後も高齢化が進展していく中で、社会保障制度を持続可能なものとして次世代に引き渡していく「未来への責任」を果たすべく、安定財源を確保して、制度の充実・安定化を図るとともに、重点化・効率化に取り組みます。

平成二十九年四月に予定していた消費税率の十%への引上げは、平成三十一年十月まで延期されることとなりました。そのため、消費税財源を活用して行う社会保障の充実については、その全てを予定どおりに行うことは困難ですが、待機児童ゼロや介護離職ゼロを目指した保育・介護の受け皿整備は、着実に進めます。また、先般の臨時国会において、年金の受給資格期間の十年への短縮を行う法案が成立しましたが、その他の施策についても、優先順位をつけながら、実施していきます。

さらに、経済財政諮問会議において策定された「経済・財政再生計画改革工程表」を踏まえ、引き続き、医療・介護提供体制の適正化や疾病予防・健康づくり、負担能力に応じた公平な負担や給付の適正化等に取り組みます。

 

(医療)

本年は、地域医療構想の実現に向けた取り組みを具体的に始める年です。構想の策定過程で抽出した課題に立ち戻り、地域の医療提供体制をどうしていくのか、地域医療構想調整会議において、関係者の間で協議を行うことが期待されます。厚生労働省としても、地域医療介護総合確保基金により支援していきます。また、本年は、都道府県において、平成三十年度から始まる医療計画を策定する年です。今回の医療計画では、地域医療構想を取り込み、医療提供体制のビジョンを示すものとなります。さらに、新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方のビジョンを策定し、医師・看護職員等の需給推計や、医師の偏在対策、看護職員の養成・確保等について、検討を進めていきます。

平成三十年度に予定されている診療報酬と介護報酬の同時改定に向け、地域包括ケアシステムの構築やAI・IoT、ロボット等の革新的技術について、十分なエビデンスの下に活用を推進すること等の検討を進めていきます。また、国民皆保険の持続性とイノベーションの推進の両立を図り、より一層の国民負担の軽減と医療の質の向上の実現を目指して、医薬品の市場規模拡大による影響や競合品・後発品の収載による影響を機動的に薬価に反映させるとともに、新たなイノベーション評価の仕組みを導入するなど薬価制度の抜本改革に取り組みます。あわせて、平成三十年度に迫った国保の財政運営の都道府県単位化に向けた準備に万全を期していきます。

予防・健康づくりの推進や医療の質の向上により、医療保険制度を持続可能なものとするためには、保健医療のパラダイムシフトを実現し、ICTをフル活用する次世代型の保健医療システムを構築することが重要です。二〇二〇年度からの本格稼働を目指し、その構築に取り組みます。

まずは、膨大な健康、医療、介護データの眠る審査支払機関を今までの「業務集団」から「頭脳集団」に改革し、健診、医療、介護情報を統合し、民間も含めた第三者提供を可能とする総合的な保健医療データプラットフォームの構築に取り組みます。また、それらのビッグデータを活用し、効率的なデータヘルスを推進するとともに、介護保険総合データベースの抜本的改革に向けた調査・研究を行い、重度化防止、自立支援に資する「科学的に裏付けられた介護」の実現に取り組みます。それらの取組によって、保険者の主体的な保険運営を促進し、保険者機能を強化していきます。

さらに、ICTを活用し、医療・介護データの地域及び全国における共有などの取組を進め、個人の症状、体質に応じた迅速かつ正確な治療などの実現に取り組みます。

 

(国際保健)

 国際保健分野については、昨年、様々な国際会議の場で日本のリーダーシップとプレゼンスを発揮してきました。特に、五月のG7伊勢志摩サミットでは重要課題の一つとして「保健」を取り上げ、これに続く九月のG7神戸保健大臣会合では、公衆衛生危機への対応と備えのためのグローバル・ヘルス・アーキテクチャーの強化、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの推進、薬剤耐性の対応強化の三点について、各国との議論を主導し、具体的な行動を「神戸コミュニケ」として採択しました。また、八月にケニアで開催された第六回アフリカ開発会議や九月の国連総会でも、保健が大きく取り上げられました。私は、厚生労働大臣として初めて、これらの会議に出席し、我が国の経験を踏まえ、積極的に議論に参画しました。本年も、G7、G20、WHO、OECDなどの場で、国際社会の議論を主導し、国際保健分野の課題に対する取組をさらに推進するとともに、それを支えるための国内の人材育成等にも取り組みます。  

薬剤耐性(AMR)は全世界的に共通課題として認識されています。昨年四月に我が国のAMR対策アクションプランを策定し、今後五年間で実施すべき事項をまとめました。本プランにおいては、抗菌薬の総使用量を五年間で三分の二に減少させることを目標に掲げています。その達成に向けて、医療、獣医療、畜水産等の分野が一体となって行動するというワンヘルスの観点から、国民への普及啓発による適切な服薬の推進や、医療機関における抗菌薬適正使用の推進などの取組を、関係省庁と連携して進めていきます。

 

(がん対策)

昨年、難治性がんや希少がんの研究推進、がん患者の就労支援などを内容とするがん対策基本法の改正がされました。この改正を踏まえ、社会全体ががんに対して理解をさらに深めるよう、取組を進めていきます。

また、がん克服のための構想を今夏を目途に策定します。この構想に基づき、国境の壁を越え、官民や研究者が一体となって、人工知能の開発と活用を進め、ゲノム情報等に基づき患者にとって効果が高く副作用の少ないがん治療の実現を図るとともに、臨床データや研究データの標準化や共有化を進めるための基盤整備を行うことにより、免疫療法等の新たな治療法の開発を推進していきます。

 

(受動喫煙防止対策)

 受動喫煙防止対策の強化については、健康増進の観点に加え、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックや、その前年に開催されるラグビーワールドカップを契機に、従来の努力義務よりも実効性の高い制度とし、スモークフリー社会に向けた歴史的な一歩を踏み出せるよう、具体的な制度設計を進めていきます。

 

(安全な医薬品等の提供、食品安全・生活衛生)

今般の化血研における事案を契機として明らかになった、ワクチンと血液製剤の安定的な供給に関する課題に対処するため、これらの産業の在り方や、法令遵守を徹底するための企業ガバナンスの強化等を検討していきます。

医薬品等に関しては、先駆け審査指定制度の運用等により革新的な製品の迅速な提供を推進していきます。また、大規模な医療情報の収集・解析に医療情報データベースシステム(MID―NET)などのICTを活用し、医薬品等の安全性を高めるための検討を進めていきます。

水道施設の計画的更新や耐震化、広域連携の推進等、水道事業の基盤強化に向けた制度改正に取り組むとともに、生活衛生関係営業の振興やいわゆる「民泊サービス」の制度化に併せた旅館業の規制緩和を進めていきます。また、輸入食品に対する監視体制の強化等、引き続き食品の安全性確保等に取り組みます。

 

(子育て支援、児童虐待の防止)

 安全、安心に妊娠、出産、子育てができるよう、総合的子育て支援を推進していきます。待機児童の解消に向け、質の確保を図りつつ保育の受け皿を更に整備するとともに、保育人材を確保するため、技能・経験に応じた処遇改善や離職防止、再就職支援などに総合的に取り組みます。また、妊娠期から子育て期まで切れ目なく支援する「子育て世代包括支援センター」の全国展開、不妊治療への支援なども進めます。さらに、ひとり親家庭を支援し、子どもの貧困に対応していきます。

 全ての子どもには、適切な養育を受け、健全に育つ権利があります。昨年抜本的な改正を行った児童福祉法の着実な施行に取り組むとともに、平成二十三年の「社会的養護の課題と将来像」の全面的な見直しを進めていきます。児童虐待防止対策については、昨年四月から厚生労働省が総合調整を担うこととなったことを踏まえ、関係府省庁と連携して、発生予防から自立支援まで一連の対策に取り組むほか、司法関与の在り方などについても検討を進めていきます。

 

(介護)

介護については、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けることができるよう、医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスが切れ目なく包括的に確保される地域包括ケアシステムを深化・推進していくとともに、介護保険制度の持続可能性の確保を図るため、保険者によるデータに基づく課題分析と対応の制度化、認知症施策の推進、給付内容や利用者負担の見直しなど介護保険制度の見直しを進めていきます。

 また、介護人材の確保に向けて、技能・経験に応じた処遇の改善に取り組むとともに、介護福祉士を目指す学生を対象とした修学資金貸付制度や仕事を離れた人が再就職する際の再就職準備金貸付制度などのほか、介護現場におけるICTやロボットの活用を推進していきます。

 

(障害者福祉)

 障害者の皆さんが自らの望む地域生活を営むことができるよう、生活や就労に対する支援を充実させるほか、グループホームの整備などに取り組みます。昨年七月に相模原市の障害者支援施設で起こった殺傷事件に関しては、地域共生社会の推進に向けた取組を進め、措置入院から退院した患者に対する医療等の継続的な支援が確実に行われるよう対応していきます。

 

(自殺対策)

昨年四月から厚生労働省が総合調整を担うこととなった自殺対策については、誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現に向け、自殺総合対策会議において、本年夏頃を目途に新たな自殺総合対策大綱を策定できるよう検討を進めていきます。

 

(生活保護・生活困窮者施策)

 生活保護については、必要とする人には確実に保護を実施するという基本的な考えの下、受給者の自立に向けた就労支援や医療扶助の適正化に取り組むとともに、生活保護基準の検証と、制度全般の検討を行い、必要な見直しに取り組みます。

生活困窮者自立支援制度については、就労準備支援事業や家計相談支援等の任意事業の実施拡大を始めとして効果的な自立支援のノウハウを拡げつつ、さらに包括的な相談支援や就労支援等となるよう、平成二十七年度の施行から三年を目途とした見直しの検討を行います。

 

(地域共生社会の実現)

 今後の保健福祉改革を貫く基本コンセプトとして、地域や個人の抱える課題を多様な主体が「我が事」として受け止め、「丸ごと」支えていく「地域共生社会」の実現を掲げ、取組を加速化していきます。次期介護保険制度の見直しにおける介護保険と障害福祉にまたがる「共生型サービス」の創設等を皮切りに、二〇二〇年代初頭の「我が事・丸ごと」の全面展開に向け、地域住民による支え合い機能の強化や、複合的課題に対応する包括的支援体制の構築など具体的な改革を行っていきます。

 

(年金制度)

 年金制度については、世代間の公平性を確保しながら持続可能性を高め、高齢期の多様な就労を進めることとあわせて、公的年金と私的年金を通じた年金水準の確保を図っていくことが重要です。

このため、昨年成立した年金改革法に基づき、短時間労働者への被用者保険の適用拡大を一層推進していくとともに、年金額改定ルールの見直し等を通じて、制度の持続可能性を高め、将来世代の給付水準の確保等を図っていきます。

また、本年八月より施行される年金受給資格期間の短縮への対応に万全を期すとともに、加入者範囲が大幅に拡大された個人型確定拠出年金の一層の周知・広報に取り組み、高齢期の自助努力を支援していきます。

さらに、年金積立金の管理・運用を担う年金積立金管理運用独立行政法人については、国民の皆様からお預かりした年金積立金を運用する組織としてふさわしい体制を構築するため、昨年成立した年金改革法に基づき、ガバナンスの強化を着実に進めていきます。

年金事業については、更に国民に信頼されるものとするよう、日本年金機構で取り組んでいる改革が確実に実行されるよう監督を行っていくとともに、国民年金保険料の収納対策、厚生年金保険の適用促進、情報セキュリティ対策等にしっかり取り組みます

 

(援護施策)

 援護行政については、昨年成立した戦没者の遺骨収集の推進に関する法律に基づき、戦没者の遺骨収集事業の推進を図るとともに、慰霊事業に着実に取り組みます。また、戦傷病者や戦没者遺族、中国残留邦人等に対する支援策をきめ細かく実施していきます。

 

(東日本大震災、各地の災害への対応)

東日本大震災の発生からもうすぐ六年が経ちますが、避難生活が長期化している被災者の方々も多くいらっしゃいます。引き続き、私自身も復興大臣であるとの強い意識で、被災者の方々の心に寄り添い、医療・介護の体制整備や雇用対策等といった対策を進めていきます。

全国各地での災害対応についても、復旧・復興の加速に向けて全力を尽くしていきます。

 

 以上、厚生労働行政には多くの課題が山積しています。国民の皆様には、一層の御理解と御協力をお願い申し上げ、年頭に当たっての私の挨拶といたします。

 

平成二十九年元旦

厚生労働大臣 塩崎 恭久


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2016年9月13日 (火)

【厚生労働省】「第1回・仕事と生活の調和のための時間外労働規制に関する検討会」を開催 36協定における時間外労働規制の在り方を検討(平成28年9月9日)

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 厚生労働省は、平成28年9月9日午後5時から、第1回の「仕事と生活の調和のための時間外労働規制に関する検討会」(座長・今野浩一郎学習院大学教授)を東京都港区の中央労働委員会講堂で開催した。
 同検討会の開催趣旨は、今年6月2日に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」において、「労使で合意すれば上限なく時間外労働が認められる、いわゆる36(サブロク)協定における時間外労働規制の在り方について、再検討を開始する」とされたことを受けて、「検討会を開催し、我が国における時間外労働の実態把握など、検討を行う」(厚生労働省)こと。


 検討会では、
① 36協定上の延長時間、実際の時間外労働実績などの実態や課題の把握、
② 諸外国における労働時間制度の現状と運用状況、
③ 健康で仕事と生活の調和がとれた働き方を実現するための方策、
――などの検討テーマに関して、参集委員らの意見交換が行われた。

 委員からは「単純に労働時間の『上限規制』を導入すれば良いということではなく、マネジメントの方法を変える必要がある」、(当日は午後5時からの開催であったので)「時間外労働の検討であるのに、この時間からの開催というのは…」などの旨の意見が出ていたほか、「女性活躍推進法における『行動計画』の策定にならい、自社の労働時間制度に関してホームページなどに掲示することを求めたらどうか」などの提案もあった。

 

 なお、次回(第2回)の開催日は未定となってる(9月12日時点)。


 詳しくはこちら↓

● 労働調査会ニュース

● 厚生労働省「仕事と生活の調和のための時間外労働規制に関する検討会」

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2016年7月20日 (水)

厚生労働省・平成28年度 「全国労働衛生週間」を10月に実施~今年のスローガンは「健康職場 つくる まもるは みんなが主役」~

 
 厚生労働省は、10月1日(土)から7日(金)まで、平成28年度「全国労働衛生週間」を実施します。

  今年のスローガンは、一般公募に応募のあった203作品の中から、手塚文雄さん(宮城県)の「健康職場 つくる まもるは みんなが主役」に決定しました。

 全国労働衛生週間は、労働者の健康管理や職場環境の改善など、労働衛生に関する国民の意識を高めるとともに、職場での自主的な活動を促して労働者の健康を確保することなどを目的に昭和25年から毎年実施しているもので、今年で67回目になります。
 
 毎年10月1日から7日までを本週間、9月1日から30日までを準備期間とし、各職場で職場巡視やスローガン掲示、労働衛生に関する講習会・見学会の開催など、さまざまな取組みを展開します。
 
 

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2016年5月31日 (火)

「職場の熱中症予防対策は万全ですか?」(厚生労働省)と「熱中症予防情報サイト」(環境省)

夏日どころか、真夏日も複数回あった暑い5月も今日でおしまい。
そして、これからが夏本番。引き続き熱中症にはご注意ください。
 
 

厚生労働省HPでは、リーフレット「職場の熱中症予防対策 は万全ですか?」などで、職場の熱中症予防対策を呼びかけています。

 
詳しくはこちら

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また、環境省では、熱中症について学ぶことができる
を開設しています。
早見優さんのトーク番組形式のコーナーなどで楽しく学ぶことができます。

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2016年4月25日 (月)

日本バス協会に対し、労働時間管理等の徹底を要請【平成28年4月25日 厚生労働省・労働基準局長】今年1月の軽井沢スキーバス事故を受け全国の労働基準監督署にて実施した緊急の集中監督の結果を踏まえて

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 厚生労働省は、平成28年4月25日、労働基準局長から公益社団法人日本バス協会に対して、バス運転者の労働時間管理等の徹底に関する要請を行いました(「バス運転者の労働時間管理等の徹底に関する要請について」平成28年4月25日 基発0425第2号 )。

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 この要請は、今年1月に発生した軽井沢スキーバス事故を受け、全国の労働基準監督署において実施した、貸切バス事業者に対する緊急の集中監督の結果を踏まえたもの。
 
 また、都道府県労働局に対しても、都道府県バス協会およびバス協会未加入貸切バス事業者に対して、同趣旨の要請を行うよう指示したとのことです。

 
【公益社団法人日本バス協会への要請の内容】


 バス運転者の労働時間などについては、労働基準法及び改善基準告示に定められた規定の遵守を、改めて徹底すること
 
 長時間にわたる時間外・休日労働を行ったバス運転者に対しては、面接指導など行うとともに、労働時間の短縮などの適切な措置を講じること
 
 バス運転者の健康管理を適切に行うため、労働安全衛生法に基づく健康診断を確実に実施すること。また、所見が認められたバス運転者に対しては、「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」に基づき、適切な就業上の措置を講じること
 
 「交通労働災害防止のためのガイドライン」に基づき、睡眠時間の確保に配慮した適正な労働時間などの管理、乗務開始前の点呼等の実施、適正な走行計画の作成など、適切な措置を講じること

 
 
● 詳しくはこちら



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2016年2月12日 (金)

●本社調査 職場における受動喫煙防止対策の実態 /●特別企画 2016年 労働災害の企業内補償の水準~労働基準広報2016年2月11日号のポイント~


労働基準広報2016年2月11日号のポイント

 

●本社調査/職場における受動喫煙防止対策の実態                                           

「改正労働安全衛生法に伴う受動喫煙防止対策に関する実態調査」報告書

改正安衛法に対応済みの事業所は約6割

実施等予定約2割だがハード面に課題も

(労働調査会調べ)

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株式会社労働調査会が公表した「改正労働安全衛生法に伴う受動喫煙防止対策に関する実態調査」報告書によると、ほぼ全ての事業所が何らかの受動喫煙防止対策を実施しており、「屋内または屋外に喫煙スペースを設けて執務エリアは禁煙」とする割合は8割程度であった。また、「受動喫煙防止措置の努力義務化」などを規定する改正安全衛生法については、改正項目の中で最も認知率が高いのは「受動喫煙防止措置の努力義務化」の80.4%で、2501事業所のうち約6割の事業所がこれに「対策済み」であることなどがわかった。

 

●特別企画 2016 労働災害の企業内補償の水準

有扶養者の死亡災害遺族補償額は3000万円から3600万円に集中

(編集部まとめ)

〈掲載業種〉鉄鋼/造船・重機/非鉄/機械・金属/自動車/電機/

紙・パルプ/運輸/流通/外食・食品/ホテル・旅館

労働者が、業務上災害や通勤災害で死亡したり、障害を負った場合などに法定の労災保険給付とは別に、企業が独自の上積み補償を行うケースがある。こうした制度は、「企業内補償」などと呼称される。今号は、正社員の業務上災害の企業内補償について、11業種、93の企業・労働組合の最新データを紹介する。被扶養者を有する者に対する死亡災害の遺族補償額や障害等級1~3級の補償額は、3000万円から3600万円の範囲に集中している。

 

 労働判例解説/KPIソリューションズ事件

(平成27年6月2日 東京地裁判決)

職歴や能力詐称し月給の増額を求め採用

詐称した経歴による賃金増額に係る言動は詐欺という不法行為を構成

(弁護士・新弘江(あだん法律事務所))

本件は、労働者Xの経歴詐称等を理由とする解雇無効の請求に対し、会社Yが、Xの職歴、職務能力等の詐称により損害を被ったとして、Xに支払った賃金等の損害賠償を反訴請求した事件。
 Xは、採用の際の面接・履歴書等で、システムエンジニアとしての能力やビジネスレベルの日本語能力などをアピールし、月給も会社が当初提示した40万円から60万円に増額するよう求め、Yに採用された。しかし、Xの履歴書には、事実とは異なる前職の会社名が記載され、実際は、日本語能力はビジネスレベルとはほど遠く、Xが申告したシステム開発の能力も有していなかった。
 判決は、本件解雇を有効とし、反訴請求については、詐称した経歴等を前提とした賃金増額に係るXの言動は詐欺という違法な権利侵害として不法行為を構成するとして、Xに増額分(月額20万円)の支払いを命じ、Yの請求を一部認容した。

 

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