労働基準広報2015年1月1・11日付新年特別合併号のポイント
●新春対談/どうなる今年の労働基準行政
労働時間法制の見直しに関し年初頭にも建議とりまとめを
(岡崎淳一厚生労働省労働基準局長×労働評論家・飯田康夫氏)
厚生労働省労働基準局長の岡崎淳一氏と、本誌「労働スクランブル」の執筆者で労働評論家の飯田康夫氏が、平成27年の労働基準行政について新春対談を行った。
安倍政権の「『日本再興戦略』改訂2014」の「働き方改革」を受けて、現在、労働政策審議会において、裁量労働制の新たな枠組みの創設やフレックスタイム制の見直し、時間ではなく成果で評価される制度の創設など、労働時間法制の見直しが議論されている。
対談の中で、岡崎氏は、今年出来るだけ早い時期に建議のとりまとめを頂き、今年の通常国会に改正法案を提出したいとの考えを明らかにした。
●新春企業訪問/正社員の多様な働き方を支える制度
勤務地限定や短時間勤務制度が優秀な人材の確保と定着につながる
〈取材企業〉
① 株式会社ファンケル
契約社員店長の正社員化と同時にエリア限定制度を新設
② 株式会社リコー
短時間勤務制度などの両立支援により男女の平均勤続年数の差がほぼ解消
(編集部)
企業の成長には、そこで働く人のキャリアアップが欠かせない。働く人のスキルやノウハウは、継続的な勤務を通じて育まれる面が多分にあるが、その一方で、育児や介護、配偶者の転勤などの事情により離職を余儀なくされる人も多い。今年の「新春企業訪問」では、就労継続の妨げとなっているものは何か、優秀な人材の離職を防ぐためにはどうすれば良いか――などの課題に取り組み、正社員の多様な働き方を支える制度を導入・運用している企業2社を取材した。
株式会社ファンケルでは、2014年度から転居を伴う配置転換がない正社員の区分を新設するとともに店舗の店長職を務める契約社員の正社員化を実施。生活環境の変化という不安を解消した。また、同社の産前産後休業と育児休業からの復職率は、原職復帰を基本に休業前のポストを復職まで空位とする運用などにより100%を誇る。
株式会社リコーでは、育児休業法の施行前に短時間勤務制度を導入。以来、従業員のニーズを的確に捉えて、仕事と生活の両立支援などに関する様々な制度の導入と改訂を繰り返している。同社では、これらの両立支援策などにより、男女の平均勤続年数の差は1年以内にまで縮まった。
●新春特別鼎談/障害者雇用を“俯瞰”する
障害者の雇用者数が増加する中で目指すは障害者雇用が当たり前の社会
・松永久氏(厚生労働省職業安定局雇用開発部障害者雇用対策課調査官)
・長澤京子氏(独立行政法人国立がん研究センター東病院 ジョブコーチリーダー・障害者職業生活相談員)
・須藤シンジ氏(有限会社フジヤマストア、ネクスタイド・エヴォリューション代表取締役社長、NPO法人ピープルデザイン研究所代表理事)
今、国内では40万人を超える障害者が働いており、障害者雇用数は11年連続で過去最高を更新している。一方、平成30年度には改正障害者雇用促進法に基づく法定雇用率の算定基礎が見直されることとなっており、企業は今後、より一層障害者雇用を推進していかなければならない。ここでは、障害者雇用に対して異なる視点を持った3名による、障害者雇用の現状や今後に関する鼎談の模様を紹介する。
●弁護士&元監督官がズバリ解決!~労働問題の「今」~
第5回・事業場外みなし労働時間制②
端末機により労働時間把握できるとして
遡及是正額約5億円を支払わせた事案も
(弁護士・森井利和&特定社会保険労務士・森井博子)
今回は「事業場外みなし労働時間制②」として、事業場外みなし制に関する行政の考え方や判断基準について解説してもらった。
労基署の監督指導では、事業場外みなし制の対象労働者が業務のため所持している端末機により労働時間を把握することができることから、労働時間の算定が困難と認められないとして、端末機の記録等による実労働時間に基づき対象労働者約530人に遡及是正額約5億円を支払わせたケースがあった。
端末機により労働時間を把握することができるとされたことは、注目すべき点といえる。昨今は携帯端末が加速度的に進歩しており、労働時間の把握は以前に比べると格段に容易になっている。これを踏まえて各会社は、自社の事業場外みなし労働時間制の見直しをする必要がでてきたといえよう。
●企業税務講座/第49回 通勤手当の非課税限度額の引上げ
平成26年4月1日以後に支払われる通勤手当に適用
(弁護士・橋森正樹)
平成26年10月17日付で所得税法施行令の一部を改正する政令が公布され、同年10月20日から、マイカーなどの交通用具を使用して通勤している給与所得者に対する通勤手当の非課税限度額が引き上げられた。この改正後の施行令は平成26年10月20日からの施行とされているものの、平成26年4月1日以後に支払われるべき通勤手当について適用されることになっている。
●企業事例連載/「ポジティブ・オフ」で企業価値の向上を<第16回>
ポジティブな休暇活用で仕事での能力発揮につなげる
~アサヒビール株式会社~
(国土交通省 観光庁)
今回は、アサヒビール株式会社の取組を紹介する。
私生活の充実があってこそ仕事で最大限の能力を発揮できる、との考えのもと、同社では、休暇取得を積極的に促進している。社会貢献を目的とした特別休暇であるアサヒナイスライフ休暇もそのひとつ。この休暇はボランティア活動・環境整備活動・スポーツ振興活動など、会社が認めた社会貢献活動を行う際に取得できるものとなっている。
東日本大震災においては、物資運搬などのボランティア活動に加え、全国から集まったボランティア希望者と被災地との間で、ニーズをマッチングするための“地域ボランティアセンター”の運営にも、応援として入り、約250名の社員が活動した。
●労働局ジャーナル
島根大学と連携した公開セミナー
「あなたのバイトはブラックですか?」を開催
〔島根労働局〕
島根労働局(古田宏昌局長)は、11月12日、アルバイトに従事している学生を中心に、労働法制の基礎知識を習得させることで、将来、社会人になった際のトラブルを未然に防止することを目的とした公開セミナー「あなたのバイトはブラックですか?」を開催した。同セミナーは、島根大学からの依頼を受けて、同局労働基準部監督課の綿貫直(わたぬきすなお)課長を講師として島根大学構内において開催したもの。
●労働局ジャーナル
北関東4局合同で無料電話相談を実施
過重労働などに関する 30 件の相談が
〔茨城労働局 栃木労働局 群馬労働局 埼玉労働局〕
茨城労働局(中屋敷勝也局長)、栃木労働局(堀江雅和局長)、群馬労働局(内田昭宏局長)、埼玉労働局(阿部充局長)の北関東4労働局が合同で実施した「過重労働解消相談ダイヤル」には、過重労働や労働基準法などに関する30件の相談が寄せられた。寄せられた30件の相談のうち、最も多かった相談は長時間労働・過重労働に関するもので23件。次いで、賃金不払残業に関するものが15件であった。
●連載 労働スクランブル第203回(労働評論家・飯田康夫)
●NEWS
●労務資料 平成26年就労条件総合調査結果①~労働時間制度~
●わたしの監督雑感 秋田・横手労働基準監督署長 金谷繁夫
●編集室
●労務相談室
休業・休職
〔出産予定日6週間前から年休を取得〕産休取得とどちらが得か
特定社労士・飯野正明(いいの経営労務管理事務所)
解雇・退職
〔業務上災害で休業中の者が行方不明〕退職扱いとしてよいか
弁護士・荻谷聡史(安西法律事務所)
労働基準法
〔離れた駐車場にある社用車で通勤させる〕労働時間になるか
弁護士・加藤彩(石嵜・山中総合法律事務所)