労働基準広報
2016年1月1・11日新年特別合併号のポイント
●新春対談/どうなる今年の労働基準行政
働き方改革を強力に推進するため労働基準法改正案の早期成立図る
(山越敬一労働基準局長&労働評論家・飯田康夫氏)
厚生労働省労働基準局長の山越敬一氏と、本誌連載「労働スクランブル」の執筆者で労働評論家の飯田康夫氏が、平成28年の労働基準行政について新春対談を行った。
対談の中で、山越局長は、平成28年の重点課題として、①長時間労働削減、年次有給休暇取得促進等による働き方改革について、引き続き取り組んでいくこと、②働き方改革を強力に推進するため、現在継続審議となっている労働基準法改正案の早期成立を図ること――などを挙げた。併せて、現在、大きな問題となっている学生アルバイトの労働条件の確保、昨年12月に施行されたストレスチェック制度についての周知徹底、最低賃金引上げに向けた環境整備等に積極的に取り組んでいく考えを明らかにした。
●新春訪問/「働き方改革」に取り組むイキイキ職場
改革恐れず 改善怠らず 共通認識を
〈Ⅰ〉静岡県島田市・川根本町
〈Ⅱ〉トロシステムズ株式会社
〈Ⅲ〉株式会社ランクアップ
(編集部)
「働き方改革」とは、時間外労働時間の削減、年次有給休暇の取得促進、テレワークの導入、多様な正社員制度の導入など、労働者の意欲や能力が発揮される、働き方の見直しの取組みのこと。ワーク・ライフ・バランスの向上、生産性の向上、女性の活躍促進、雇用の安定などにより、地域社会の発展につながり、経済の好循環の実現につながるとされている。
今年の「新春訪問」では、地元企業やその従業員に年次有給休暇の取得促進を働きかける「静岡県
島田市・川根本町」、コミュニケーションツールを勤怠管理やテレワークに活用するなど社内外のコミュニケーション向上に尽力する「トロシステムズ株式会社」、女性が一生涯働ける会社を目指して長時間労働が不要な組織作りなどに取り組む「株式会社ランクアップ」に働き方改革の取組みについてきいた。取材を通じて、①改革・変化を恐れないこと、②改善・改良を怠らないこと、③取り組む意味の共通認識をもつこと――などが成功のカギであると感じた。
●新春特別企画/事業所設立の申請手続きとマイナンバー
事業所新設時は適用事業報告を提出
会社設立なら設立届出書等も必要に
(編集部)
企業が事業所を新設した場合や、新しく会社を設立して労働者を雇い入れた場合には、①労働基準法関係、②労働保険関係、③社会保険関係の様々な届出・手続が必要となる。例えば、事業所の新設の場合には、まず、労働基準法の「適用事業報告」の届出などが必要となるが、事業に独立性がないと認められた場合には、これらの届出は直近上位の事業所と一括して行われることとなる。
なお、平成28年1月以降の労働保険関係や社会保険関係の手続・届出の一部については、マイナンバーの記載が必要となるため注意したい。
●解釈例規物語 第76回/第24条関係
欠勤に対する賃金カット額の計算方法
(中川恒彦)
欠勤に対する賃金カット額は労基則第19条による計算額を超えることはできない(昭和27・5・10 基収第6054号)。
月給制の労働者が欠勤した場合、欠勤による賃金カットをしないのは自由であるが、ノーワーク・ノーペイの原則に従い、欠勤日数に応じて賃金をカットすることとしている事業場は多いであろう。
今回の解釈例規は、その場合のカット額について、割増賃金の単価計算の際の時間単価ないし日額単価(割増賃金率を乗ずる前の単価)による額を超えてはならないとするものである。
●弁護士&元監督官がズバリ解決!~労働問題の「今」~
第17回 マタハラ
最高裁が妊娠中の軽易業務転換に伴う降格は原則無効との判断示す
(弁護士・森井利和&特定社会保険労務士・森井博子)
妊娠や出産をめぐり不利益な扱いや嫌がらせを受ける「マタニティーハラスメント」(マタハラ)が社会問題となっている。
このような中、最高裁が、女性労働者につき妊娠中の軽易作業への転換を「契機として」降格させる事業主の措置は、原則として均等法9条3項で禁止される不利益取扱いであるとし、その例外として、①合理的理由の客観的に存在する承諾のある場合、②業務上の必要性があり、しかも実質的に9条3項の趣旨目的に反しないと認められる「特段の事情」が存在するときには、禁止される降格ではないとの判断を示した。
最高裁判決及び同判決での櫻井裁判官の補足意見を踏まえると、企業としては、産前産後休業や育児休業などを取得した労働者の復職に際して、労働者の意に反して不利益となるようなことを無理に承諾させたような場合には、均等法9条3項や育介法10条に違反して無効となるリスクがあるので、留意する必要がある。
●労働局ジャーナル
働き方改革への理解を深めるための
「和歌山働き方改革シンポジウム」を開催
(和歌山労働局)
平成27年11月12日、和歌山労働局(中原正裕局長)は、和歌山県、和歌山市、和歌山県経営者協会、日本労働組合総連合会和歌山県連合会(連合和歌山)とともに「和歌山働き方改革シンポジウム」を開催した。同シンポジウムでは、中央大学大学院戦略経営研究科の佐藤博樹教授による「なぜ働き方改革なのか?~管理職の役割が鍵~」というテーマの基調講演や、パネルディスカッションが行われた。
●レポート/「過労死等防止対策推進シンポジウム」〈東京会場〉
全国29
会場で過労死シンポジウムが開催
新たな労働時間規制の必要性など訴える
(編集部)
平成27 年11 月19 日、イイノホール&カンファレンスセンター(東京都千代田区)において、過労死等防止対策推進シンポジウム〈東京会場〉が開催された。同シンポジウムは、同年7月24 日に閣議決定された「過労死等の防止のための対策に関する大綱」に基づき開催されたもの。当日は、過労死弁護団全国連絡会議幹事長の川人博弁護士がコーディネーターを務め、過労死弁護団全国連絡会議事務局長の玉木一成弁護士、新日鐵住金㈱君津製鐵所総括産業医の宮本俊明氏、日本福祉大学社会福祉学部大学院特任教授の山崎喜比古氏──の3名がパネリストを務めるパネルディスカッションなどが行われた。
●企業税務講座/第61回 地方拠点強化税制①
オフィス減税 ~移転型と拡充型
(弁護士・橋森正樹)
平成27年度税制改正大綱の中には、「地方創生」に資する税制として「地方拠点強化税制」の創設が盛り込まれていた。その後の国会での審議を経て、平成27年6月には参議院で改正地域再生法が可決され、そして、同年8月10日に同法が施行された。
そこで、今回は、この改正地域再生法により創設される「地方拠点強化税制」について、解説してもらった。
●連載 労働スクランブル第238回(労働評論家・飯田康夫)
●NEWS
●わたしの監督雑感 埼玉・熊谷労働基準監督署長 小林雅彦
●編集室
労務相談室
解雇・退職
〔高待遇の採用者に試用期間設定〕ノルマ未達成で本採用拒否は
弁護士・荻谷聡史
社会保険
〔60歳代の男性2人を嘱託で採用〕年金減少しないためには
弁護士・前嶋義大
社会保険
〔傷病手当金受給者が療養のため退職〕退職後も受給できるか
特定社労士・飯野正明
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