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2020年1月 8日 (水)

令和二年 年頭所感 宮嵜雅則健康局長

令和二年 年頭所感

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厚生労働省健康局長 宮嵜 雅則

 

新年を迎えるに当たり、謹んでご挨拶を申し上げます。

皆様方には日頃から健康行政に対して格段のご理解とご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。

 

健康局は、人生一〇〇年時代を見据え、健康寿命の延伸を図り、国民一人ひとりができるだけ長く、元気に暮らすことができるよう、健康づくり、疾病の予防や重層化予防、健康危機管理対応などを担っています。今年7月のオリンピック・パラリンピックの開催に伴う訪日外国人の増加や、生産年齢人口の減少が加速化する二〇四〇年を展望し、健康寿命の延伸を図ることで社会保障の担い手を確保していかなければならないことを考えると、当局は、個人の生活のみならず、社会保障制度の基盤づくりや国家プロジェクトへの対応においても重要な役割を担うこととなり、本年は、いっそう気を引き締め、健康行政の舵取りに当たっていかなければならないと考えています。

 

昨年は、台風十五号や台風十九号など、多くの災害が発生しました。災害時こそ保健衛生が重要です。災害発生時には、自治体との連携を強化し、住民の皆様の健康の保持を支援するため、災害時健康危機管理支援チーム(DHEAT)や保健師等の応援派遣の調整を迅速に実施するなど、地域における健康危機管理について万全の体制を期すよう取り組んでいきます。

 

感染症対策については、二〇一八年から、コンゴ民主共和国でエボラ出血熱の流行が続いており、世界保健機関(WHO)が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」に該当すると宣言しています。感染症対策は国境を超えた、かつ、国内での徹底した対応が必要になります。引き続き、感染症に関する正しい知識や予防接種などの国民への普及啓発のほか、感染症発生時に迅速かつ適切な対応が取れるよう対策に万全を期していきます。

 

結核については、結核の高まん延国の出生者が日本滞在中に結核を発症する事例が増加していることを踏まえ、結核を発病していないことを確認する入国前の結核スクリーニングの運用開始に向けて、法務省、外務省など関係省庁と連携して取り組んでいきます。

 

風しんについては、二〇一八年十二月にとりまとめた追加的対策に基づき、抗体保有率が約八十%と他の世代に比べて低い、現在四十歳から五十七歳の世代の男性について、予防接種法に基づく定期接種の対象とし、二〇二二年三月まで全国で原則無料で抗体検査及び定期接種を実施しています。事業者健診の機会等を利用して抗体検査を受けられる環境を整えることや、対象者本人や周囲の方に啓発を図ることで、二〇二〇年七月までに、まずは当該世代の男性の抗体保有率を八十五%以上に引き上げることを目指します。

 

薬剤耐性(AMR)対策については、国民や医療従事者に対する普及啓発活動や医療従事者向けガイドラインの見直し等を通じて抗菌薬適正使用の取組強化を図るとともに、令和二年度診療報酬改定で小児外来診療における抗菌薬の適正使用を評価する対象年齢の拡大を検討しています。また、国際協力の観点から、今年二月には、世界保健機関西大西洋事務局(WPRO)との共催で第三回AMRワンヘルス東京会議の開催を予定しており、アジア諸国で一丸となってAMR対策を進めていきます。

 

東京オリンピック・パラリンピックに向けては、昨年八月にとりまとめられた「東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた感染症対策に関する推進計画」に基づき、海外における感染症の発生動向を踏まえた検疫体制を強化するとともに、国内で発生した感染症に関するサーベイランス機能の強化に引き続き関係省庁や世界の国々とも連携して取り組んでいきます。

 

予防接種施策については、厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会において、近年の諸課題を踏まえ、予防接種の一層の信頼性向上等に向け、引き続き総合的な検討を行っていきます。また、ロタウイルスワクチンについては、同分科会において定期接種に位置づけることとされたことから、本年十月からの円滑な施行に向け取り組んでいきます。

 

受動喫煙対策については、二○二○年の東京オリンピック・パラリンピック等を契機に、国民の健康増進を一層図るため、本年4月の改正健康増進法の全面施行に向けた準備や普及啓発の促進等を進め、望まない受動喫煙のない社会の実現を目指します。

 

生活習慣病対策については、「健康日本21(第二次)」の中間評価を踏まえ、最終年度である二〇二二年度までに目標が達成できるよう、健康無関心層を含めた疾病の発症予防や重症化予防に向けた取組をさらに推進していきます。上昨年5月に厚生労働省の「二〇四〇年を展望した社会保障・働き方改革本部」においてとりまとめた「健康寿命延伸プラン」に基づく取組も着実に進めていきます。次期健康づくり運動を見据えた国民健康・栄養調査の実施や、フレイル対策も視野に入れた新たな食事摂取基準を活用した取組、国民の健康を支える保健師や管理栄養士等の更なる育成にも取り組んでいきます。

また、二〇二〇年に開催予定の栄養サミットでは、我が国の栄養政策に関する経験や知見を国際社会と共有し、栄養に関する更なる国際貢献に取り組んでいきます。

さらに、PHRについては、国民・患者の保健医療情報として、まずは健康(健診)等情報について、本人自身が予防や健康づくりに活用するとともに、それを患者の同意のもとに医療・介護現場で役立てる仕組みの構築に向けて取り組んでいきます。

 

がん対策については、第3期のがん対策推進基本計画に基づき、がん検診の受診率向上、がんゲノム医療提供体制の強化等に取り組むとともに、同計画について、今年、中間評価を実施する予定です。また、企業及び医療機関とそれらをつなぐコーディネーターによるトライアングル型のサポート体制の構築など、がんになっても自分らしく生きることのできる地域共生社会の実現を目指します。

 

循環器病対策については、昨年十二月に施行された「循環器病対策基本法」に基づき、循環器病対策推進基本計画を定め、予防や発症直後からリハビリを経て社会に復帰するまでの幅広い対策を推進していきます。腎疾患対策については、昨年から開始した慢性腎臓病診療連携構築モデル事業等を活用し、腎疾患対策の都道府県における好事例の横展開等を推進していきます

 

アレルギー疾患対策については、アレルギー疾患対策基本指針を踏まえ、都道府県における拠点病院の整備を進め、地域の実情に応じた対策を推進します。リウマチ対策については、平成三十年十一月に取りまとめられたリウマチ等対策委員会報告書を踏まえ、一層の対策を進めていきます。

 

肝炎対策については、平成二十八年六月に改定した肝炎対策基本指針に基づき、肝硬変、肝がんへの移行者を減らすことを目標に、肝疾患治療に対する医療費助成や肝炎検査の体制整備、肝がん・重度肝硬変の治療研究と患者の支援などを総合的に推進していきます。

 

B型肝炎訴訟については、特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法に基づき、和解手続が適正かつ迅速に進むよう、引き続き取り組んでいきます。

 

難病・小児慢性特定疾病対策については、昨年五月から、法施行後五年の検討規定に基づき、関係審議会において、医療費助成にとどまらず、医療提供体制の整備や治療方法の開発に向けた疾病の調査・研究、就労支援の充実、小児慢性特定疾病児童等に対する自立支援など幅広い事項について検討を進めており、その結果を踏まえ、必要な対策を講じてまいります。

 

 

原爆被爆者対策については、原爆投下から75年を迎える中で、原爆症の認定について引き続き迅速な審査に努めるなど、原爆被爆者の方々への支援を進めていきます。

 

臓器移植対策については、臓器提供施設間の連携構築などの体制整備に取り組むとともに、臓器提供に関する意思表示を促すための普及啓発を進めてまいります。造血幹細胞移植対策については、患者の疾病の種類や病状に応じ適切な移植術を選択し、実施できる医療体制を整備することにより治療成績の向上を図るとともに、移植後の患者の長期フォローアップ体制を充実させるための施策を推進していきます。

 

最後に、ハンセン病対策については、安倍総理の熊本地裁判決を受け入れる決断を契機に、原告団や弁護団の皆様との協議や、議員懇談会のご尽力の下、先の臨時国会で関連法が成立しました。厚生労働省としても、かつて採られた施設入所政策の下で、ハンセン病の元患者のみならず、ご家族の皆様も、偏見と差別の中で、長年にわたり多大の苦痛と苦難を強いられてきたという事実を深刻に受け止め、関連法に則り、昨年十一月に施行されたハンセン病元患者のご家族への補償制度の着実な実施に万全を期してまいります。あわせて、ハンセン病元患者の方々の社会復帰の支援や、元患者とそのご家族の名誉の回復、家族関係の回復の支援及び偏見・差別の解消などに全力で取り組みます。

 

国民一人ひとりが健康で質の高い生活を安心して送り、それぞれの能力を発揮できる社会の実現に向け、これらの課題のすべてに真摯に取り組むことをお誓い申し上げ、私の新年の挨拶とさせていただきます。

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