令和元年12月2日(月)認定NPO法人キャリア権推進ネットワークが「社会人の学び直し」をテーマに「第6回キャリア・コロッキアム」を開催
「越境」「越境学習者」「水平的学習」
「摩擦・迫害・風化」
「多様で緩やかな学びのコミュニティ」
などが【社会人の学び直し】キーワードに
グループワークでは
「どうしたら社会人がもっと学ぶようになるか?」
を参加者全員で検討
諏訪理事長からは、「この場は、まさに水平的学習の場」との指摘も
令和元年12月2日(月)19:00~21:10頃まで
認定NPO法人キャリア権推進ネットワークは、
講師に齊藤弘通 産業能率大学経営学部准教授を迎えて
「社会人の学び直し」をテーマに
「第6回キャリア・コロッキアム」を開催した。
齊藤氏は、基調報告の冒頭に「貧相なジョン・レノンなのでヒンレノン…」などと述べ、会場を一気に沸かせていた。
そして、
○ 「リカレント教育」という言葉は、1969年5月に初めて使われ、その歴史は50年にもなるが、日本では、近年になって政府の提言などで使用されるようになってきたこと。
○ 日本では、関係省庁(厚生労働省、経済産業省、文部科学省)が、各々政策を行っていること。
○ 企業が、外部教育機関として、大学・大学院等の活用をしないこと。
○ 従業員が大学等で学習することに対して、企業は「特に評価はない」という状況。
○ 特に地方では学び直しが難しい。
――などを報告した。
日本における社会人の学び直しの現状については、詳細な国際比較データや各省庁・研究機関などの調査データなどを交えて、
○ 日本人は学び直しをあまりしていない。
○ 意識は高いが実践してない(掛け声だけで実際やっていない)。
○ 社会の学習・自己啓発の状況も悲惨な状況。
○ 学ばないことに特に理由はないという状況。
○ 労働時間が削減されても、自己学習を始める人の割合が増えるわけではない。
○ 自主的な学びの行動をしているのは、専門職(社会福祉専門職、医療技術者、ソフトウェア・インターネット関連技術者等)。
○ 当初得た技術は陳腐化していく。新たな知識を身につける必要がある。
○ 『忙しいからやらない』は言い訳
――などの特徴や傾向があることを述べていた。
「Society5.0 イノベーション(革新、新機軸、新結合)が求められる社会におけるこれからの学びのあり方」については、「越境」や「水平学習」などをキーワードに解説。
「イノベーション」のためには、既存の前提への疑問の投げかけと問題の再構築が必要。そのためには、異質な他者との出会いや協働(=越境)による内省や学習が必要。異質な他者との協働の過程では、自らの前提・価値観との矛盾やコンフリクトも発生するため、アンラーニング(学習棄却)や「塩抜き」が必要となる(塩漬け人材ではダメ)。
企業が得意な「垂直的学習」(熟達による学び)に対して、「水平的学習」(越境による学び)では、境界を超えることで新しい学びが生じる可能性がある。自分が当たり前だと思っていたことが実はそうではない可能性に気付くことで、「水平的学習」が始まる。「水平的学習」がイノベーションを起こす。
越境による学びには、「組織コミットメントの向上」(社外の人々との接触を通じて、自組織の悪いところが見えてくる一方で、自組織の良いところも発見できる、という不思議な効果も。
――などと「越境」、「水平的学習」の意味や効果を説明。
その後、(多くの人がなんとなく感じていたが、うまく説明できなかったかもしれない)、同日の核心(の1つ)、「越境による学びをめぐる問題 ―摩擦・迫害・風化―」に話が進むと、「おお!」っと前傾姿勢になる参加者も。
齊藤氏は、
「越境先での学び」を本業に生かそうとした際に、既存組織(自身が勤務する職場や会社など)との間で、「摩擦」(例えば「お前なにかぶれてんだよ!」と言われる)が発生し(逆カルチャーショック問題)、「越境学習者」は迫害にあう(そして、ある者は坂本龍馬のように「脱藩」(離職)する)。
そのうち、「越境学習者」の越境先での学びの高揚感は薄れ、(美しい過去の思い出として)風化していく。
そのため、「越境学習者」には、そうした迫害を乗り越え、越境先での学びを翻訳し、既存組織に理解させる努力が求められる。
――など卓越した越境者になるために、求められる(精神的な)強さなどにも言及した。
さらに、(JILPTの調査から)大学・大学院での学習を職場で秘匿するケースや越境的学習が「迫害」にあうことが示唆されること――などを指摘し、
- 越境学習者(組織にとっては疎ましい存在)が、組織の中で、非正統的な学習活動を継続できるのか?
- 越境して学んだことを組織に持ち込もうとしたら、迫害されている同僚を観て、自分も「越境」しようと思うのか?
――などの問題を提起した。
続いて(同日の核心の2つ目)「社会人の学び直しを推進する上での課題」については、
「自助・共助・公助」を上手く組み合わせることが大切であり、
公助(国や公的機関)に関わる部分は、基盤が脆弱であることを再度指摘。
共助(企業)に関わる部分については、「本業以外の活動に対する上司・職場のネガティブな認識と集団圧力が背後にある?」、「ミレニアル世代(1981~1993生まれ)の旺盛な学び意欲、学び行動を阻害しないマネジメントが必要では?」などと指摘した。
共助(地域社会)に関わる部分については、大学・大学院はハードルが高いので、多様で緩やかな学びのコミュニティが社会に形成されることが望ましいと考えられ、その1つのケースとして、「#シブヤ大学」「#大ナゴヤ大学」「#福岡テンジン大学」(授業は参加者が自分たちでつくるなどの取組み)などの「地域密着型生涯学習大学」の取組みを紹介し、入りやすいコミュニティは、ボランティアスタッフの学び直しなどにつながり、「その後の学びに有効では?」と指摘していた。
自助(個人、自分自身)に関わる部分については、
①「継続的に学習すべし」(「すぐに役立つものは、すぐに役立たなくなる」リスクが高い社会 など)
②「リスク分散すべし」(シングルスキル→デュアルスキル、シングルキャリア→パラレルキャリア など)
③「社会関係資本を構築すべし」(「旧友は突然現れない」「本業人脈からは仕事は来ない」など)
――と具体的な例などを交えた3箇条を示した。
そして、基調報告の締めくくりには、「社会人の学び直しを促進するために必要だと考えていること」として、
★ 社会人が気楽に参加できる緩やかな・裾野の広い学習コミュニティを積極的に立ち上げ、学び直し人口の裾野を広げること(学びのきっかけづくり)
★ 「社会人の学び直し」を社会人の枠で完結させるのではなく、例えば、現役の学生と協働するなど、社会人の枠を超えたアプローチを模索すること
★ 役職者(上長)の積極的な学び直しと、組織内での情報発信・情報共有(学び直しを促す組織文化の醸成)を促すこと
――の3つをあげていた。
参加者からは、「キャリアコンサルタントに期待することは?」との質問が出ていた。
20:10頃には、諏訪康雄理事長が「どうしたら社会人がもっと学ぶようになるか?」という課題を提示。
参加者各自が3分のタイムリミットで、「Q1 What?(何が問題か?)」「Q2 Why?(なぜか?)」「Q3 How?(どうするべきか?)」の「2W1H」を配布された回答用紙に記入し、その後、5つの班別のグループワークがスタートした。
30分20:50からは、ジャンケンを勝ち抜いた代表者がグループの成果を発表した。
参加者からは、
① 留学のすすめ。リカレント教育に補助金。評価制度の見直し。
② 皆が行う必要があるのか。上の人がどんどん学んで欲しい。すぐ目の前の仕事に役立つようなプログラムによって評価されることに。人生を楽しむために学ぶことを忘れてはいけない。
③ ミレニアム世代の考え方を取り入れる。
④ アウトプットする場を。離職することは悪いことですか?
⑤ 個人がどうしたいのか考えなければならない。生きること、学ぶことをもう1回考える。学ぶきっかけが増えればいい。
――などの様々な意見が出ていた。
同日の締めくくりに、齊藤氏は、社会人の学び直しについて、
誰がターゲットなのか?
何を学べばよいか分からない。
スペックがよくわかっていない。
大学院の勉強は、すぐに役立たないが…。
上が学び直すことが大切。
――などについて述べていた。
グループワークと検討結果の発表もとても盛り上がり、気づけば午後9時をとうにすぎていたため、諏訪理事長の総括は理事長自らの判断でオミットされた(会場からは「ききたかったのに~」との残念がる声も)。
終了後には、齊藤氏から、2種類の追加資料が提供された。
齊藤氏の前には、午後9時半近くまで、名刺交換や質問をしたい参加者の列ができていた。
次回(第7回)は、ジェロントロジー(高齢学)をテーマに、令和2年2月以降の開催が予定されている。
【主催】
認定NPO法人キャリア権推進ネットワーク
http://www.career-ken.org/
【会場】
株式会社ライフワークス
https://www.lifeworks.co.jp/
セミナールーム
東京都港区虎ノ門3丁目4-7 虎ノ門36森ビル10階
【事務局担当】
株式会社ウイル
https://www.officewill.co.jp/
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