島青志氏による「ティール組織」(自律的組織)の講演と全員参加のグループワークを実施
認定NPO法人キャリア権推進ネットワーク(諏訪康雄理事長)は、令和元年9月17日(火)午後7時~午後9時に「第5回キャリア・コロッキアム」を開催した。ここでは、その様子をダイジェストで紹介する。
第5回の講師は、ティール組織を推進する一般社団法人自然経営研究会の代表理事を務める島青志(しま・せいじ)氏。 島氏は、株式会社Salt 代表取締役、経営コンサルタントとしても活躍している。
島氏は、冒頭に「ティール組織」(日本で7万部、全世界で20万部を超える売上を記録している)の著者であるフレデリック・ラルー 氏(ちょうど当日(9月17日)まで日本に滞在していたとのこと)とのツーショット写真や島氏が執筆したSF小説「シュレーディンガーの宇宙」の紹介などを行って会場をわかせてから、和やかで楽しげな雰囲気の中で「ティール(Teal)組織」の解説に入った。
島氏は、「ティール組織」(自律的組織)について、 現在の日本企業の多くがオレンジ組織(機械的組織) その次のグリーン組織(家族的組織)とは、法政大学の坂本光司教授の「日本でいちばん大切にしたい会社」のような会社であり、その次にくるのが「ティール組織」であることを説明し、
「ティール組織」は、
信頼で結びついてる
指示命令系統がない
「自律的組織の3つの誤解」(3つの神話)
組織構造がない
階層構造がない
全てがコンセンサスで決まる
「自律的組織の歴史」 日本はスクラム経営が多い
それがアジャイル開発、ホラクラシーに
日本のやってきたことがティール組織に影響を与えている
「自然(じねん)」とは、ネイチャーではなくナチュラル「本来的にそうであること」
それでは、自然(経営)モデルとはどうずればいいのか?
キーワードは「自己組織化」
自然界における自己組織化の例としては、 雪の結晶 アリの組織(蟻塚)などがある。
人間界の例としては、 自己組織化でできている東京(都市)の街並み キーボードの配列(QWERTY配列) 世界の鉄道の線路の幅(144cm) ビデオテープ VHSとβの件 などがある
――などの数々の実例やキーワード・センテンスを交えて解説した。
続いて同日のテーマの本丸と思われる「ティール組織の3つの突破口」に話を進めていった。
島氏は、「ティール組織の突破口」として、自主経営、全体性(自分だけでなく全体をみる)、存在目的(組織の理念、目的に共鳴すること。ただし作られた経営理念とは異なる)――の3つを示した。
島氏は、日本におけるティール組織の度合いが高いと思われる25社のアンケート結果も発表。参加者からは、「25社の選び方」や「ティール組織のメンバーには誰でもなれるのか」「個人の資質や能力は問われないのか」などの質問が出ていた。
参加者の「ティール組織を詳しく知りたい!」という熱意からか、事務局がエアコンの温度設定を何度も確認・変更する場面もみられた。
講演の予定時間(1時間)はあっという間に過ぎ(少々おしてしまったため、休憩時間を切り詰めて)、続いて、第2部の全員参加のグループワークが開始された。
後半のワークショップの開始に当たって、諏訪康雄理事長は、「社員に任せるから会社は進化する 日本版『ティール組織』で黒字になる経営の仕組み」の著者・株式会社日本レーザー 近藤宣之会長の話を紹介した。
株式会社日本レーザー(東京都・新宿区)では、ティール組織の概念が提唱されるかなり以前から、ティール組織とよく似た組織を構築してきたという。
※ 小誌2014年1月1日・11日合併号『新春企業訪問』では、「多様な働き方を支えるダブルアサインメント&マルチタスク 育児支える1業務2人担当制が会社と社員のリスク対策にも」というテーマで同社の取材記事を掲載している。
ワークショップでは、
① 変容する日本経営は「ティール組織」に近づいていくか?
② どんな業界の、どんな規模や歴史の企業組織が、どれほど近づいていきそうか? (逆にいえば、まるで近づいていきそうもないか?)
――をテーマに各グループで議論が開始された(制限時間30分)。
その後、4つのグループの代表者が発表を行った。
①については、
近づいていく企業もあると思うが多くなるかは疑問
大企業では難しそう
――などの意見が出ていた。
②については、
イノベーティブ、クリエイティブな業界が
安全、確実を保証する業界は厳しい
価値観・理念で自主的に動いていくことが必要
理念がわかっていれば
プロジェクトベースでわーっとやるイメージ
軍隊、警察はさすがに無理
(対テロ対策などで、)軍隊でもティール的な組織が必要かと
企業としても魅力を高めるのに取り入れていくのがいいのでは
理念が共通であるという前提がないと組織は無茶苦茶になる
――など様々な意見が出ていた。
講師をつとめた島青志 氏は、同日の締めくくりに当たって、
「ある論文で、2030年までに世界のトップ1000のグローバルな会社の20%がもしティールになったら、びっくりだろうと。逆に世界の会社の20%が全く自律的なことをしていないということだったら、世界は終わるだろう。という言い方をしているんですね。
そんなことはないだろうかと。
なんらかのかたちで、丸々大企業が入れるとかではなくて、部署ごとの動きであったり、色々な形で自律的なものが取り入れられたりとか、その中で、また新しいかたちができたり、ティールじゃないかもしれませんね。
もし今日を機会に、自分自身の中でまさに考えていく課題のひとつのきっかけにできれば、とても本望かと思っています。私自身もまだまだ模索中ですので、これからも色々とご意見の交換などさせていただければ、今日はありがとうございました。」
――などと述べていた。
諏訪康雄理事長は、
「今日は、今もっともホットな話題の1つであるティール組織について、島先生からのご報告をいただき、そして、それに沿って、今の日本、近未来の日本の組織はどんなふうになりそうか、ということのご議論をいただきました。
世の中の変化を考えてみますと、これほどSNSが、例えば色々なところで、世の中を動かしたり、あるいは政治のコミュニケーションのあり方として、これほどツイッターが幅を利かせるなんて、ほとんど我々は想像だにしていなかったのですが、このように変化が色々な形で起きてくるんじゃないか。そのときにティール型が最終目標かどうかとか、そういうことはよくわからない。なぜならば、世の中には色々な組織形態、組織運営のあり方があって、それがモザイク状になりながら、それそれの部分部分で適者生存的なものを繰り返していくんじゃないかなと思います。
というわけで、ティールが今後、伸びていくかどうかは、ティールをしたら、我が社はすごい利益を挙げた!とか、あるいは、次々従業員が大きな仕事をしていた!だとか、こういった成果というかパフォーマンスというのが、影響を与えていくのだと思います。
今後も、意識してみていく分野かと思います。
逆に言えば、まるでティールと関係ないという組織、そっちの方向には動かないという組織も、社会運営の中では残っていくだろうと思います。
しかし、そうした組織が人材をどんなふうに集めて、育成していくか、などということは、今後また見方は変わっていくのかなぁと思います。
というわけで今日は、ティール組織をめぐる報告と組織をめぐる議論をしていただきました。我々のキャリア・コロッキアムも、今後とも絶えず、世の中の動きの最先端に近い部分をみなさんと一緒に検証し、そして議論していきたいと思います。
次回の勉強会にも、機会が、あるいは関心がありましたら、ぜひ、積極的にご参加いただきたいと思います。本日はどうもありがとうございました。お疲れ様でした。」
――と語っていた。
「第6回キャリア・コロッキアム」の開催は、認定NPO法人キャリア権推進ネットワークのHP(http://career-ken.org)に告知される予定。