【平成28年 年頭所感】厚生労働省 政策統括官(労働担当) 安藤よし子 氏
平成二十八年 年頭所感
厚生労働省政策統括官(労働担当) 安藤 よし子
明けましておめでとうございます。
新春を迎えるにあたり、年頭のご挨拶を申し上げますとともに、日頃の厚生労働行政へのご理解とご協力に心から御礼申し上げます。
最近の雇用・失業情勢は、景気の緩やかな回復基調が続く中、平成二七年十月の完全失業率が二十年三か月ぶりの低水準となり、同年九月の有効求人倍率が二十三年八か月ぶりの水準まで改善するなど、着実に改善が進みました。また、賃金についても、春季労使交渉の結果、妥結額、賃上げ率はともに、平成十年以来十七年ぶりの水準となりました。本年も、景気は緩やかな回復に向かうことが期待されており、雇用情勢についても、改善していくことが期待されます。
昨年九月に公表した労働経済白書は、我が国が今後、持続的な経済成長を実現していくために欠かせない取組の一つとして「労働生産性の向上」に焦点を当てて分析を行いました。我が国の労働生産性の水準は欧米諸国と比較して低くなっています。特に米国と比較した場合、労働生産性の水準とIT投資ともに低い状況にあります。このことから、労働生産性の向上には、IT投資を積極的に行っていくことが必要ですが、人的資本投資と同時的に取り組まれることで、成長がより高まることが本白書で明らかになっており、両面の強化が重要です。また、人的資本投資をはじめとする「無形資産」に注目したところ、我が国は「無形資産」への投資割合が低く、その中でも特に人的資本投資の割合が低いことが示唆されました。この推計ではOJTが含まれていないことに留意が必要ですが、我が国の企業において将来に向けた人的資本の蓄積が十分になされていないことも懸念されます。
昨年、総理から、少子高齢化の流れに歯止めをかけ、誰もが活躍できる「一億総活躍」社会を創り上げるため、「ニッポン一億総活躍プラン」の策定が表明されました。「一億総活躍」社会の実現に向けては、新しい三本の矢いずれにも責任を持つ厚生労働省としてしっかり取り組む必要があり、昨年十月には塩崎厚生労働大臣を本部長とする厚生労働省一億総活躍実現本部を設置しました。特に、第一の矢「希望を生み出す強い経済」については、ICTや介護ロボットの活躍推進等による医療・介護分野等の生産性革命や、地方自治体や労使等の関係者による働き方改革に向けた取組の支援をはじめ、金融機関とも連携した取組による「全産業の生産性革命」を実現するため、部局横断的に検討を行っています。
経済のグローバル化等に対応するために行われる会社分割、事業譲渡などの企業組織の変動に伴う労働関係の諸課題については、昨年十一月に、学識経験者から成る「組織の変動に伴う労働関係に関する研究会」において、報告書を取りまとめたところです。
今後、労使の意見も踏まえつつ、この報告書も踏まえた実効ある政策を検討・実施してまいります。
これらのことに加え、労働政策の推進に当たっては、安定的な労使関係の維持・発展に向けた取組の積み重ねが不可欠です。我が国は、これまでも良好な労使関係の下で様々な難局を乗り越え、経済の発展と国民生活の向上を図ってきました。現在、労働行政としては全ての人々が生きがいを持って働き、能力を発揮できる社会の構築を強力に進めているところですが、実効性ある政策の推進のためには、働く現場における労使の協力と安定した労使関係がますます重要と考えます。労使関係の形成の重要性については、今後とも発信していきたいと考えております。
本年も国民の皆様の声に耳を傾け、労働政策の積極的な展開、より良い労使関係の実現に努めてまいりたいと考えております。本年が皆様にとりまして幸多き年となりますようご祈念申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。
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