【平成28年 年頭所感】厚生労働省 雇用均等・児童家庭局長 香取照幸 氏
厚生労働省雇用均等・児童家庭局長 香取 照幸
謹んで、新年の御祝辞を申し上げます。
皆様には、日頃から雇用均等行政及び児童福祉行政の推進に御理解と御協力を賜り、厚く御礼申し上げます。
昨秋、安倍総理より「一億総活躍」社会の実現に向けた「新・三本の矢」が示されました。
中でも、子ども・子育て支援については、日本の未来を支えるための重要な施策であり、第二の矢「夢を紡ぐ子育て支援」として位置付けられています。結婚して子どもを持ちたいという国民の希望がかなう社会を実現するためには、結婚や子育て等の希望実現を阻害する要因を一つ一つ取り除き、「仕事」と「結婚、妊娠・出産、子育て」とを同時に実現できる構造に転換することが重要です。このため、「働き方改革・両立支援」と「総合的子育て支援」を車の両輪として進めてまいります。
幼年期の教育・保育、地域の子ども・子育て支援を総合的に推進するため、昨年四月から新たに施行された子ども・子育て支援新制度の着実な実施に引き続き努めていきます。
保育の分野では、保育所等の待機児童数が依然として二万人を超えており、その解消は、政府の成長戦略の柱の一つである女性の活躍推進のためにも、喫緊の課題となっています。このため、「待機児童解消加速化プラン」に基づく平成二十九年度末までの整備目標を前倒し・上積みし、四十万人から五十万人とします。引き続き、待機児童を解消することを目指し、受け皿拡大を進めていきます。
待機児童の解消に当たって、現在、全国的な課題となっているのが保育士不足です。この解決に当たっては、保育士の処遇改善をより一層進めていくことが重要ですが、保育士の職場定着支援や潜在保育士に現場に戻っていただくための支援を行うとともに、朝夕の保育士配置要件の弾力化をはじめとする多様な担い手の確保策を講じるなど、様々な支援に一体的に取り組んでいくこととしています。
また、いわゆる「小一の壁」を打破するため、小学校就学後に確実に放課後児童クラブを利用できるよう、平成二十六年七月に策定した「放課後子ども総合プラン」に基づき、平成三十一年度末までに約三十万人分の受け皿を新たに整備します。
母子保健の分野では、妊娠期から子育て期までの切れ目ない支援を提供するため、子育て世代包括支援センターを核とした仕組みの整備を推進するとともに、地域の実情に応じた産前産後サポート、産後ケアの実施に努めます。また、不妊治療への助成の拡充等、引き続き、様々な施策を積極的に実施することにより、安心して子どもを産み・育てることが出来る社会の実現を図ります。
児童虐待については、相談対応件数が年々増加しており、痛ましい事件が後を絶たないなど、依然として深刻な状況が続いています。こうした現状を踏まえ、昨年九月に設置した、「新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会」において、国・都道府県・市町村の連携・協力体制の再編・強化、児童相談所及び市町村の専門性の強化等が議論されました。社会的養護については、里親制度や施設ケアの充実強化、自立支援の強化も挙げられています。これらを踏まえ、子どもの成長時期ごとの課題に応じた必要な支援の実現に向けて取り組んでいく必要があります。
併せて、子どもの将来がその生まれ育った環境によって左右されることのないよう、また、貧困が世代を超えて連鎖することのないよう、必要な環境整備と教育の機会均等を図ることが極めて重要です。特に、子育てと生計の維持を一人で担っている点で厳しい状況にあるのがひとり親家庭です。ひとり親が子育てと両立しながら就業による自立を実現するとともに、子どもが心身共に健やかに成長することができるよう、自治体のワンストップ窓口の整備、子どもの居場所づくり、児童扶養手当の充実、親の資格取得支援などの取組を進めます。
ひとり親家庭等への支援及び児童虐待防止については、昨年末に政策パッケージが取りまとめられたところです。併せて、通常国会への児童福祉法等の改正法案の提出を目指しています。これらを踏まえ、すべての子どもが健やかに育つ社会の実現に向け、取組を一層進めてまいります。
「新・三本の矢」のうち、第二の矢「夢を紡ぐ子育て支援」として「働き方改革・両立支援」を進めるとともに、第三の矢「安心につながる社会保障」として介護を理由に離職せざるを得ない状況を改善できるよう、男女共に仕事と育児や介護との両立がしやすい職場環境を整備することが重要です。このため、育児・介護休業法について、介護休業の分割取得、介護休暇の半日取得や、非正規雇用労働者に係る育児休業取得要件の見直し等を検討し、改正法案の次期通常国会への提出を目指します。
さらに、企業における仕事と育児の両立支援の取組促進のため、改正次世代育成支援対策推進法に基づき、一般事業主行動計画の策定、くるみん認定及びプラチナくるみん認定に向けた働きかけを行います。
また、昨年八月に成立した女性活躍推進法では、従業員三〇一人以上の企業に、自社の女性の活躍に関する状況把握、課題分析、行動計画の策定等を求めているところです。同法の着実な施行により、各企業において、男女を通じて能力を十分に発揮して働くことができる社会の実現を図ります。
あわせて、妊娠・出産・育児休業等を理由とする上司・同僚からの就業環境を害する行為を防止する措置を事業主に義務付けること等を検討し、改正法案の次期通常国会への提出を目指します。
パートタイム労働対策については、パートタイム労働者の均等・均衡待遇の確保等に向けて、改正パートタイム労働法の着実な履行確保等を図るとともに、職務分析・職務評価の普及促進、短時間正社員制度の導入支援を実施してまいります。
東日本大震災への対応についても重要な課題です。東日本大震災により被災した子ども達に対する支援については、避難の長期化等の事情に応じて実施する必要があることから、仮設住宅などで避難生活を余儀なくされている子ども達がいる世帯等を訪問し、心身の健康に関する相談を実施する事業等について引き続き着実に実施していきます。
本年も国民の皆様の声に耳を傾け、当局が担当する幅広い分野において、より良い行政を推進するために力を尽くしてまいりたいと思っております。本年が皆様にとりまして幸多き年となりますよう御祈念申し上げ、新年の御挨拶とさせていただきます。
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