【平成28年 年頭所感】厚生労働省 派遣・有期労働対策部長 坂口 卓 氏
年頭所感
派遣・有期労働対策部長 坂口 卓
新春を迎え、謹んでお慶びを申し上げます。
日本経済は、雇用・所得環境の改善傾向が続き、緩やかな回復基調にある中で、有期契約労働者、パートタイム労働者、派遣労働者といった非正規雇用は、労働者全体の三分の一を超える状況にあり、不本意ながら非正規雇用で働いている方々も、その割合は減少傾向にあるものの、少なくありません。
少子高齢化の進展による生産年齢人口の減少が見込まれる中、日本経済の好循環の動きを更に進めていくためには、雇用情勢が着実に改善しているこのタイミングを捉え、非正規雇用で働いている方の希望や意欲に応じて正社員転換・待遇改善を実現していくことが重要です。その結果、雇用の質が高まり、生産性の向上が期待できるため、これからの我が国の経済成長にとって不可欠であると考えます。
今年、派遣・有期労働対策部は、非正規雇用対策を総合的に推進する統括部局として、改訂日本再興戦略に掲げられた「雇用制度改革」「人材力の強化」の実現に向けて、次の六つの課題に、着実かつ迅速に取り組んでまいります。
一.改訂日本再興戦略においても、非正規雇用労働者の正社員転換や雇用管理改善の重要性が指摘され、その取組を加速させていくことが盛り込まれたこと等を踏まえ、昨年九月に大臣を本部長として、「正社員転換・待遇改善実現本部」を設置し、本年一月には、今後五年間の非正規雇用対策に係る目標値や具体的施策を定めた「正社員転換・待遇改善実現プラン」を策定することとしております。また、昨年一〇月以降、全国四十七の都道府県労働局にも「本部」が設置されており、本年三月には各県ごとの「地域プラン」を策定することとしております。こうした取組を通じて、非正規雇用で働く方の正社員転換や待遇改善を強力に推進してまいります。
二.労働者派遣制度については、労働者と企業の双方のニーズに対応し、迅速かつ的確な労働力需給調整システムとして、我が国の労働市場において重要な役割を果たしています。
昨年九月には、労働者派遣法について、平成二十四年の改正法の国会審議における附帯決議等を踏まえ、労働者派遣事業をすべて許可制とし、事業の質の向上を図るとともに、派遣労働者のキャリアアップの支援や雇用の安定を図り、派遣期間の規制を労使双方にとって分かりやすい仕組みに見直すことを内容とする改正法が成立しました。
引き続き、労働者派遣法改正法の円滑な施行に取り組んでまいります。
三.今春の高校新卒者の内定率は、昨年九月末現在で五六・一%と前年を上回っていますが、大学新卒者の内定率は、昨年十月現在で六六・五%と前年同月比で微減しており、未内定の新卒者や既卒者が存在し、また、フリーター数も高止まりしていることから、引き続き、若者への就職支援に全力で取り組む必要があります。
このため、「新卒応援ハローワーク」等における新卒者等の安定就労への支援を進めるとともに、「わかものハローワーク」等を通じたフリーター等の正規雇用に向けた支援などに取り組んでいます。
また、昨年九月に成立した若者雇用促進法の着実な施行等を通じて、我が国の将来を担う若者が安定した雇用の中で経験を積みながら職業能力を向上させ、働きがいを持って仕事に取り組んでいくことができる環境を確保してまいります。
四.生活保護受給者数は、依然として高止まりしていることなどから、生活保護受給者を含めた生活困窮者に対し、ハローワークと地方自治体が一体となった就労支援を推進してきました。昨年四月に施行された「生活困窮者自立支援法」に基づき設置された自立相談支援機関との連携を図ってきたところです。
今後も、福祉事務所に設置するハローワークの常設窓口を増設するなど、両機関が一体となった就労支援の更なる充実を図り、生活保護受給者を含めた生活困窮者の就労による自立を促進していきます。
刑務所出所者等に対する就労支援は、再犯防止のために極めて重要です。一昨年十二月に開催された犯罪対策閣僚会議において、「宣言:犯罪に戻らない・戻さない」が決定され、二〇二〇年までに刑務所出所者等を雇用している企業の数を三倍にするなどの目標が掲げられたことなどを踏まえ、刑務所出所者等とその事情を理解した上で雇用する企業とのマッチングの強化等を図ります。
五.民間人材サービス業界全体の質的向上及び求職者や労働者と受入企業との適切なマッチングを促進するため、優良な職業紹介事業者や労働者派遣事業者を昨年三月に初めて認定したところであり、引き続き同認定制度の推進に取り組むこととしています。また、民間人材サービスを活用した学卒未就職者、育児等による離職者等の就職支援にも引き続き取り組むこととしています。
六.外国人労働者数は過去最高の約七十九万人となり、また、改訂日本再興戦略においては高度外国人材の受入れ促進やIT・観光分野などにおける外国人材の活用促進が盛り込まれているところです。今後、外国人労働者の更なる増加が見込まれることを踏まえ、外国人労働者が適正な雇用管理の下で就労できるよう、就労環境の確保に努めます。
また、留学生の国内企業への就労支援については、関係機関・省庁との連携の下、マッチング機能の更なる充実など取組の強化を図ります。
日系人等の定住外国人については、外国人集住地域のハローワークを中心に、通訳や相談員を配置し、機動的な相談・支援機能の強化を図るとともに、日本語能力向上などの就労支援を推進します。
経済連携協定に基づく看護師や介護福祉士の候補者の特例的な受入れについては、インドネシア、フィリピン及びベトナムから受入れを行っており、引き続き、国内労働市場への影響を考慮しつつ、受入れ方法の改善や適正な雇用管理を推進してまいります。
派遣・有期労働対策部は、政府の喫緊の課題を数多く抱えておりますが、これらの課題に全力で取り組んでいきますので、一層のご支援とご協力をよろしくお願い申し上げます。
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