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2016年1月 1日 (金)

【平成28年 年頭所感】厚生労働事務次官 二川一男 氏

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年頭所感

 

 

(はじめに)

新年を迎え、謹んで年頭の御祝辞を申し上げます。

年の初めに当たり、改めて皆様の日頃からの厚生労働行政への御理解と御協力に感謝申し上げますとともに、今後の厚生労働行政の展開につきまして述べさせていただきます。

 

(「一億総活躍」社会の実現に向けた取組)

「一億総活躍」社会の実現に向けては、新しい三本の矢いずれにも責任を持つ厚生労働省としてしっかり取り組む必要があります。昨年十月には大臣を本部長とする「厚生労働省一億総活躍社会実現本部」を設置し、具体的な施策の検討を進め、昨年十一月には一億総活躍国民会議において緊急対策が取りまとめられました。また、今春には「ニッポン一億総活躍プラン」として道筋が取りまとめられる予定になっています。

厚生労働省としても、国民の一人ひとり誰もが、家庭で、職場で、地域で、活躍する場所があり、将来の夢や希望に向けて取り組むことができるよう、「全産業の生産性革命」、「希望出生率一.八」、「介護離職ゼロ」の実現を目指し取り組んでいきます。

 

(持続可能な社会保障制度の確立)

今後も高齢化が進展していく中で、世界に冠たる国民皆保険・皆年金をはじめとする社会保障制度をしっかりと次世代に引き渡していくため、安定財源を確保して制度の充実・安定化を図るとともに、重点化・効率化に取り組んでいきます。

昨年末には、骨太の方針二〇一五に位置付けられた「経済・財政再生計画」に基づき、経済財政諮問会議において、財政健全化目標の達成時期である二〇二〇年度に向けた社会保障制度の改革工程表が取りまとめられました。改革工程表に基づき、改革の進捗管理をしっかりと行いながら、医療・介護の提供体制の改革や予防インセンティブの強化等に取り組み、持続可能で安心できる社会保障制度を構築していきます。

また、昨年六月には、保健医療政策について、中長期にわたる政策のパラダイムシフトや変革の方向性についてのビジョンが取りまとめられました。このビジョンの実現に向けて、しっかりと実行・実現を進めていきます。

 

(医療保険)

医療保険制度については、昨年五月に成立した医療保険制度改革法の円滑な施行、医療費適正化の取組を着実に進めるとともに、地域包括ケアシステムの構築と、質が高く効率的な医療提供体制の構築に向けて、診療報酬改定を含めてしっかりと取り組んでいきます。

 

(医療提供体制)

今年は、各地域で地域医療構想として二○二五年における医療提供体制のビジョンを示す年です。厚生労働省としても、地域医療構想の達成に向け、地域医療介護総合確保基金等による支援を行うとともに、構想達成のための選択肢として地域医療連携推進法人を活用していただけるよう、関係法令をできる限り早くお示しするなどの取組を進めていきます。また、地域医療構想との整合性や地域間偏在の是正等の観点を踏まえた医師・看護職員等の需給に関する検討を行います。これらを通じ、質が高く効率的な医療提供体制の構築に引き続き取り組んでいきます。

 

(国際保健、医療の国際展開)

国際保健分野については、国際的な公衆衛生危機への備えと対応、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの推進、強靱で持続可能な保健システムの構築、超高齢社会への対応や非感染性疾患の予防、薬剤耐性菌(AMR)対策等の課題に対応していく必要があります。本年五月の伊勢志摩サミット、九月のG7神戸保健大臣会合等において、これらの課題について議論を主導していきます。

特に、G7神戸保健大臣会合については、兵庫県や神戸市等の関係者のご協力を得ながら、会議運営、接遇において遺漏なきよう行うことで適切に対応していきたいと思います。

また、昨年四月には、国立研究開発法人日本医療研究開発機構が創設され、「健康・医療戦略推進本部」の決定する方針の下、医療分野の研究開発を推進する体制が整えられました。世界をリードする革新的な医療技術の研究・実用化を後押しすることにより、日本の医療関連産業の国際競争力の強化を図っていきます。

 

(医療分野での新技術の活用)

ゲノム医療については、個々人の体質や病状に適した、より効果的・効率的な疾患の診断、治療、予防が可能となることから期待が高まっており、昨年十一月に設けたタスクフォースにおいて、ゲノム医療の質の確保など実用化に向けた諸課題の検討を進めていきます。

また、「保健医療分野におけるICT活用推進懇談会」において、保健医療におけるICTの活用のあるべき姿を検討していきます。

我が国のバイオベンチャーの育成支援については、官民一体となって取り組む観点から、外部有識者による懇談会を立ち上げ、バイオベンチャーを育てる好循環(エコシステム)の確立に向けて検討していきます。

 

(感染症、疾病対策等)

感染症対策については、エボラ出血熱や中東呼吸器症候群(MERS)の動向が落ち着いてきているところですが、国民の生命や健康を守るため、他の新興・再興感染症の発生・流行に備え、引き続き対策に万全を期していきます。

がん対策については、昨年策定した「がん対策加速化プラン」に基づき、「予防」「治療・研究」「がんとの共生」を柱として、がんの克服に向けた取組を加速するとともに、本日施行されたがん登録推進法の円滑な実施に取り組んでいきます。

難病や小児慢性特定疾病については、昨年一月から、難病法等に基づき、対象疾病を拡大し医療費助成制度を実施しているところです。今後とも、国が定めた基本方針の下、難病等の克服を目指し、疾病の調査・研究、医療提供体制整備、就労支援など総合的な対策を進めていきます。

肝炎対策については、肝炎総合対策を推進するとともに、特定B型肝炎ウイルス感染症者給付金等の支援に関する特別措置法に基づく給付金の請求期限の延長等について検討していきます。

生活習慣病対策については、予防に取り組むとともに、「健康日本21(第二次)」に基づく健康寿命の延伸、健康格差の縮小に向け、社会全体として、国民の健康づくりを支援していきます。

また、東京オリンピック・パラリンピックに向けた「おもてなしの環境づくり」を一つの契機として、受動喫煙対策を強化すべく、関係府省庁とも連携し、検討を進めていきます。

このほか、予防接種基本計画に基づく予防接種施策の推進、原爆被爆者やHIV感染者、ハンセン病回復者の方々への支援を引き続き進めていきます。

 

(医薬分業、医薬品等の迅速な承認)

薬剤師・薬局については、昨年十月に策定した「患者のための薬局ビジョン」を踏まえ、かかりつけ薬剤師・薬局の推進を図り、患者・住民から真に評価される医薬分業の速やかな実現を目指していきます。

また、地域住民による主体的な健康維持・増進を積極的に支援するため、「健康サポート薬局」を公表するなどの取組を行っていきます。

医薬品・医療機器等については、薬事戦略相談の拡充や、先駆け審査指定制度の確実な運用等により、世界に先駆けて革新的な医薬品、医療機器等が承認される環境の整備に取り組んでいきます。

 

(生活衛生・食品安全)

生活衛生関係営業について、営業者の振興と衛生の向上を図るとともに、いわゆる「民泊サービス」、老朽化した水道施設の計画的更新や耐震化、運営基盤強化のための広域化等を推進するとともに、引き続き食品の安全性の確保に取り組んでいきます。

 

(介護)

介護については、高齢者が介護が必要になっても住み慣れた地域で安心して暮らし続けることができるよう、医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスが切れ目なく一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築に引き続き取り組んでいきます。

また、在宅・施設サービスの整備や人材確保により、必要な介護サービスを確保するとともに、介護サービスを活用するための柔軟な働き方の普及や働く家族の方々等に対する相談・支援の充実に取り組むほか、介護現場におけるICTやロボットの活用を推進していきます。

 

(障害者施策)

障害のある方もその能力を存分に発揮できる環境の整備を推進し、共生社会の実現に向けた施策のより一層の充実が図られるよう、障害者総合支援法の施行後三年の見直しに向けた準備を着実に進めていきます。また、障害者に対する差別の禁止、合理的配慮の提供義務等を定めた改正障害者雇用促進法の本年四月からの円滑な施行に取り組んでいきます。

 

(社会福祉法人制度改革)

社会福祉法人については、福祉ニーズが多様化、複雑化する中で、その果たす役割はますます重要になっています。経営組織のガバナンスの強化等を講ずる「社会福祉法等の一部を改正する法律案」は継続審議となっていますが、高い公益性と非営利性を備えた社会福祉法人の在り方を徹底するため、引き続き早期成立に向けて取り組んでいきます。

 

(生活保護・生活困窮者施策)

生活保護・生活困窮者施策については、支援を必要とする人には確実に保護を実施するという基本的な考えの下、不正・不適正受給対策の推進や医療扶助の適正化を図るほか、受給者の自立に向けた就労支援を促進するとともに、昨年四月から施行された生活困窮者自立支援制度に基づき、生活困窮者に対する包括的な相談支援や就労支援等を着実に実施していきます。

 

(子育て支援)

子育て支援については、昨年四月から施行されている子ども・子育て支援新制度の着実な実施を通じ、引き続き、地域の子ども・子育て支援の総合的な推進を図ります。

また、若者の雇用・経済的基盤の改善や女性の継続就業の支援等の「働き方改革・両立支援」と、安全・安心に妊娠・出産・子育てのできる環境整備等の「総合的子育て支援」とを車の両輪として推進していきます。

 

(児童虐待の防止)

児童虐待については、児童虐待の相談対応件数が年々増加しており、子どもの命が奪われる痛ましい事件が後を絶たないなど、依然として深刻な状況が続いています。こうした現状を踏まえ、昨年九月に設置した、「新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会」における御議論を踏まえ、子どもの成長時期ごとの課題に応じた必要な支援の実現に向けて取り組みます。

 

(安心できる年金制度の構築)

年金制度については、現在の高齢者世代と若い世代がともに高齢期に適切な所得を確保できるよう、高齢期の多様な就労を進めることとあわせて、公的年金と私的年金を通じた年金水準の確保を図っていくことが重要です。このため、公的年金について、中小企業の短時間労働者への被用者保険の選択的適用拡大など、必要な制度改正に取り組むとともに、継続審議となっている確定拠出年金法の改正法案の早期成立等に取り組みます。また、年金積立金の管理運用に係る法人について、適切なガバナンス、運用の在り方などを社会保障審議会年金部会で検討いただいており、その議論を踏まえて適切に対応します。

 

(日本年金機構における不正アクセスによる情報流出事案)

昨年五月に発生した日本年金機構における不正アクセスによる情報流出事案については、二度とこのようなことが起こることのないよう、厚生労働省に設置した外部有識者による検証委員会、政府サイバーセキュリティ戦略本部での事案の解明結果を踏まえ、組織全体として再発防止にしっかりと取り組んでいきます。

厚生労働省においては、安全・安心で国民に信頼されるシステムを構築するため、「情報セキュリティ強化等に向けた組織・業務改革」を昨年九月に取りまとめ、情報セキュリティ対策室やCSIRT体制等の組織的強化、実践的訓練の実施等の人的対策、業務運営のルールの見直し・徹底、技術的側面からのシステム強化等、安全・安心で国民に信頼されるシステム構築に向け、情報セキュリティ対策の強化を総合的に進めております。

また、日本年金機構においても、昨年十二月、組織の一体化や内部統制の確保、情報開示の見直し、情報セキュリティ対策の強化を内容とした業務改善計画が取りまとめられ、厚生労働省に提出されました。日本年金機構では本年一月からこれらの改革に着手することとしており、改革が確実に実行されるよう、厚生労働省においても監督を行い、年金事業に対する国民の信頼回復に努めていきます。

 

(働き方改革)

働き方改革については、長時間労働の削減に向けて、大臣を本部長とする「長時間労働削減推進本部」において、月百時間を超える残業が疑われるすべての事業場等に対する監督指導の徹底等、引き続き、省を挙げて取組を行っていきます。また、昨年の国会に提出し、継続審議となっている労働基準法改正案は、年次有給休暇の取得促進や、中小企業における月六十時間を超える時間外労働に対する割増賃金率の引上げ等により長時間労働を抑制し、フレックスタイム制や企画業務型裁量労働制の見直し、高度プロフェッショナル制度の創設等により多様で柔軟な働き方を実現することにより、働き方改革をさらに強力に推進していくことを内容とするものであり、早期成立に引き続き取り組んでいきます。

 

(高齢者雇用・非正規雇用対策)

高齢者雇用対策については、六十五歳を超えて働きたい方が約五割を占めるなど高齢者の就業意欲が高い状況を踏まえ、六十五歳以上の方への雇用保険の適用に向けた検討を進めるとともに、シルバー人材センターの機能強化等により高齢者の多様な就労機会の確保に取り組んでいきます。

非正規雇用対策については、改訂日本再興戦略を踏まえ、非正規雇用で働く方の正社員転換や待遇改善を強力に推進するため、昨年九月に、大臣を本部長とする「正社員転換・待遇改善実現本部」を厚生労働省内に設置し、本年一月には、今後五年間の非正規雇用対策に係る目標値や具体的な施策等を盛り込んだ「正社員転換・待遇改善実現プラン」を策定し、非正規雇用で働く方の正社員転換・待遇改善に強力に取り組むこととしています。また、昨年の通常国会で成立した改正労働者派遣法の円滑な施行に引き続き取り組んでいきます。

 

(援護施策)

援護施策については、戦没者等の御遺族に対する特別弔慰金の円滑な支給に努めるほか、戦没者の遺骨収集帰還事業の促進を図るとともに、慰霊事業に着実に取り組み、戦傷病者や戦没者遺族、中国残留邦人等に対する支援策をきめ細かく実施していきます。

 

(東日本大震災への対応)

東日本大震災への対応については、発生からもうすぐ五年が経とうとする今もなお、多くの方々が避難生活を送っている現状を踏まえて、引き続き復興庁など関係省庁と連携して、こうした方々への支援や、将来を見据えた復興に向けた取組を行うことが大きな課題です。具体的には、避難生活の長期化に対応するとともに、地域の復興を進めるため、被災者の健康確保や心のケア、医療・介護の体制整備、雇用対策等に取り組んでいきます。また、東京電力福島第一原子力発電所事故への対応も重要な課題であり、発電所での作業や除染作業等に従事する方々の放射線障害防止や食品中の放射性物質の安全対策に努めていきます。

 

以上、厚生労働行政には多くの課題が山積しています。国民の皆様には、一層の御理解と御協力をお願い申し上げ、年頭にあたっての私の挨拶と致します。

 

 

平成二十八年元旦

厚生労働事務次官 二川 一男

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