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2015年3月27日 (金)

規制改革会議・解雇の金銭解決制度導入の検討を提言~申し立ては労働者側からのみに限定~

 
裁判所の訴訟における解決の選択肢の多様化に向けた解決金制度を検討
 
  政府の規制改革会議(議長/岡素之住友商事相談役)は今月25日、訴訟において「解雇無効」の判決が出された場合などに、現在の雇用関係継続(職場復帰)だけでなく、金銭の支払いで解決する「解決金制度」の導入を検討すべきとする提言をとりまとめました。
 
   提言では、この制度は、労働者側からの申し立てのみを認めることを前提とすべきであるとしています。
 
  いわゆる「解雇の金銭解決制度」については、2002年の労働政策審議会の労働基準法改正に関する建議において、その導入が提言されていましたが、労使で意見がまとまらず、労働基準法改正法案要綱には盛り込まれませんでした。
 
 また、2005年の「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会」の最終報告においても、導入の検討が提言されましたが、未だ法制化には至っていません。
 
 詳しくはこちら


「労使双方が納得する雇用終了の在り方」に関する意見
―紛争解決の早期化と選択肢の多様化を目指して―
                      平成27年3月25日
                        規制改革会議
1.改革の視点
 雇用終了時における紛争を未然に防止するためには、雇用開始時に終了事由を含めた就業規則や労働条件が明示され、労使双方が納得した上で労働契約が締結されることが何より重要である。多くの場合、当事者の合意の下に雇用契約が終了に至っているが、紛争が生じた場合には、早期に納得のいく解決が得られることが、働く者にとってきわめて重要である。
 現在、都道府県労働局や労働委員会における「あっせん」、裁判所における「労働審判手続き(調停)」などの制度が整備され、裁判所における「訴訟」とともに目的や事情に応じた解決手段を選択できるようになっている。また、それぞれにおいて金銭的な解決も図られている。しかしながら、現実には解決までに要する時間的・金銭的なコストをどこまで負担できるかで選択できる手段が限られてしまうことが多い。
 例えば、労働局のあっせんは利用しやすいが解決率が低いため、不当な解雇でも解決金すら得られないことが珍しくない。一方、訴訟での長期にわたる係争が可能な場合には、有利な和解金を期待して、敢えて解雇無効(労働契約の継続)を求めて争うこともあり、解決手段によって解決金額の水準に差が大きいことが指摘されている。
このように解決までの期間や解決金がまちまちで、紛争解決の予測可能性が低いことが、労使双方の雇用終了への対応に歪みをもたらしている。

2. 改革のポイント:利用者の視点からより使いやすく納得感の高いものに
 現在ある多様な解決手段がより有効に活用され、利用者の視点からより使いやすく、かつ労使双方が納得する早期解決が実現するようにすることが必要である。
また、訴訟において「解雇無効」となった時は、これまでの雇用契約の継続が確認され、元の職場への復帰の道が開かれるが、その判断は企業に任されているため、必ず実現できるとは限らない。企業との信頼関係が崩壊している場合などを含めさまざまな事情で復帰が困難な場合に、不当解雇に対する権利行使方法として労働者側に金銭解決の選択肢を付与することで、ニーズに沿った早期解決が期待できる。
 
そのため、次の改革に取り組むことを提言する。

3. 今後取り組むべき課題
(1)都道府県労働局が行うあっせんへの参加を促す方策
 国民にとってより身近で利用しやすい労働局のあっせんは、当事者が参加した場合の解決率は高いが、現在は使用者側の参加率が低いことから全体の解決率も低い。
このため、使用者の自発的参加を促す方策について検討すべきである。

(2)労働委員会の機能活用・強化と司法的解決との連携
 労働委員会は労使の委員が説得に参加し、納得感の高い解決が得られるため、その機能(あっせん等)を活用しやすくし、さらに強化すべきである。また、訴訟において当事者同士の話し合いや和解による解決を目指す場合も、労働委員会の機能を効果的に活用できるよう、その方策を検討すべきである。
 
(3)裁判所の訴訟における解決の選択肢の多様化に向けた解決金制度の検討
  訴訟の長期化や有利な和解金の取得を目的とする紛争を回避し、当事者の予測可能性を高め、紛争の早期解決を図ることが必要である。このため、解雇無効時において、現在の雇用関係継続以外の権利行使方法として、金銭解決の選択肢を労働者に明示的に付与し(解決金制度の導入)、選択肢の多様化を図ることを検討すべきである。またこの制度は、労働者側からの申し立てのみを認めることを前提とすべきである。
 一方、解決金制度の設計・導入の仕方によっては、現状の訴訟を通じた和解と比べて解決に至るまでの期間が長期化する懸念もある。紛争当事者の行動に及ぼす影響に十分留意しつつ、検討を進めるべきである。
 
  以上の検討項目について、労使の代表者、厚生労働省などの関係省庁、関係会議体が密接に連携して検討を開始し、結論を得るべきである。
以上


※参考:規制改革実施計画(平成26 年6 月24 日閣議決定)
事項名:労使双方が納得する雇用終了の在り方
労使双方が納得する雇用終了の在り方について、紛争の未然防止及び円滑な労働移動に資する観点から、下記の事項を含め、検討を行う。
①個別労働関係紛争解決に関する行政機能の強化について検討する。【平成26 年度検討開始、1 年を目途に結論】
②諸外国の関係制度・運用の状況に関する調査研究を行うなど、労働契約関係の継続以外の方法を含め、労使双方の利益に適った紛争解決を可能とするシステムの在り方について検討を進める。【平成26 年度中に調査研究を行い、その結果を踏まえ検討を進める】

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