« 第9回「中高年者縦断調査(中高年者の生活に関する継続調査)」の結果【厚生労働省】 | トップページ | 全国労働局長会議開催される【厚生労働省】現場のトップとしてさらなるリーダーシップを発揮していただきたい! »

2015年2月13日 (金)

労働政策審議会「今後の労働時間法制等の在り方について」塩崎厚生労働大臣に建議~労働基準法改正法案を今通常国会に提出へ~

 
 厚生労働省は本日(2月13日)、第125回労働政策審議会労働条件分科会に「今後の労働時間法制等の在り方について(報告案)」を提示しました。

Img_1321

 今回の報告書案は、2月6日に同分科会に提示していた「今後の労働時間法制等の在り方について(報告書案)」について、同日の分科会での労使の意見を踏まえ修正したものです。
  

 本日の第125回分科会では、検討の結果、報告案を了承し、労働政策審議会は本日、塩崎厚生労働大臣に対し、今後の労働時間法制等の在り方について建議を行いました。
 厚生労働省は、近く労働基準法改正法案要綱を同審議会に諮問するとしています。
  

  今通常国会(第189回)に労働基準法改正法案が提出される予定です。
 

 
建議のポイント
中小企業の月60時間を超える時間外労働の割増賃金率5割への引き上げは平成31年4月から
年次有給休暇の使用者への時季指定義務付けは年5日
フレックスタイム制の見直しは清算期間の上限を3か月に延長
企画業務型裁量労働制の対象業務に課題解決型提案営業の業務など追加
特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制)の年収要件は1075万円を参考に省令で規定
 
 
 
今後の労働時間法制等の在り方について(報告)
今後の労働時間法制等の在り方については、労働政策審議会労働条件分科会において、平成25 年9月27 日以降22 回にわたり検討を行い、精力的に議論を深めてきたところである。
我が国の労働時間をめぐる平成25 年時点の状況をみると、一般労働者の年間総実労働時間が2000 時間を上回る水準で推移する中、雇用者のうち週労働時間60 時間以上の者の割合は低下傾向にあるものの8.8%と平成32 年時点の政労使目標である5%を上回っており、特に30 歳代男性では17.2%となっている。また、年次有給休暇の取得率は48.8%であり、平成32 年時点の政労使目標である70%を下回っている状況にある。
こうした中、過労死等防止対策推進法が制定されるなど、労働者の健康確保に向けた一層の取組が求められるとともに、次世代育成支援や女性の活躍推進等の観点からも、長時間労働を抑制し、仕事と生活の調和のとれた働き方を拡げていくことが喫緊の課題となっている。
また、経済のグローバル化の進展等に伴い、企業において創造的な仕事の重要性が高まる中で、時間ではなく成果で評価される働き方の下、高度な専門能力を有する労働者が、その意欲や能力を十分に発揮できるようにしていくことなどが求められており、健康確保措置を前提に、こうした働き方に対応した選択肢を増やしていくことも課題となっている。
このような考え方に基づき、当分科会において労働時間法制等の在り方について検討を行った結果は、下記のとおりである。
この報告を受けて、厚生労働省において、平成28 年4月の施行に向けて、通常国会における労働基準法等の改正をはじめ所要の措置を講ずることが適当である。
  
                 記
1 働き過ぎ防止のための法制度の整備等
法制度の整備の前提として、過重労働等の撲滅に向けた監督指導の徹底とともに、長時間労働抑制や年次有給休暇取得促進等に向けた労使の自主的取組の促進等に、引き続き積極的に取り組むことが適当である。
その上で、労働者の健康確保を図る観点から、以下の法制度の整備を行うことが適当である。
なお、時間外労働に係る上限規制の導入や、すべての労働者を対象とした休息時間(勤務間インターバル)規制の導入については、結論を得るに至らなかった。
労働者代表委員から、長時間労働の抑止が喫緊の課題となる中、過労死その他長時間労働による労働者の健康被害の予防とワーク・ライフ・バランスの確保を図るため、実効的な労働時間法制を整備すべきであり、とりわけ、すべての労働者を対象に労働時間の量的上限規制及び休息時間(勤務間インターバル)規制を導入すべきとの意見があった。
(1) 長時間労働抑制策
① 中小企業における月60 時間超の時間外労働に対する割増賃金率の適用猶予の見直し
・ 中小企業において特に長時間労働者比率が高い業種を中心に、関係行政機関や業界団体等との連携の下、長時間労働の抑制に向けた環境整備を進めることが適当である。
・ 上記の環境整備を図りつつ、中小企業労働者の長時間労働を抑制し、その健康確保等を図る観点から、月60 時間を超える時間外労働の割増賃金率を5割以上とする
労働基準法第37 条第1項ただし書きの規定について、中小企業事業主にも適用することが適当である。
・ 中小企業の経営環境の現状に照らし、上記改正の施行時期は他の法改正事項の施行の3年後となる平成31 年4月とすることが適当である。
② 健康確保のための時間外労働に対する監督指導の強化
・ 時間外労働の抑制のため、行政官庁は、時間外限度基準に関する助言指導を行うに当たっては、労働者の健康が確保されるよう配慮する旨を労働基準法に規定し、当該規定に基づき、長時間労働の実態に即した的確な助言及び指導を行うことが適当である。
・ 上記の法整備の趣旨を踏まえ、時間外労働の特別条項を労使間で協定する場合の様式を定め、当該様式には告示上の限度時間を超えて労働する場合の特別の臨時的な事情、労使がとる手続、特別延長時間、特別延長を行う回数、限度時間を超えて労働した労働者に講ずる健康確保措置及び割増賃金率を記入することとすることが適当である。
・ 併せて、時間外労働の特別条項を労使間で協定する場合、限度時間を超えて労働した労働者に講ずる健康確保措置を定めなければならないことを時間外限度基準告示において規定し、健康確保措置として望ましい内容を通達で示すことが適当である。
・ 健康確保措置の確実な履行を図る観点から、使用者は、措置の実施状況等に係る書類を作成し、3年間確実に保存しなければならない旨を時間外限度基準告示に規定することが適当である。
③ 所定外労働の削減に向けた労使の自主的取組の促進
・ 労使の自主的な取組を促進する労働時間等設定改善指針に、週60 時間以上の長時間労働が恒常的なものにならないようにする等の現行の規定に加え、「脳・心臓疾患の労災認定基準における労働時間の水準も踏まえ、『1か月に100 時間』又は『2か月間ないし6か月にわたって、1か月当たり80 時間』を超える時間外・休日労働が発生するおそれのある場合、適切な健康確保措置を講じるとともに、業務の在り方等を改善し、特別延長時間の縮減に向けて取り組むことが望ましい」旨を盛り込むことが適当である。
・ 上記の内容について、都道府県労働局に配置している働き方・休み方改善コンサルタント等による助言や各種の啓発の取組を通じ、周知徹底していくことが適当である。
(2) 健康に配慮した休日の確保
・ 週休制の原則等を定める労働基準法第35 条が、必ずしも休日を特定すべきことを求めていないことに着目し、月60 時間超の時間外労働に対する5割以上の割増賃金率の適用を回避するために休日振替を行うことにより、休日労働の割増賃金率である3割5分以上の適用を推奨する動向については、法制度の趣旨を潜脱するものであり、本分科会として反対する。
・ 上記の趣旨について、(1)①の割増賃金率の適用猶予の見直しに先立ち、通達に記載し、周知徹底を図ることが適当である。
(3) 労働時間の客観的な把握
・ 過重労働による脳・心臓疾患等の発症を防止するため労働安全衛生法に規定されている医師による面接指導制度に関し、管理監督者を含む、すべての労働者を対象として、労働時間の把握について、客観的な方法その他適切な方法によらなければならない旨を省令に規定することが適当である。
・ 併せて、面接指導制度の運用に当たり、管理監督者について、自らが要件に該当すると判断し申し出た場合に面接指導を実施することとしている現行の取扱いを、客観的な方法その他適切な方法によって把握した在社時間等に基づいて要件の該当の有無を判断し、面接指導を行うものとすることを通達に記載することが適当である。
(4) 年次有給休暇の取得促進
・ 年次有給休暇の取得率が低迷しており、いわゆる正社員の約16%が年次有給休暇を1日も取得しておらず、また、年次有給休暇をほとんど取得していない労働者については長時間労働者の比率が高い実態にあることを踏まえ、年5日以上の年次有給休暇の取得が確実に進むような仕組みを導入することが適当である。
・ 具体的には、労働基準法において、年次有給休暇の付与日数が10日以上である労働者を対象に、有給休暇の日数のうち年5日については、使用者が時季指定しなければならないことを規定することが適当である。
・ ただし、労働者が時季指定した場合や計画的付与がなされた場合、あるいはその両方が行われた場合には、それらの日数の合計を年5日から差し引いた日数について使用者に義務づけるものとし、それらの日数の合計が年5日以上に達したときは、使用者は時季指定の義務から解放されるものとすることが適当である。
・ なお、この仕組みを設けることに伴い、労使において計画的付与制度の導入の促進の取組が一層進むよう、行政としてさらなる支援策を講じていくことが適当である。
・ 使用者は時季指定を行うに当たっては、①年休権を有する労働者に対して時季に関する意見を聴くものとすること、②時季に関する労働者の意思を尊重するよう努めなければならないことを省令に規定することが適当である。
・ また、以上のような新たな仕組みを設けることに伴い、使用者が各労働者の年次有給休暇の取得状況を確実に把握することが重要になるため、使用者に年次有給休暇の管理簿の作成を省令において義務づけるとともに、これを3年間確実に保存しなければならないこととすることが適当である。
(5) 労使の自主的取組の促進
<労働時間等設定改善法>
・ 各企業における労働時間、休日及び休暇等の改善に向けた労使の自主的取組を一層促進するため、企業単位での取組の促進に向けた法令の整備を行うことが適当である。
・ 具体的には、労働時間等設定改善法に、企業単位で設置される労働時間等設定改善企業委員会を明確に位置づけ、同委員会における決議に法律上の特例を設けるとともに、同法に基づく労働時間等設定改善指針においても、働き方・休み方の見直しに向けた企業単位での労使の話合いや取組の促進を新たな柱として位置づけることが適当である。
・ このうち、労働時間等設定改善企業委員会における決議に関する特例は、労働基準法第37 条第3項(代替休暇)、第39 条第4項(時間単位年休)及び第6項(計画的付与)について設けることが適当である。また、この特例に係る手続としては、各事業場でこれらの条項について「労働時間等設定改善企業委員会に委ねること」を労使協定で定めた上で、同委員会で委員の5分の4以上の多数による決議を行うことを要することとすることが適当である。そして、特例の効果としては、当該決議を関係事業場における当該条項に係る労使協定に代えることができるものとすることが適当である。
・ 併せて、労働時間等の設定の改善を図るための措置についての調査審議機会をより適切に確保する観点から、一定の衛生委員会等を労働時間等設定改善委員会にみなす規定(労働時間等設定改善法第7条第2項)を廃止することが適当である。
なお、廃止に当たっては、みなし規定の対象となっている衛生委員会等に関して一定の経過措置を設けることが適当である。
<労働時間等設定改善指針>
・ 労働時間等設定改善指針について、既に1(1)③において記述した内容や、以下の内容を盛り込むことも含め、改めて労働政策審議会における調査審議の上で改正することが適当である。
その上で、都道府県労働局に配置する働き方・休み方改善コンサルタント等を活用し、指針に盛り込まれた内容の周知や関連の支援策の活用を促進することが適当である。
① 上記の法改正の趣旨を踏まえ、働き方・休み方の見直しに向けた企業単位での労使の話合いや取組の促進を、指針の新たな柱として追加すること(再掲)
② 現行指針における多岐にわたる取組の例示について、基本的な内容(例:労使の話合いの機会の整備、具体的な改善目標の設定及び取組のフォローアップ等)と応用的な内容(例:③に掲げるもの)、さらに企業・事業場の実情に応じて考慮すべき内容(例:特に健康の保持に努める必要があると認められる労働者が存在する場合の対応等)に整理するなど、労使にとって活用しやすいものとすること
③ 労働者の健康確保の観点から、新たに「終業時刻及び始業時刻」の項目を設け、具体策として、深夜業の回数の制限のほか、「前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息時間を確保すること(勤務間インターバル)は、労働者の健康確保に資するものであることから、労使で導入に向けた具体的な方策を検討すること」や、同様の効果をもたらすと考えられる「一定の時刻以降に働くことを禁止し、やむを得ない残業は始業前の朝の時間帯に効率的に処理する『朝型の働き方』」を追加すること
④ 所定外労働を前提としない勤務時間限定の正社員制度を含む「多様な正社員」、適切な労働環境の下でのテレワーク等について追加すること
 
2 フレックスタイム制の見直し
フレックスタイム制の下で、子育てや介護、自己啓発など様々な生活上のニーズと仕事との調和を図りつつ、メリハリのある働き方を一層可能にするため、その導入及び活用の促進に向けた労使の取組に対する支援策を講じるとともに、より利用しやすい制度となるよう、以下の見直しを行うことが適当である。
(1) 清算期間の上限の延長
・ フレックスタイム制により、一層柔軟でメリハリをつけた働き方が可能となるよう、清算期間の上限を、現行の1か月から3か月に延長することが適当である。
・ 清算期間が1か月を超え3か月以内の場合、対象労働者の過重労働防止等の観点から、清算期間内の1か月ごとに1週平均50 時間(完全週休2日制の場合で1日あたり2時間相当の時間外労働の水準)を超えた労働時間については、当該月における割増賃金の支払い対象とすることが適当である。
・ 制度の適正な実施を担保する観点から、清算期間が1か月を超え3か月以内の場合に限り、フレックスタイム制に係る労使協定の届出を要することとすることが適当である。
・ 清算期間が1か月を超え3か月以内のフレックスタイム制においては、労働者が自らの各月の時間外労働時間数を把握しにくくなることが懸念されるため、使用者は、労働者の各月の労働時間数の実績を通知等することが望ましい旨を通達に記載することが適当である。
・ 併せて、今般の清算期間の上限の延長は、仕事と生活の調和を一層図りやすくするための改正であるという趣旨を通達に明記し、周知徹底を図ることが適当である。
・ 同時に、清算期間が1か月を超え3か月以内の場合、上記の1週平均50 時間を超える労働時間という考え方を前提に月60 時間を超えた労働時間に対する割増賃金率の適用があることはもとより、3か月以内の清算期間を通じた清算を行う場合においても月60 時間相当の時間を超えた労働時間についての対応が必要になることや、月当たり一定の労働時間を超える等の要件を満たす場合に医師による面接指導等の実施が必要となることは同様であることも踏まえつつ、長時間労働の抑制に努めることが求められる旨、通達に明記し、周知徹底を図ることが適当である。
(2) 完全週休2日制の下での法定労働時間の計算方法
・ 完全週休2日制の下では、曜日のめぐり次第で、1日8時間相当の労働でも法定労働時間の総枠を超え得るという課題を解消するため、完全週休2日制の事業場において、労使協定により、所定労働日数に8時間を乗じた時間数を法定労働時間の総枠にできるようにすることが適当である。
(3) フレックスタイム制の制度趣旨に即した運用の徹底等
・ 通達において、フレックスタイム制が、始業及び終業の時刻を労働者の決定に委ね、仕事と生活の調和を図りながら効率的に働くことを可能にするものであるという制度趣旨を改めて示し、使用者が各日の始業・終業時刻を画一的に特定するような運用は認められないことを徹底することが適当である。
なお、フレックスタイム制における「決められた労働時間より早く仕事を終えた場合も、年次有給休暇を活用し、報酬を減らすことなく働くことができる仕組み」については、年次有給休暇の趣旨に照らして慎重に考えるべき等の意見が労使双方から示されたことを踏まえ、引き続き慎重に検討することとする。
 
3 裁量労働制の見直し
裁量労働制について、企業における組織のフラット化や、事業活動の中枢にあるホワイトカラー労働者の業務の複合化等に対応するとともに、対象労働者の健康確保を図り、仕事の進め方や時間配分に関し、労働者が主体性をもって働けるようにするという制度の趣旨に即した活用が進むよう、以下の見直しを行うことが適当である。
なお、労働者代表委員から、企画業務型裁量労働制の対象業務に新たな類型を追加することについて、みなし労働時間制のもとに長時間労働に対する抑止力が作用せず、その結果、長時間労働となるおそれが高まる労働者の範囲が拡大することとなることから認められないとの意見があった。
(1) 企画業務型裁量労働制の新たな枠組
・ 企画業務型裁量労働制の対象業務要件のうち、現行では「事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務」とされている部分について、近年のホワイトカラーの働き方の変化を踏まえ、以下の新たな類型を追加することが適当である。
① 法人顧客の事業の運営に関する事項についての企画立案調査分析と一体的に行う商品やサービス内容に係る課題解決型提案営業の業務(具体的には、例えば「取引先企業のニーズを聴取し、社内で新商品開発の企画立案を行い、当該ニーズに応じた課題解決型商品を開発の上、販売する業務」等を想定)
② 事業の運営に関する事項の実施の管理と、その実施状況の検証結果に基づく事業の運営に関する事項の企画立案調査分析を一体的に行う業務(具体的には、例えば「全社レベルの品質管理の取組計画を企画立案するとともに、当該計画に基づく調達や監査の改善を行い、各工場に展開するとともに、その過程で示された意見等をみて、さらなる改善の取組計画を企画立案する業務」等を想定)
・ なお、新たに追加する類型の対象業務範囲の詳細(肯定的要素及び否定的要素)に関しては、法定指針で具体的に示すことが適当である。否定的要素として掲げる内容は、例えば、「店頭販売やルートセールス等、単純な営業の業務である場合や、そうした業務と組み合わせる場合は、対象業務とはなり得ない」、「企画立案調査分析業務と組み合わせる業務が、個別の製造業務や備品等の物品購入業務、庶務経理業務等である場合は、対象業務とはなり得ない」といったものが考えられる。
・ 企画業務型裁量労働制の対象労働者の健康確保を図るため、同制度の健康・福祉確保措置について、一定の措置を講ずる旨を決議することが制度上の要件とされている。この健康・福祉確保措置について、現行の法定指針に例示されている事項(代償休日又は特別な休暇の付与、健康診断の実施、連続した年次有給休暇の取得促進、心とからだの健康窓口の設置、配置転換、産業医の助言指導に基づく保健指導)を参考にしつつ、長時間労働を行った場合の面接指導、深夜業の回数の制限、勤務間インターバル、一定期間における労働時間の上限の設定等を追加することも含め検討の上、省令で規定することが適当である。
(2) 手続の簡素化
・ 企画業務型裁量労働制が制度として定着してきたことを踏まえ、①労使委員会決議の本社一括届出を認めるとともに、②定期報告は6か月後に行い、その後は健康・福祉確保措置の実施状況に関する書類の保存を義務づけることが適当である。
(3) 裁量労働制の本旨の徹底
・ 裁量労働制を導入しながら、出勤時間に基づく厳しい勤怠管理を行う等の実態があることに対応するため、始業・終業の時刻その他の時間配分の決定を労働者に委ねる制度であることを法定し、明確化することが適当である。
・ 併せて、労働基準法第38 条の4第3項に基づく指針において、「当該事業場における所定労働時間をみなし時間として決議する一方、所定労働時間相当働いたとしても明らかに処理できない分量の業務を与えながら相応の処遇の担保策を講じないといったことは、制度の趣旨を没却するものであり、不適当であることに留意することが必要である」旨を規定することが適当である。
 
4 特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の創設
時間ではなく成果で評価される働き方を希望する労働者のニーズに応え、その意欲や能力を十分に発揮できるようにするため、一定の年収要件を満たし、職務の範囲が明確で高度な職業能力を有する労働者を対象として、長時間労働を防止するための措置を講じつつ、時間外・休日労働協定の締結や時間外・休日・深夜の割増賃金の支払義務等の適用を除外した労働時間制度の新たな選択肢として、特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)を設けることが適当である。
なお、使用者代表委員から、高度プロフェッショナル制度は、経済活力の源泉であるイノベーションとグローバリゼーションを担う高い専門能力を有する労働者に対し、健康・福祉確保措置を講じつつ、メリハリのある効率的な働き方を実現するなど、多様な働き方の選択肢を用意するものである。労働者の一層の能力発揮と生産性の向上を通じた企業の競争力とわが国経済の持続的発展に繋がることが期待でき、幅広い労働者が対象となることが望ましいとの意見があった。
また、労働者代表委員から、高度プロフェッショナル制度について、既に柔軟な働き方を可能とする他の制度が存在し、現行制度のもとでも成果と報酬を連動させることは十分可能であり現に実施されていること及び長時間労働となるおそれがあること等から新たな制度の創設は認められないとの意見があった。
(1) 対象業務
・ 「高度の専門的知識、技術又は経験を要する」とともに「業務に従事した時間と成果との関連性が強くない」といった対象業務とするに適切な性質を法定した上で、具体的には省令で規定することが適当である。
・ 具体的には、金融商品の開発業務、金融商品のディーリング業務、アナリストの業務(企業・市場等の高度な分析業務)、コンサルタントの業務(事業・業務の企画運営に関する高度な考案又は助言の業務)、研究開発業務等を念頭に、法案成立後、改めて審議会で検討の上、省令で適切に規定することが適当である。
(2) 対象労働者
・ 使用者との間の書面による合意に基づき職務の範囲が明確に定められ、その職務の範囲内で労働する労働者であることが適当である。
・ また、対象労働者の年収について、「1年間に支払われることが確実に見込まれる賃金の額が、平均給与額の3倍を相当程度上回る」といったことを法定した上で、具体的な年収額については、労働基準法第14 条に基づく告示の内容(1075万円)を参考に、法案成立後、改めて審議会で検討の上、省令で規定することが適当である。
・ 労使委員会において対象労働者を決議するに当たっては、本制度の対象となることによって賃金が減らないよう、法定指針に明記することが適当である。
(3) 健康管理時間、健康管理時間に基づく健康・福祉確保措置(選択的措置)、面接指導の強化
<健康管理時間>
・ 本制度の適用労働者については、割増賃金支払の基礎としての労働時間を把握する必要はないが、その健康確保の観点から、使用者は、健康管理時間(「事業場内に所在していた時間」と「事業場外で業務に従事した場合における労働時間」との合計)を把握した上で、これに基づく健康・福祉確保措置を講じることとすることが適当である。
・ なお、健康管理時間の把握方法については、労働基準法に基づく省令や指針において、客観的な方法(タイムカードやパソコンの起動時間等)によることを原則とし、事業場外で労働する場合に限って自己申告を認める旨を規定することが適当である。
<健康管理時間に基づく健康・福祉確保措置(選択的措置)>
・ 健康管理時間に基づく健康・福祉確保措置について、具体的には、制度の導入に際しての要件として、以下のいずれかの措置を労使委員会における5分の4以上の多数の決議で定めるところにより講じることとし、決議した措置を講じていなかったときは制度の適用要件を満たさないものとすることが適当である。
① 労働者に24 時間について継続した一定の時間以上の休息時間を与えるものとし、かつ、1か月について深夜業は一定の回数以内とすること。
② 健康管理時間が1か月又は3か月について一定の時間を超えないこととすること。
③ 4週間を通じ4日以上かつ1年間を通じ104 日以上の休日を与えることとすること。
上記①、②の「一定の時間」及び「一定の回数」については、法案成立後、改めて審議会で検討の上、省令で規定することが適当である。また、その審議に当たっては、各企業における現在の健康確保措置の取組実態も十分踏まえつつ、対象労働者の健康の確保に十分留意することが適当である。
<面接指導の強化>
・ 本制度の適用労働者であって、その健康管理時間が当該労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める時間を超えるものに対し、医師による面接指導の実施を法律上義務づけることが適当である。
・ 具体的には、労働安全衛生法に上記の趣旨を規定した上で、労働安全衛生規則において、健康管理時間について、1週間当たり40 時間を超えた場合のその超えた時間が1月当たり100 時間を超えた労働者について、一律に面接指導の対象とする旨を規定することが適当である。
・ なお、本制度の適用労働者に対する面接指導の確実な履行を確保する観点から、上記の義務違反に対しては罰則を付すことが適当である。
・ また、本制度の適用労働者に対し、面接指導の結果を踏まえた健康を保持するために必要な事後措置の実施を法律上義務づけることや、上記の時間が1月当たり100時間以下の労働者であっても、その申出があれば面接指導を実施するよう努めなければならないものとすることが適当である。
(4) 対象労働者の同意
・ 制度の導入に際しての要件として、法律上、対象労働者の範囲に属する労働者ごとに、職務記述書等に署名等する形で職務の内容及び制度適用についての同意を得なければならないこととし、これにより、希望しない労働者に制度が適用されないようにすることが適当である。
(5) 労使委員会決議
・ 制度の導入に際しての要件として、労使委員会を設置し、以下の事項を5分の4以上の多数により決議し、行政官庁に届け出なければならないこととすることが適当である(一部再掲)。
① 対象業務の範囲
② 対象労働者の範囲
③ 対象業務に従事する対象労働者の健康管理時間を使用者が把握すること及びその把握方法
④ 健康管理時間に基づく健康・福祉確保措置の実施
⑤ 苦情処理措置の実施
⑥ 対象労働者の不同意に対する不利益取扱の禁止
(6) 法的効果
・ 以上の要件の下で、対象業務に就く対象労働者については、労働基準法第四章で定める労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定を適用除外とすることが適当である。
(7) 制度の履行確保
・ 対象労働者の適切な労働条件の確保を図るため、厚生労働大臣が指針を定める旨を法定することが適当である。
・ 届出を行った使用者には、健康・福祉確保措置の実施状況を6か月後に報告すること、その後は健康・福祉確保措置の実施状況に関する書類を保存することを義務づけることが適当である。
(8) 年少者への適用
・ 本制度は年少者には適用しないこととすることが適当である。
 
5 その他
(1) 特例措置対象事業場
・ 週44 時間特例対象事業場の所定労働時間の現状をみると、79.7%の事業場で所定労働時間が週40 時間以下となっているが、一部の業種では過半の事業場で所定労働時間が週44時間前後という状況にある。
・ こうした状況や労働基準法第40 条の趣旨を踏まえ、必要に応じさらに詳細な実態の調査を行った上で、特例措置対象事業場の範囲の縮小を図る方向で、法案成立後、改めて審議会で検討の上、所要の省令改正を行うことが適当である。
(2) 過半数代表者
・ 過半数代表者の選出をめぐる課題を踏まえ、「使用者の意向による選出」は手続違反に当たるなど通達の内容を労働基準法施行規則に規定する方向で検討を続けることが適当である。また、監督指導等により通達の内容に沿った運用を徹底することが適当である。
・ 使用者は、過半数代表者がその業務を円滑に遂行できるよう必要な配慮を行わなければならない旨を、規則に規定する方向で検討を継続することが適当である。
・ 以上については、法案成立後、改めて審議会で検討の上、所要の省令改正を行うことが適当である。
(3) 管理監督者
・ 管理監督者の範囲について、引き続き既往の通達等の趣旨の徹底を図るとともに、その健康確保の観点から1(3)の労働時間の客観的把握を徹底することが適当である。
(4) 電子的手法による労働条件明示
・ 労働条件明示の方法は引き続き書面明示によることを原則とするが、労働者が希望する場合には、①ファクシミリの送信、②電子メールの送信(当該労働者が記録を出力することにより書面を作成できるものに限る。)により明示することを認める方向で検討を継続することが適当である。
・ 併せて、労働条件明示が事実と異なるものであってはならない旨を省令に規定する方向で検討を継続することが適当である。
・ 以上について、法案成立後、改めて審議会で検討の上、所要の省令改正を行うことが適当である。
 
6 制度改正以外の事項
(1) 労働基準監督機関の体制整備
・ サービス経済化の進展や企業間競争の激化、就業形態の多様化といった経済社会の変化の中で、我が国労働者の最低労働条件の履行確保や労働条件の向上を図るために労働基準監督機関が所期の機能を発揮できるよう、不断の業務の見直しを行うとともに、その体制整備に努めることが適当である。
(2) 労働基準関係法令の周知の取組等
・ 労働基準関係法令が十分周知されていないことに伴う法令違反が依然として多数みられることから、一層の周知徹底に取り組むことが適当である。また、使用者は、時間外・休日労働協定等を労働者に周知させなければならないとしている法の規定を踏まえ対応するよう、徹底を図ることが適当である。
以 上

|

« 第9回「中高年者縦断調査(中高年者の生活に関する継続調査)」の結果【厚生労働省】 | トップページ | 全国労働局長会議開催される【厚生労働省】現場のトップとしてさらなるリーダーシップを発揮していただきたい! »

労働行政ニュース」カテゴリの記事

労働基準法」カテゴリの記事

働き方」カテゴリの記事

速報」カテゴリの記事

労働時間」カテゴリの記事

労働政策審議会」カテゴリの記事

新しい法律」カテゴリの記事

ワーク・ライフ・バランス」カテゴリの記事

雇用問題」カテゴリの記事

国会」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 労働政策審議会「今後の労働時間法制等の在り方について」塩崎厚生労働大臣に建議~労働基準法改正法案を今通常国会に提出へ~:

« 第9回「中高年者縦断調査(中高年者の生活に関する継続調査)」の結果【厚生労働省】 | トップページ | 全国労働局長会議開催される【厚生労働省】現場のトップとしてさらなるリーダーシップを発揮していただきたい! »