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2015年1月 7日 (水)

塩崎恭久厚生労働大臣 平成27年 年頭所感

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年頭所感

 

 

平成二十七年の新春を迎え、心よりお慶び申し上げます。本年も何とぞよろしくお願い申し上げます。

厚生労働大臣に就任してから約四ヶ月が経過しました。その間、国民の皆様の安全・安心の確保に万全を期すべく努力して参りましたが、引き続き、私自身が先頭に立って、様々な課題に全力で立ち向かう決意を新たにしています。

 

第一に、東日本大震災からの復興を加速させなければなりません。

東日本大震災の発生からもうすぐ四年が経とうとする今もなお、多くの方々が避難生活を送っておられます。昨年、私も被災地を訪問し、被災された方々からお話を伺いました。現場第一主義に立ち、将来を見据えて復興に取り組む思いを新たにいたしました。私自身も復興大臣であるとの強い意識で、対策を進めていきます。

具体的には、避難生活の長期化に対応するとともに、地域の復興を進めるため、被災者の健康確保や心のケア、医療・介護の体制整備、雇用対策等に取り組んでいきます。

また、東京電力福島第一原子力発電所事故への対応も重要な課題であり、発電所での作業や除染作業などに従事する方々の放射線障害防止や食品中の放射性物質の安全対策に努めていきます。

 

第二に、昨年、消費税率の十パーセントへの引上げについて、安倍総理より、予定されていた今年十月からの引上げを十八か月延長する旨の表明がありました。安倍総理のご判断を重く受け止めつつ、今後とも、国民の安心を支える社会保障制度を所管する立場として、世界に誇る我が国の社会保障制度を次の世代にしっかりと引き渡していくため、国民のご理解を得ながら改革を進めていきます。

 医療・介護については、住み慣れた地域で継続的に生活できるよう、質の高く効率的な医療提供体制や地域包括ケアシステムの構築が必要です。このため、昨年六月に成立した医療介護総合確保推進法に基づき、地域医療構想の策定によって医療機能分化や連携を図るとともに、各都道府県に設けた地域医療介護総合確保基金を人材不足対策等への支援に活用していきます。また、在宅医療・介護の連携の推進等によって地域支援事業を充実するなど、地域の実情に応じた医療・介護提供体制の確立に引き続き取り組んでいきます。さらに、平成二十七年度の介護報酬改定に取り組むとともに、認知症の方が安心して暮らせる社会の構築に向けて、関係省庁とも連携しながら認知症施策を加速するための戦略を策定し、施策を推進していきます。

医療保険制度については、国民皆保険を今後とも堅持するとともに、広く国民の納得・信頼・安心を実現できる制度を構築することが重要です。国民健康保険を始めとする医療保険制度の財政基盤の安定化、医療費の適正化、国民の負担に関する公平の確保等を推進し、将来を見据えた改革に向けてしっかりと取り組んでいきます。

子ども・子育て支援の充実についてはきわめて重要な施策であるため、幼年期の学校教育・保育、地域の子ども・子育て支援の総合的な推進を図る子ども・子育て支援新制度を、本年四月から施行します。引き続き、円滑な施行に向けた準備を進めるとともに、「待機児童解消加速化プラン」に基づき、平成二十九年度末までの待機児童の解消を目指して取組を進めます。また、いわゆる「小一の壁」の打破に向け、「放課後子ども総合プラン」に基づき計画的な整備を進め、放課後児童クラブによる受皿の拡大に取り組んでいきます。

年金については、国民の老後の安定した生活を支えるセーフティネットであり、将来にわたって制度を持続可能で安心できるものとすることが重要です。

このため昨年から、社会保障制度改革プログラム法に規定された公的年金制度の検討課題等については、社会保障審議会年金部会において、また、企業年金制度の普及・拡大の方策等については、社会保障審議会企業年金部会において、それぞれ検討を行っています。本年早々に議論を取りまとめ、必要な取組を進めます。年金積立金の運用については、運用の見直しとガバナンスの強化は車の両輪であり、改訂日本再興戦略等を踏まえ専ら被保険者の利益のための取組を進めます。さらに、年金記録問題を踏まえ、年金事業を更に国民に信頼されるものとするよう年金記録の訂正手続の円滑な実施や、国民年金納付率の向上、厚生年金の適用促進等に取り組んでいきます。

 

第三に、持続的な経済成長のためには、女性や高齢者が働きやすく、意欲と能力のある若者が将来に希望が持てる環境を作るとともに、投資の促進や人材力の強化等を通じた労働生産性の向上を図ることが重要です。このため、改訂日本再興戦略に基づき、働き方改革や失業なき労働移動の実現、女性・若者、高齢者等の活躍推進等に取り組んでいきます。

 働き方改革については、昨年九月に、私を本部長とする「長時間労働削減推進本部」を厚生労働省内に設置し、長時間にわたる過重な労働が疑われる事業場に対する重点監督の実施等、省を挙げて長時間労働の削減に取り組んできました。その上で、時間ではなく成果で評価される新たな労働時間制度の創設など労働時間法制の見直しや、年次有給休暇の取得促進策の検討など、働き方改革の実現に取り組んでいきます。また、パートタイム労働者の均等・均衡待遇をより一層確保するための取組を行います 。

 失業なき労働移動の実現については、労働市場全体としてのマッチング機能の強化を図るほか、産業ニーズ等を踏まえた職業訓練の推進、主体的なキャリア形成支援、新たな職業能力評価制度の構築等、職業能力開発施策を積極的に推進していきます。

女性の活躍促進については、急速な少子高齢化の進展や国民ニーズの多様化などの社会経済情勢の変化に応じていくため、「女性の力」が十分に発揮される環境を整備し、活躍の場を充実させることが重要です。このため、各企業における女性の活躍推進に係る取組の着実な推進を図るための仕組みなどを盛り込んだ法律案の再提出・成立に向けて全力で取り組んでいくとともに、仕事と家庭を両立できる職場環境の整備・充実に向けた取組を進めていきます。

 若者等の活躍促進については、若者の円滑な就職支援、企業における若者の活躍促進に向けた取組の支援等、若者の雇用対策の充実に向けた法的整備を含む検討、「正社員実現加速プロジェクト」により非正規雇用労働者の正社員化を推進します。

 また、外国人技能実習制度については、国際貢献を目的とする趣旨を徹底するため、関係省庁と連携して、新たな法律に基づく制度管理運用機関の設置等による管理監督体制の抜本的強化や対象職種の拡大等の拡充を図ってまいります。

このほか、医療・福祉、建設業等の人材不足分野における「魅力ある職場づくり」等を通じた人材確保対策を進めます。

労働者派遣制度については、昨年の臨時国会で改正法案が廃案となりましたが、派遣労働者の一層の雇用の安定と保護等を図るため、制度の見直しの必要性についてさらなる理解を求めていきます。

 

 第四に、地方創生については、昨年末にまち・ひと・しごと創生本部でとりまとめられた長期ビジョン・総合戦略に基づき、今後、政府において本格的な取組みが始まります。厚生労働省においても、昨年十月に、私を本部長とする、「まち・ひと・しごと創生政策検討推進本部」を設置し、この問題について省を挙げて対応することとしておりますが、引き続き、国民が安心して働き、希望通り結婚や出産・子育てができ、将来に夢や希望を持てる、魅力あふれる地方の創生に向け、各府省と連携し、総合的な対策に取り組んでいきます。

 

第五に、国民の皆様の安全と安心の確保に向けた取組についても、迅速に進めていかなければならないことが多々あります。

国民の生命や健康を守るため、感染症対策については、昨年公布された改正感染症法の円滑な施行に取り組むとともに、エボラ出血熱や新たなインフルエンザなどへの当面の対応として、行政機関や医療機関における対応を強化すること、国民の皆様への正確な情報を提供し協力をいただくなど、警戒を怠ることなく万全を期していきます。

難病や小児慢性特定疾病については、本年一月から、公平かつ安定的な医療費助成の制度の確立等を柱とした難病法等が施行されました。本年夏には国の基本方針を定めることとしており、今後とも、難病等の克服を目指し、相談支援体制の確保など総合的な対策を進めていきます。また、予防接種基本計画に基づく予防接種施策の推進、がん検診の受診率向上やがん登録推進法の円滑な施行に向けた取組をはじめとするがん対策、肝炎、生活習慣病等様々な疾病を抱える方々への支援策や予防策、原爆被爆者の方々への支援を引き続き進めていきます。

心身に重大な悪影響を及ぼし、幼い子供などが犠牲者となる悲惨な事故を引き起こす危険ドラッグについては、厚生労働省は、指定薬物の迅速指定、検査命令・販売停止命令の発動や、販売サイトの削除要請などを強力に推進してきました。その結果、販売店舗の八割を廃業又は閉鎖に、国内販売サイトの約四分の三を閉鎖又は販売停止に追い込みました。昨年十一月に成立した改正医薬品医療機器等法に基づき、危険ドラッグの撲滅に向けて取締り等を徹底していきます。

医薬品・医療機器等については、昨年施行された医薬品医療機器等法に基づく取組を進めるとともに、安全対策や審査の迅速化、薬事戦略相談の拡充等により、世界に先駆けた革新的医薬品・医療機器の創出や再生医療の実用化を図っていきます。

児童虐待については、子どもの命が奪われる痛ましい事件が後を絶たないなど、依然として深刻な状況が続いています。こうした現状を踏まえ、政府としては、「児童虐待防止対策に関する副大臣等会議」を開催し、関係府省庁が連携して検討を進めております。厚生労働省でも、昨年九月に「児童虐待防止対策のあり方に関する専門委員会」を設置し、妊娠期からの切れ目ない支援のあり方など、課題について実効ある児童虐待防止対策の構築に向けて検討し、十一月にはこれまでの議論のとりまとめを行ったところです。専門委員会では、引き続き、自立に向けた支援等について議論することとしています。

また、児童養護施設等には、虐待などにより保護者の適切な養育を受けられないことが原因で入所する子どもが増加しています。そうした子ども達に対して家庭的な養育環境の下できめ細かなケアを提供していくため、里親やファミリーホーム、児童養護施設の小規模化・地域分散化等の社会的養護の充実をさらに取り組んでいきます。

社会福祉法人については、福祉ニーズの多様化、複雑化に対応していく中で、その果たす役割がますます重要となっており、高い公益性や非営利性に見合ったガバナンスの強化、透明性の確保、財務規律の確立等、制度の見直しに取り組みます。

福祉人材確保対策については、喫緊の課題である介護人材の確保に向けて、多様な人材の参入促進、資質の向上及び労働環境の改善について、あらゆる施策を総動員し、総合的な確保方策を講じていきます。

生活保護・生活困窮者施策については、昨年施行された改正生活保護法の規定に基づき、不正・不適正受給対策の強化や医療扶助の適正化を図るほか、受給者の自立に向けた就労支援の強化を進めるとともに、生活困窮者に対して包括的な相談支援や就労支援等を行う生活困窮者自立支援制度の本年四月からの円滑な施行に取り組みます。

あわせて、子どもの将来がその生まれ育った環境によって左右されることのないよう、また、貧困が世代を超えて連鎖することがないよう、子どもの貧困対策を総合的に進めていくことが重要です。

援護行政については、戦後七十周年を迎える節目の年に当たり、戦没者の遺骨収集帰還事業の一層の推進を図るとともに、慰霊事業、戦傷病者、戦没者遺族に対する支援に着実に取り組んでいきます。また、中国残留邦人等に対する支援策をきめ細かく実施します。

障害のある方への支援については、障害福祉サービス等の報酬改定に取り組むとともに、障害の有無に関わらず活躍できる環境整備を推進し、障害者総合支援法施行後三年の見直しに向けた検討を進めていきます。また、改正障害者雇用促進法の円滑な施行に取り組むなど、障害者の就労支援の充実を進めて行きます。

その他にも、生活衛生関係営業の振興や老朽化した水道施設の計画的更新や耐震化、運営基盤強化のための広域化等を推進していきます。

 

以上、厚生労働行政には多くの課題が山積しています。国民の皆様には、一層の御理解と御協力をお願い申し上げ、年頭にあたっての私の挨拶と致します。

 

 

平成二十七年元旦

厚生労働大臣 塩崎 恭久

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