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2015年1月 8日 (木)

村木厚子厚生労働事務次官 平成27年 年頭所感

 

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年頭所感

 

 

新年を迎え、謹んで年頭の御祝辞を申し上げます。

年の初めに当たり、改めて皆様の日頃からの厚生労働行政への御理解と御協力に感謝申し上げますとともに、今後の厚生労働行政につきまして所信の一端を述べさせていただきます。

 

社会保障制度改革については、社会保障制度改革プログラム法に基づき、関連法案の成立など、個別分野の改革を着実に進めてきました。このような中、昨年十一月に、安倍総理より、消費税率の十パーセントへの引上げを予定より十八か月延長するとの表明がありました。安倍総理のご判断を踏まえ、国民の暮らしの安心の大きな礎である社会保障制度について、引き続き、その充実を図りながら、できる限り国民の期待に応えられるよう努めてまいります。

医療・介護については、住み慣れた地域で継続的に生活できるよう、質の高い効率的な医療提供体制や地域包括ケアシステムの構築が必要です。このため、昨年六月に成立した医療介護総合確保推進法に基づき、地域医療構想の策定によって医療機能分化や連携を図るとともに、各都道府県に設けた地域医療介護総合確保基金を人材不足対策等への支援に活用していきます。また、地域支援事業として在宅医療・介護の連携の推進等の取組を充実するなど、地域の実情に応じた医療・介護提供体制の確立に引き続き取り組んでいきます。さらに、平成二十七年度の介護報酬改定に取り組むとともに、認知症の方が安心して暮らせる社会の構築に向けて、関係省庁とも連携しながら認知症施策を加速するための戦略を策定し、施策を推進していきます。

医療保険制度については、国民皆保険を今後とも堅持するとともに、広く国民の納得・信頼・安心を実現するという観点から、国民健康保険を始めとする医療保険制度の財政基盤の安定化、医療費の適正化、国民の負担に関する公平の確保等を推進し、将来を見据えた改革にしっかりと取り組んでいきます。

年金については、国民の老後の安定した生活を支えるセーフティネットであり、将来にわたって制度を持続可能で安心できるものとすることが重要です。

このため昨年から、社会保障制度改革プログラム法に規定された公的年金制度の検討課題等については、社会保障審議会年金部会において、また、企業年金制度の普及・拡大の方策等については、社会保障審議会企業年金部会において、それぞれ検討を行っています。本年早々に議論を取りまとめ、必要な取組を進めます。年金積立金の運用については、運用の見直しとガバナンスの強化は車の両輪であり、改訂日本再興戦略等を踏まえ、専ら被保険者の利益のための取組を進めます。さらに、昨年公布された年金事業運営改善法等に基づき、年金記録の訂正手続の円滑な実施や国民年金保険料の納付率の向上、厚生年金の適用促進等に取り組んでいきます。

子ども・子育て支援については、幼年期の学校教育・保育、地域の子ども・子育て支援の総合的な推進を図るため、本年四月から、子ども・子育て支援新制度を施行します。現在、施行に向けた準備を内閣府・文部科学省とともに進めており、着実な制度の施行を目指します。

保育所待機児童は四年連続で減少していますが、依然として二万人を超えている状況です。一昨年四月に策定した「待機児童解消加速化プラン」に基づき、平成二十五年度及び二十六年度で約二十万人分の保育の受皿を確保できる見込みであり、平成二十九年度末までに合わせて約四十万人分の保育の受皿を確保するため、引き続き待機児童解消に意欲的に取り組む地方自治体を支援していきます。また、保育の利用者が小学校就学後に放課後児童クラブを利用できるよう、昨年七月に策定した「放課後子ども総合プラン」に基づき、平成三十一年度末までに約三十万人分の受皿の整備に取り組んでいきます。

 

最近の日本経済は、個人消費などに弱さがみられますが、緩やかな回復基調が続いており、雇用失業情勢についても、一部に厳しさがみられるものの、着実に改善が進んでいると認識しています。このような経済・雇用情勢の中、持続的な経済成長のためには、女性や高齢者が働きやすく、意欲と能力のある若者が将来に希望が持てる環境を作るとともに、投資の促進や人材力の強化等を通じた労働生産性の向上を図ることが重要です。

このため、改訂日本再興戦略に基づき、働き方改革や失業なき労働移動の実現、女性や若者等の活躍推進等に取り組んでいきます。

働き方改革については、昨年九月に、大臣を本部長とする「長時間労働削減推進本部」を厚生労働省内に設置しました。長時間労働削減等に向けた取組として、昨年十一月に相当の時間外労働が認められる事業場に対する重点監督の実施等からなる「過重労働解消キャンペーン」を実施するなど、省を挙げて長時間労働の削減に取り組んできました。また、同月に施行された過労死等防止対策推進法に基づき、過労死等の防止のための対策を効果的に推進します。その上で、時間ではなく成果で評価される新たな労働時間制度の創設などの労働時間法制の見直しや、年次有給休暇の取得促進策の検討など、働き方改革の実現に取り組んでいきます。

失業なき労働移動の実現については、労働市場全体としてのマッチング機能の強化を図るほか、産業ニーズ等を踏まえた職業訓練の推進、主体的なキャリア形成支援、新たな職業能力評価制度の構築等、職業能力開発施策の強化に向けて検討を進めます。

女性の活躍については、急速な少子高齢化の進展などの社会経済情勢の変化に応じていくため、「女性の力」が十分に発揮されるよう、女性の働きやすい環境を整備し、活躍の場を充実させることが喫緊の課題となっています。各企業においては、女性の活躍推進に関する状況を把握・分析していただき、その課題を解決するための取組を実施していただくことが重要であり、こうした取組の着実な推進を図るための仕組みを盛り込んだ法律案(昨年の臨時国会で廃案)の再提出・成立に向けて取り組んでいきます。また、仕事と家庭を両立しやすい職場環境の整備に向けて、育児休業中の代替要員の確保を行う事業主に対する支援の拡充や、育児休業の取得促進の取組を進めていきます。

若者等の活躍促進については、若者は我が国の将来を担う貴重な人材であり、その能力を有効に発揮できるよう、若者の円滑な就職支援、企業における若者の活躍促進に向けた取組の支援等、若者の雇用対策の充実に向けた法的整備を含む検討を進めます。また、キャリアアップ助成金の拡充等を含む「正社員実現加速プロジェクト」により非正規雇用労働者の正社員化を推進します。

このほか、医療・福祉、建設業等の人材不足分野における「魅力ある職場づくり」等を通じた人材確保対策を進めます。

労働者派遣制度については、昨年の臨時国会で改正法案が廃案となりましたが、派遣労働者の一層の雇用の安定と保護等を図るため、制度の見直しの必要性についてさらなる理解を求めていきます。

外国人技能実習制度については、国際貢献を目的とする趣旨を徹底するため、関係省庁と連携して、新たな法律に基づく制度管理運用機関の設置等による管理監督体制の抜本的強化や対象職種の拡大等を図っていきます。

 

地方創生については、昨年末に、まち・ひと・しごと創生本部において長期ビジョンと総合戦略がとりまとめられました。長期ビジョンにおいては、人口問題に対する基本認識や今後目指すべき将来の方向性が示されました。また、総合戦略においては、五か年計画で取り組むべき施策が示されており、厚生労働省においても、来年度は、妊娠・出産包括支援事業の展開、地域しごと創生プランの推進、人口減少に応じた地域福祉のまちづくりなどに取り組んでいきたいと考えています。今後、これらの施策を推進するとともに、人口減少を克服し、将来にわたって活力ある社会を実現するため、厚生労働省としても全力を尽くしていきます。

 

感染症対策については、その底上げを図るため、昨年公布された「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律の一部を改正する法律」の円滑な施行に向けて取り組んでいきます。また、エボラ出血熱、鳥インフルエンザ(H7N9)、中東呼吸器症候群(MERS)等の当面の感染症への対応については、行政や医療機関における対応力を強化するとともに、感染症に関する正しい理解を国民に普及するなど、対策に万全を期していきます。

様々な疾病を抱える方々への支援については、本年一月に施行された難病法等に基づき難病及び小児慢性特定疾病医療費助成の拡充、相談支援、就労支援の充実等の総合的な対策を進めていきます。また、がん検診の受診率向上やがん患者への就労支援等総合的ながん対策や、医療費助成をはじめとする肝炎総合対策を推進するとともに、生活習慣病の予防に取り組み、「健康日本21(第二次)」に基づく健康寿命の延伸、健康格差の縮小に向け、社会全体として、国民の健康づくりを支援していきます。

予防接種施策については、予防接種基本計画で示された中長期的なビジョンに基づいて、厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会において定期接種の拡充等の検討を進めるなど、総合的かつ計画的な推進を図っていきます。

B型肝炎訴訟については、特定B型肝炎ウイルス感染症者給付金等の支援に関する特別措置法に基づき、和解手続が適正かつ迅速に進むよう、引き続き取り組んでいきます。

移植医療については、昨年一月に全面施行された「移植に用いる造血幹細胞の適切な提供の推進に関する法律」に基づく施策の推進に取り組んでいきます。

原爆被爆者対策につきましては、原爆被爆者の方々への支援を引き続き進めていきます。

生活衛生関係営業について総合的な対策を講じ、営業者の振興と衛生の向上を図るとともに、水道については、老朽化した施設の計画的更新や耐震化、運営基盤強化のための広域化等を推進していきます。

医薬品・医療機器等については、昨年施行された医薬品医療機器等法に基づく取組を進めるとともに、安全対策や審査の迅速化、薬事戦略相談の拡充等により、世界に先駆けた革新的医薬品・医療機器の創出や再生医療の実用化を図っていきます。

一般用医薬品のインターネット販売については、消費者の利便性と安全性を確保した適切な販売が行われるよう、自治体等と連携して、ルールの遵守の徹底に取り組んでいきます。

また、セルフメディケーションの推進のために、薬剤師の資質の向上を図るとともに、地域の健康情報の拠点としてその専門性を発揮しながら活躍する薬局、薬剤師の取組を応援していきます。

心身に重大な悪影響を及ぼし、悲惨な事故を引き起こす危険ドラッグについては、指定薬物の迅速指定、検査命令・販売停止命令の発動や、販売サイトの削除要請などを強力に推進してきました。その結果、販売店舗の八割を廃業又は閉鎖に、国内販売サイトの約四分の三を閉鎖又は販売停止に追い込みました。さらに、昨年十一月に成立した改正医薬品医療機器等法に基づき、危険ドラッグの撲滅に向けて取締り等を徹底していきます。

児童虐待に至る背景として、妊娠期から一人で悩みを抱えていたり、地域における親の孤立化などがあり、このために、地域の中で子どもや子育て家庭を支えていくことができる地域づくりをしていくことが重要であると考えます。子ども・子育て支援新制度でも、地域の実情に応じた子ども・子育て支援の充実を図っていく事業が実施されることとなります。子育てに関する悩みを解消でき、安心して子育てができるような地域を創り、虐待のない社会を築いていくことが、私たちに課せられた使命だと考えております。

また、児童養護施設等には、虐待などにより保護者の適切な養育を受けられないことが原因で入所する子どもが増加しており、そうした子ども達に対して、家庭的な養育環境の下できめ細かなケアを提供していくため、里親や児童養護施設の小規模化等の社会的養護の充実にさらに取り組んでいきます。

社会福祉法人については、福祉ニーズの多様化、複雑化に対応していく中で、その役割はますます重要となっており、高い公益性や非営利性に見合ったガバナンス強化、透明性確保、財務規律の確立等、制度の見直しに取り組みます。

福祉人材確保対策については、喫緊の課題である介護人材の確保に向けて、多様な人材の参入促進、資質の向上及び労働環境の改善について、あらゆる施策を総動員し、総合的な確保方策を講じていきます。

生活保護・生活困窮者施策については、昨年施行された改正生活保護法の規定に基づき、不正・不適正受給対策の強化や医療扶助の適正化を図るほか、受給者の自立に向けた就労支援の強化を進めるとともに、生活困窮者に対して包括的な相談支援や就労支援等を行う生活困窮者自立支援制度の本年四月からの円滑な施行に取り組みます。

援護行政については、戦後七十周年を迎える節目の年に当たり、戦没者の遺骨収集帰還事業の一層の推進を図るとともに、慰霊事業、戦傷病者、戦没者遺族に対する支援に着実に取り組んでいきます。また、中国残留邦人等に対する支援策をきめ細かく実施します。

障害者施策については、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向けて、施策の充実を図ります。具体的には、障害福祉サービス等の報酬改定に取り組むとともに、障害者総合支援法の施行後三年の見直しに向けた検討を進めていきます。障害のある方を地域全体で支える取組や障害の有無に関わらず活躍できる環境整備を推進するとともに、改正障害者雇用促進法の円滑な施行に取り組むなど、就労支援の充実を進めていきます。

 

東日本大震災への対応については、発災からもうすぐ四年が経とうとする今もなお、多くの方々が避難生活を送っている現状を踏まえて、引き続き復興庁など関係省庁と連携して、こうした方々への支援や、将来を見据えた復興に向けた取組を行うことが大きな課題です。

具体的には、避難生活の長期化に対応するとともに、地域の復興を進めるため、被災者の健康確保や心のケア、医療・介護の体制整備、雇用対策等に取り組んでいきます。

また、東京電力福島第一原子力発電所事故への対応も重要な課題であり、発電所での作業や除染作業などに従事する方々の放射線障害防止や食品中の放射性物質の安全対策に努めていきます。

 

以上のように、厚生労働分野には課題が山積しています。いずれの分野についても、これからの行政施策は、地方公共団体と国、また、民と官がどれだけ力を合わせることができるかで成否が決まるといっても過言ではないと思います。新しい年を迎え、心も新たに厚生労働省職員一同力を合わせ、気を引き締めて、山積する課題に取り組んでいきますので、厚生労働行政に対する皆様の御指導と御協力を心からお願い申し上げ、私の新年の御挨拶といたします。

 

 

平成二十七年元旦

厚生労働事務次官村木厚子

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