「年末特別企画/今年の労災裁判を振り返る~泉南アスベスト訴訟で最高裁が国の賠償責任認める~」「解釈例規物語/所定超え労働に対する賃金の支払時期」~労働基準広報2014年12月21日号の内容~
労働調査会発行 労働基準広報2014年12月21日号のコンテンツです
●年末特別企画/今年の労災裁判を振り返る
泉南アスベスト訴訟で最高裁が国の賠償責任認める
(弁護士・外井浩志(外井(TOI)法律事務所))
今回の特徴としては、例年のとおり、過労死・過労自殺の行政取消訴訟事件、アスベスト事件、業務災害・通勤災害に関する事件が増えていることである。
大阪・泉南地域の工場でアスベスト(石綿)を吸い石綿関連疾患に罹患したとして、工場の元労働者らが国に損害賠償を求めた泉南アスベスト上告審事件で、最高裁は、今年10月9日、国の賠償責任を認める判決を言い渡した。
判決では、国が行ってきた規制について、「1958年には石綿の健康被害は相当深刻であると明らかになっていた」とした上で、「速やかに罰則をもって排気装置の設置を義務づけるべきであったのに、1971年まで排気装置の規制をしなかったことは違法」と判示している。
●解釈例規物語・第64回
第32条の3、第37条関係~所定超え労働に対する賃金の支払時期~
フレックスタイム制の場合の所定超え労働に対する賃金は当月支払いの必要があるが代替休暇未取得の場合の割増賃金支払いは2ヵ月後でよい
(中川恒彦)
平成22年4月に施行された改正労働基準法により、1ヵ月60時間を超える時間外労働に対しては5割増の割増賃金を支払うべきこととなったが、労働者が希望する場合には、労使協定により、その5割増のうち半分に当たる2割5分の部分については、その支払いに代えて代替休暇を与えることができる(労働基準法第37条第3項)。たとえば、ある月においてある労働者が92時間の時間外労働を行ったとすると、60時間を超える時間外労働すなわち32時間については5割増の割増賃金を支払わなければならないが、その5割増のうち2割5分(0.25)の部分については、その支払いに代えて1日の休暇を与えることができる(1.25については、代替休暇の対象とすることはできず、当該月の賃金支払日に支払わなければならない。)。休暇に代えることのできる割増賃金1時間分の単価は0.25であるから、32時間分では、0.25×32時間=8時間、すなわち1日分に相当する。労働者が希望する場合には、32時間に対する0.25の割増賃金を支払う代わりに、1日の休暇を与えることができるということである。
●転ばぬ先の労働法〈紛争予防の誌上ゼミ〉
第19講 懲戒処分を行うまでのステップ
懲戒処分の根拠規定を整備・周知し該当する事由と処分内容の検証を
(北海学園大学法学部准教授・弁護士 淺野高宏)
非違行為や不正行為を行った者に対して、懲戒処分を行うに当たっては、様々なステップを踏む必要がある。就業規則がない企業、就業規則があっても懲戒処分に関する規定がない企業、規定があっても従業員に周知していない企業においては、いずれも懲戒処分はできないと考えられる。また、本来、懲戒処分時までに事実関係の調査等は終了していることが前提とされていることから、懲戒事由を後日追加して理由を補強することは許されない。そして、過去に同種事例はあるか、そのときの処分はどうか、社内体制の不備はないか――などを検証することも重要になる。
●レポート/過労死防止対策推進シンポジウム
毎年11 月は過労死等防止啓発月間に
国主催のはじめてのシンポジウムが開催
(編集部)
平成26 年11 月14 日、「過労死等防止対策推進法」の周知を図るため、「過労死等防止対策推進シンポジウム」が開催された。過労死を定義づけ、過労死等防止対策が国の責務であることを明記する過労死防止法は、毎年11 月を「過労死等防止啓発月間」と定めている。同シンポジウムは、この月間における取組の一環として開催されたもので、国の主催するはじめてのシンポジウム。同シンポジウムは塩崎厚労相の挨拶に始まり、過労死弁護団全国連絡会議幹事長である川人博弁護士による基調講演、全国過労死を考える家族の会代表の寺西笑子氏などによる過労死家族の体験談の発表が行われた。
●労働局ジャーナル/〔埼玉労働局〕
管内の43 労災請求事業場に監督指導を実施
うち37 事業場で法令違反が認められる
埼玉労働局(阿部充局長)は、平成25年度に同局管内8労働基準監督署が実施した過労死等の労災請求事業場に対する監督指導結果を公表した。結果をみると、過重労働による健康障害が発生したとして労働者等から労災請求のあった43事業場のうち、37事業場86.0%)で何らかの法令違反が認められた。法令違反の内訳(述べ件数)については、労働時間に関するものが27件で最多(全体の62.8%)となり、割増賃金に関するものが18件(同41.9%)、就業規則に関するものが12件(同27.9%)と続いた。
●知っておくべき職場のルール<第43回>ユニオン・ショップ協定
労働者が過半数組合の組合員であることを雇用条件とする労働協約
(編集部)
「ユニオン・ショップ」は、「組織強制」の一形態であり、「使用者が労働協約において、自己の雇用する労働者のうち当該労働組合に加入しない者及び当該組合の組合員でなくなった者を解雇する義務を負う制度」です。そして、このユニオン・ショップについて労使で締結する労働協約を「ユニオン・ショップ協定(ユ・シ協定)」といいます。
●NEWS
(有期雇用労働者等特措法が原案通り成立)専門知識労働者の無期転換申込権に特例/
(衆院解散で審議未了)派遣法改正案と女性の活躍推進法案は廃案に/ほか
●労務資料 平成25年労働安全衛生調査(実態調査)結果② ~労働者調査~
●連載 労働スクランブル第202回(労働評論家・飯田康夫)
●わたしの監督雑感 香川・坂出労働基準監督署長 大杉和彦
●今月の資料室
●平成26年 総目次
●労務相談室
労働基準法
(任意保険加入を条件に通勤手当支給)未加入の際の返還規定は
弁護士・新弘江(あだん法律事務所)
募集・採用
(パート従業員の正社員転換制度)対象者を50歳未満としたい
弁護士・岡村光男(安西法律事務所)
労働契約法
(5年経過後の無期転換のルール)障害者は対象外か
弁護士・鈴木一嗣(鈴木一嗣法律事務所)
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