中小企業の65%が賃上げ実施~賃上げの理由は「従業員の定着・確保」が最多~
経済産業省がこのほど公表した「中小企業の雇用状況に関する調査」によると、平成26年度に何らかの賃上げを行った企業は65%で、賃上げを行った企業のうち、36%の企業がベースアップに相当する賃上げを実施しています。
賃上げの理由(複数回答)としては、従業員の定着・確保と回答した企業が最も多く76%、次いで業績回復の還元が29%となっており、人手不足が深刻化する中小企業の実態も明らかになりました。
地域別で見ると、賃上げを行った企業は、昨年度に比べ全国的に増加し、地域間の格差も少なくなっており、地方へ「経済の好循環」が着実に波及しつつある状況が見られます。
中小企業の雇用状況に関する調査・集計結果の概要
常用労働者(いわゆる正社員)の賃金の引き上げ状況について
(1) 平成 26 年度、平成25 年度の常用労働者の1 人当たり平均賃金の引き上げ(定期昇給分を含む)の状況
常用労働者(いわゆる正社員)の1 人当たり平均賃金の引き上げ(定期昇給分を含む)の状況について、「引き上げる/引き上げた」とする企業の割合は、平成25 年度の56.8%に対し、平成26 年度は64.5%に増加している。
常用労働者(いわゆる正社員)の1 人当たり平均賃金の引き上げ(定期昇給分を含む)の状況について、「引き上げる/引き上げた」とする企業の割合は、平成25 年度の56.8%に対し、平成26 年度は64.5%に増加している。
(2) 平成 26 年度に賃金を引き上げる/引き上げた主な理由(複数回答)
平成26 年度に常用労働者の1 人当たり平均賃金について、「引き上げる/引き上げた」と回答した企業の主な理由は、「従業員の定着・確保」が75.7%で最も多くなっており、中小企業の人手不足感が見てとれる。
(3) 平成 26 年度に賃金を引き上げない/引き上げていない主な理由(複数回答)
平成26 年度に常用労働者の1 人当たり平均賃金を「引き上げない/引き上げていない」と回答した企業の主な理由は、「業績の低迷」が71.7%で最も多くなっており、業績の低迷が賃上げを妨げている状況が見てとれる。また、次いで「賃金より従業員の雇用維持を優先」「原油・原材料価格の高騰」が多くなっており、雇用維持への努力やコストアップの影響が見てとれる。
地域ごとの賃金の引き上げの状況
常用労働者の1 人当たり平均賃金を「引き上げる/引き上げた」と回答した企業の地域ごとの実施割合については、平成25 年度においては、都市部(関東・中部・近畿)の平均割合が58.2%と他の地域よりも高かったが、平成26 年度においては全地域においてこの値を上回り、地方へ「経済の好循環」が波及している様子が見てとれる。
賃金を引き上げた企業における引き上げ状況について
(1) 賃金を引き上げた企業におけるベースアップ又は賞与・一時金の増額の状況
平成26 年度に賃上げを実施した企業のうち、ベースアップに相当する賃上げを「実施する/した」は36.2%、賞与・一時金の増額を「実施する/した」は48.0%となっている。また、ベースアップに相当する賃上げ又は昨年を上回る賞与・一時金の額が支給された企業の割合は63.3%となった。
(2) ベースアップ実施企業の割合
平成26 年度に賃上げを実施した企業のうち、ベースアップに相当する賃上げを「実施する/した」は36.2%(全回答企業に占める割合は23.4%)となった。また従業員規模別に見ると、従業員数が20 人以下の企業においては全回答企業に占める割合は12.3%となっているが、従業員数が100 人超の企業においては30.2%となっており、従業員規模が大きくなるほど、ベースアップを実施した企業の割合が大きくなっている。
(3) ベースアップの引き上げ額(平成26 年度)
平成26 年度のべースアップの引き上げ額(予定を含む)については、「2,000~5,000 円未満」が42.4%で最も多くなっており、「8,000 円以上」も13.5%を占めている。従業員規模別に見ると、20 人以下の企業においては「5,000 円以上」引き上げた企業が62.7%となっているが、従業員数が100 人超の企業においては19.5%となっている。従業員規模が小さい企業ほど、ベースアップを実施した企業の割合は低いが、引き上げ額は大きくなる傾向がある。また、平成26 年度のべースアップの引き上げ率については、「1%以上~3%未満」が54.4%で最も多くなっており、「5%以上」も5.0%を占めている。従業員規模別に見ると、従業員数が20 人以下の企業においては3%以上引き上げた企業が33.1%となっているが、従業員数が100 人超の企業においては11.1%となっており、引き上げ額と同様の傾向となっている。

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