「多様な正社員」の普及・拡大のための有識者懇談会報告書」をとりまとめ 【7月30日】
勤務地限定正社員、職務限定正社員、勤務時間限定正社員
――の活躍が期待できるケースなどを示す
7月30日付で、「多様な正社員」の普及・拡大のための有識者懇談会(座長:今野浩一郎 学習院大学経済学部経営学科教授)では、報告書をとりまとめ、公表しました。
「日本再興戦略」(平成25年6月14日閣議決定)などを踏まえ、平成25年9月にこの懇談会を設け、14回にわたって「多様な正社員」の雇用管理をめぐる課題について検討してきました(第14回の懇談会の様子はこちら)。
そして、今年6月24日に閣議決定された「日本再興戦略」改訂2014(改訂成長戦略)では、今年7月中に「雇用管理上の留意点」をとりまとめ、「導入モデル」として公表することとされていました。
第14回の懇談会で示された案から、修正された主な箇所は、
17ページ 3段落目の3~4行目
22ページ 上から4~5行目
27ページ 「8」の3行目、7行目
――などとなっています。
今後、厚生労働省では、企業における多様な正社員の円滑な導入、運用のための労使の効果的な取組が促進されるよう、「多様な正社員」導入企業の好事例を収集し、雇用管理上の留意事項や就業規則の規定例とともに、周知に取り組んでいくとしています。
今後、この報告書については、周知のための行政通達が示されるほか、パンフレット・リーフレットが作成される見通しです。
なお、この報告書は、雇用管理の課題や方法などを示すものであり、この報告書によって、法令の改正が行われるわけではありません。
【「多様な正社員」の普及・拡大のための有識者懇談会報告書のポイント】
は次のとおりです。
1 多様な正社員の効果的な活用が期待できるケース
(1) 勤務地限定正社員の活用が期待できるケース
○ 育児や介護の事情で転勤が難しい者などについて、就業機会の付与と継続を可能とする。
○ 有期契約労働者の多い業種において、改正労働契約法に基づく有期契約労働者からの無期転換の受皿として活用できる。
○ 安定雇用の下で技能の蓄積・承継が必要な生産現場における非正規雇用からの転換の受皿として、また、多店舗経営するサービス業における地域のニーズにあったサービスの提供や顧客の確保のために、それぞれ活用できる。
(2) 職務限定正社員の活用が期待できるケース
○ 金融、ITなどで特定の職能について高度専門的なキャリア形成が必要な職務において、プロフェッショナルとしてキャリア展開していく働き方として活用できる。
○ 資格が必要とされる職務、同一の企業内で他の職務と明確に区別できる職務で活用できる。
○ 高度な専門性を伴わない職務に限定する場合、職務の範囲に一定の幅を持たせた方が円滑な事業運営に資する。
(3) 勤務時間限定正社員の活用が期待できるケース
○ 育児や介護の事情で長時間労働が難しい者などについて、就業機会の付与と継続を可能とする。
○ 労働者がキャリア・アップに必要な能力を習得する際に、自己啓発のための時間を確保できる働き方として活用できる。
○ 勤務時間限定の働き方の前提として、職場内の適切な業務配分、長時間労働を前提としない職場づくりの取組が必要である。
2 労働者に対する限定の内容の明示
○ 転勤、配置転換などの際の紛争の未然防止のため、職務や勤務地に限定がある場合には限定の内容について明示することが重要である。これにより、労働者にとってキャリア形成の見通しの明確化やワーク・ライフ・バランスの実現が容易になり、企業にとっては優秀な人材を確保しやすくなる効果がある。
○ 労働契約法第4条の書面による労働契約の内容の確認の対象としては、職務や勤務地の限定も含まれる。
3 事業所閉鎖や職務の廃止などへの対応
(1) 整理解雇
○ 勤務地や職務が限定されていても、事業所閉鎖や職務廃止の際に直ちに解雇が有効となるわけではなく、整理解雇法理(4要件・4要素)を否定する裁判例はない。
○ 解雇の有効性は、人事権の行使や労働者の期待に応じて判断される傾向がある。
○ 勤務地限定や高度な専門性を伴わない職務限定などにおいては、解雇回避のための措置として配置転換が求められる傾向にある。他方、高度な専門性を伴う職務や他の職務と明確に区別される職務に限定されている場合には、配置転換に代わり、退職金の上乗せや再就職支援によって解雇回避努力を尽くしたとされる場合もみられる。
(2) 能力不足解雇
○ 多様な正社員についても、能力不足を理由に直ちに解雇することが認められるわけではなく、高度な専門性を伴わない職務限定では、改善の機会を付与するための警告に加え、教育訓練、配置転換、降格などが求められる傾向がみられる。
○ 能力不足解雇について、高度な専門性を伴う職務に限定されている場合には、教育訓練、配置転換、降格などが不要とされる場合もあるが、改善の機会を付与するための警告は、必要とされる傾向がみられる。
4 転換制度
<非正規雇用の労働者から多様な正社員への転換>
○ 非正規雇用の労働者の希望に応じて、雇用の安定を図りつつ勤続に応じた職業能力開発の機会や処遇が得られるよう、多様な正社員への転換制度(社内のルール)を設けることが望ましい。
○ 有期契約労働者の時から契約の更新ごとに職務の範囲を広げ、無期転換後も職務の範囲やレベルを上げていくことは、労働者のキャリア・アップと企業としての人材育成の双方に効果的である。
<いわゆる正社員と多様な正社員の間の転換>
○ 労働者のワーク・ライフ・バランスの実現などのため、いわゆる正社員から多様な正社員へ転換できることが望ましい。他方、キャリア形成への影響やモチベーション維持のため、いわゆる正社員への再転換ができることが望ましい。
○ 転換制度の活用促進や紛争の未然防止のため、転換を社内制度として明確にすることが望ましい。
○ 職務、勤務地などが限定されていても、その範囲や習得することができる能力についていわゆる正社員と差が小さい場合には、「キャリアトラックの変更」として、いわゆる正社員と多様な正社員の区分をするのではなく、「労働条件の変更」として取り扱うことが適切な場合もある。そのような場合には、適切な人事評価を前提に、職務の経験、能力開発、昇進・昇格のスピード・上限に差を設けない、あるいは、できるだけ小さくするといった対応が考えられる。また、転換・再転換の要件を緩やかに設定することが考えられる。
○ 労働契約法第3条第3項の「仕事と生活の調和への配慮」に、多様な正社員への転換制度も含まれる。
5 均衡処遇
○ 多様な正社員といわゆる正社員との双方に不公平感を与えず、また、モチベーションを維持するため、多様な正社員といわゆる正社員の間の処遇の均衡を図ることが望ましい。
○ 多様な正社員は限定の仕方や処遇が多様であり、また、賃金や昇進は企業の人事政策に当たることから、定型的な人事労務管理の運用が定着していない中で、何をもって不合理とするのか判断が難しい。特に、多様な正社員の処遇についていかなる水準をもって均衡が図られているとするかについて一律に判断することは難しいが、企業ごとに労使で十分に話し合って納得性のある水準とすることが望ましい。
○ 労働契約法第3条第2項の「就業の実態に応じた均衡の配慮」には、多様な正社員といわゆる正社員 との間の均衡処遇も含まれる。
6 いわゆる正社員の働き方の見直し
○ 多様な正社員の働き方を選びやすくするため、所定外労働、転勤や配置転換の必要性や期間などの見直しなど、いわゆる正社員の働き方を見直すことが望ましい。
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