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2014年2月14日 (金)

労政審「有期労働契約の無期転換ルールの特例等について」建議~今通常国会に法案を提出~

特例の適用には厚生労働大臣の認定が必要

 労働政策審議会は、本日(2月14日)、平成25年4月施行の改正労働契約法による無期労働契約転換制度について特例を設け、今通常国会に所要の法案を提出する旨、田村憲久厚生労働大臣に建議しました。

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 先の臨時国会で成立した国家戦略特別区域法では、①一定期間内に終了すると見込まれる業務に従事する、②高度の専門的な知識、技術又は経験を必要とする、③年収が常時雇用される一般の労働者と比較して高い水準となることが見込まれる――の要件を満たす、有期契約労働者等を対象に、無期転換申込権発生の期間の在り方等について検討を行い、平成26年通常国会に所要の法案を提出することを目指すとされています。
 このほか、定年後引き続いて雇用される有期契約労働者に対する無期契約転換ルールの適用の在り方を見直すことを求める意見もありました。

 こうした状況を受け、労働政策審議会労働条件分科会有期雇用特別部会及び職業安定分科会高年齢者有期雇用特別部会で、上記について検討した結果、本日、報告をとりまとめ、田村厚労相に建議しました。

 建議では、①高度専門労働者(一定期間内に完了する業務に従事し、高収入かつ高度な専門的な知識等を有する者)、②高齢者(定年後引き続いて雇用される者)--について、無期転換ルールの特例を設けることを提案しています。

 具体的には、現行5年の無期転換申込権発生までの期間について、上記①及び②の労働者との間の労働契約については、次のような特例を設けることが適当であるとしています。
① 高収入かつ高度の専門的知識等を有する有期契約労働者については、プロジェクトの完了までの期間は無期転換申込権が発生しないこととするが、その期間が10年を超える場合には、無期転換申込権が発生するものとする。
② 定年に達した後に同一事業主又は特殊関係事業主に引き続いて雇用される高齢者については、当該事業主に継続して雇用されている期間は、通算契約期間に算入しないこととする。

 また、特例の適用については、厚生労働大臣が適切な雇用管理の実施に関する指針を策定し、当該指針に沿った対応が取れると厚生労働大臣が認定した事業主に雇用される対象労働者を対象とする仕組みとすることを提案しました。

  厚生労働省は、建議の内容を踏まえ、今通常国会への法案提出に向け、法律案要綱を作成し、労働政策審議会に諮問する予定です。

労働政策審議会建議「有期労働契約の無期転換ルールの特例等について」

有期労働契約の無期転換ルールの特例等について(報告)

 有期労働契約については、平成23年12月26日労働政策審議会建議「有期労働契約の在り方について」に基づき、有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えた場合、労働者の申込みにより無期労働契約に転換するルール(以下「無期転換ルール」という。)の導入等を内容とする労働契約法の改正等が行われ、平成25 年4月から全面施行されている。
 無期転換ルールについては、有期労働契約の濫用的利用を抑制し、労働者の雇用の安定を図ることを目的として導入されたものであり、企業にも積極的に対応する動きが見られる。一方で、労働契約法の改正や施行を契機に、契約更新の上限を新たに設ける動きも一部に見られる。
 また、国家戦略特別区域法(平成25 年法律第107 号)附則第2条において、産業の国際競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点形成の推進を図る観点から、高収入かつ高度な専門的知識等を有する有期契約労働者等を対象に、無期転換申込権発生までの期間の在り方等について検討を行い、平成26年の通常国会に所要の法案の提出を目指すこととされているほか、定年後引き続いて雇用される有期契約労働者に対する無期転換ルールの適用の在り方を見直すことを求める意見もある。
 こうした状況を踏まえ、労働政策審議会労働条件分科会有期雇用特別部会及び職業安定分科会高年齢者有期雇用特別部会において、平成25年12月25 日以後、5回にわたり集中的に検討を行った結果、下記の結論に達したので、報告する。
 この報告を受けて、厚生労働省において、今通常国会における所要の法案の提出をはじめとする必要な措置を講ずることが適当である。
 

                   記

1 無期転換ルールの特例について
(1) 特例の枠組
有期労働契約の濫用的利用により、雇用の安定性が損なわれるおそれの少ない、
① 一定の期間内に完了する業務に従事する高収入かつ高度な専門的知識、技術又は経験を有する有期契約労働者
② 定年後引き続いて雇用される有期契約労働者
について、その能力を十分有効に発揮できるようにするため、それぞれの特性に応じた適切な雇用管理を実施するとともに、無期転換申込権が発生するまでの期間の特例を設け、もって国民経済の健全な発展に資することとし、以上の趣旨を法律案に反映させることが適当である。
 ただし、いずれの場合にも、労働者保護を図りつつ、個別労働関係紛争を未然に防止するため、労働契約が適切に行われるような措置を併せて講ずることが必要である。

(2) 特例の対象となる労働者の具体的要件
① 一定の期間内に完了する業務に従事する高収入かつ高度な専門的知識等を有する有期契約労働者の具体的要件
一定の期間内に完了する業務については、経済のグローバル化の進展等に伴う企業活動を取り巻く環境の変化を踏まえ、企業内の期間限定のプロジェクトの業務のうち、高度な専門的知識等を必要とするものを含むこととするなど、一定の範囲の業務とすることが適当である。
イ 年収及び高度の専門的知識等の要件については、1回の労働契約期間の特例の要件として大臣告示「労働基準法第十四条第一項第一号の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準」(平成15 年厚生労働省告示第356 号)に定められている内容(一定の国家資格等を有する者や、一定期間の実務経験を有する年収1,075 万円以上の技術者、システムエンジニア、デザイナー等)を参考に定めることが適当である。具体的には、法案成立後改めて労働政策審議会において検討の上、厚生労働省令等で定めることが適当である。その際、国家戦略特別区域法において、対象者はその年収が常時雇用される一般の労働者と比較して高い水準となることが見込まれる者に限ることとされていることに留意するものとする。

② 定年後引き続いて雇用される有期契約労働者の具体的要件
 定年に達した後に、同一の事業主又は当該事業主と一体となって高齢者の雇用機会を確保する特殊関係事業主に、引き続いて雇用される高齢者については、特例の対象とすることが適当である。
 なお、60 歳未満から有期労働契約を反復更新しており、高年齢者雇用安定法における高年齢者雇用確保措置の対象外となる労働者については、引き続き無期転換ルールにより雇用の安定が図られることが重要である。
 また、就業規則等に一定の年齢に達した日以後は契約を更新しない旨の定めをしている場合、反復継続して契約の更新がなされているときには、期間の定めのない雇用とみなされ、定年の定めをしているものと解されることがあり、高年齢者雇用安定法における高年齢者雇用確保措置の対象となることがあることに留意するものとする。

(3) 特例の対象となる事業主の具体的要件
 特例の対象労働者が、その能力を有効に発揮するためには、事業主による適切な雇用管理(※)の実施が求められる。このため、厚生労働大臣は、対象労働者に応じた適切な雇用管理の実施に関する基本的な指針を策定することとした上で、当該指針に沿った対応が取られると厚生労働大臣が認定した事業主に雇用される対象労働者については、無期転換ルールの特例の対象とする仕組みとすることが適当である。
 また、認定の手続については、労働者の能力を十分有効に発揮できるようにするという特例の趣旨を踏まえた上で、簡素で効率的な仕組みとすることが必要である。
 なお、基本指針については、法案成立後、労働政策審議会においてその具体的な内容を検討の上、策定することが適当である。

※ 例えば、(2)①の者については、労働者が自ら能力の維持向上を図る機会の付与、(2)②の者については、高年齢者雇用安定法の趣旨を踏まえた高年齢者の配置、職務等に関する配慮等
 
 なお、特に、高年齢者については、事業主が継続雇用制度を導入し、定年後に有期労働契約によって引き続き雇用する際は、能力など年齢以外を理由として契約を更新しないことは認められるが、原則65 歳までは契約更新がされるものであるとの高年齢者雇用安定法の趣旨を没却することとならないよう適切な雇用管理がなされる必要がある。
 
労働者側委員からは、民事法上のルールである無期転換ルールの特例の適用に当たっては、行政庁の関与は最小限とすることが適当であるとの意見があった。

(4) 特例の具体的内容
 (2)及び(3)の要件を満たす事業主と労働者との間の労働契約については、労働契約法第18 条の無期転換申込権発生までの期間について、次のような特例を設けることが適当である。
①  高収入かつ高度の専門的知識等を有する有期契約労働者については、プロジェクトの完了までの期間は無期転換申込権が発生しないこととするが、その期間が10年を超える場合には、無期転換申込権が発生するものとする。
②  定年に達した後に同一事業主又は特殊関係事業主に引き続いて雇用される高齢者については、当該事業主に継続して雇用されている期間は、通算契約期間に算入しないこととする。

 また、特例の対象となる労働者に応じた適切な雇用管理の実施を促進するため、国は事業主に対して必要な援助を行うこととすることが適当である。


(5) 労働契約が適切に行われるために必要な具体的措置
 有期雇用の特例の運用に当たっては、労使双方に無期転換申込権発生までの期間が明確になるようにすることが求められる。また、高収入かつ高度の専門的知識等を有する有期契約労働者も、特例の対象となる業務以外の業務に従事する場合には通常の無期転換ルールに従うものであるが、この点を運用上明確にすることが求められる。
 このため、事業主は、労働契約の締結・更新時に、①特例の対象となる労働者に対して無期転換申込権発生までの期間を書面で明示するとともに、②高収入かつ高度の専門的知識等を有する有期契約労働者に対しては、特例の対象となる業務の具体的な範囲も書面で明示する仕組みとするため必要な省令改正を行うことが適当である。また、その際には、モデル労働条件通知書についても必要な見直しを行った上で、その活用を図ることが適当である。
 なお、これらの措置や行政窓口での相談を通じた個別労働関係紛争の未然防止が期待されるが、それにもかかわらず個別労働関係紛争が発生した場合には、労働局のあっせん等の個別労働紛争解決制度の活用や労働審判、民事訴訟により、紛争の迅速な解決が期待される。



2 改正労働契約法に基づく無期転換ルールの円滑な施行について

 平成25年4月から施行された無期転換ルールについて、無期転換申込権が発生する直前の雇止めについて懸念があることを踏まえ、厚生労働行政において以下の取組を積極的に進めることが適当である。
①  無期転換ルールについて、雇用の安定がもたらす労働者の意欲や能力の向上や、企業活動に必要な人材の確保に寄与することなどのメリットについて十分に理解が進むよう一層の周知を図るとともに、労働契約法第19 条に法定化された「雇止め法理」の内容や適用範囲等についてもあわせて周知を図ること。また、有期契約労働者やその雇用管理の担当者にも内容が行き届くよう、効果的な周知の方法を工夫すること。
②  有期雇用から無期雇用への転換が円滑に進むよう、無期転換の取組を行っている企業における制度化の取組等についての好事例や、無期転換を進める際の留意点等をまとめ、①の取組において活用すること。
③  「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」(平成15 年厚生労働省告示第357 号)に規定する雇止めの予告や雇止めの理由の明示など、有期労働契約に関する労働基準関係法令の諸規定の遵守の徹底を図ること。
④  非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップ等を促進するため、正規雇用又は無期転換、人材育成などの取組を行う事業主を支援する助成金の効果的な活用を積極的に進めること

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