年頭所感 【宮川 晃 派遣・有期労働対策部長】
年頭所感
派遣・有期労働対策部長 宮川 晃
新春を迎え、謹んでお慶びを申し上げます。
日本経済は緩やかに回復しつつあり、雇用情勢も一部に厳しさは見られるものの改善が進んでいます。その一方で、有期契約労働者、パートタイム労働者、派遣労働者といった非正規雇用は労働者全体の三分の一を超える状況にあり、若年層を中心に増加を続けています。
非正規雇用については、企業や労働者からのニーズもある一方で、雇用が不安定、処遇が低い、能力開発の機会が乏しいという側面もあり、また、不本意に非正規雇用にある方も少なくありません。
今年、派遣・有期労働対策部は、非正規雇用対策を総合的に推進する統括部局として、日本再興戦略等に掲げられた「全員参加の社会」「頑張る人が報われる社会」の実現に向けて、次の六つの課題に、着実かつ迅速に取り組んでいきます。
一. 労働者派遣事業については、平成二十四年三月に成立した改正労働者派遣法の国会審議において、登録型派遣・製造業務派遣の在り方、派遣期間制限の在り方等について、議論を開始する旨の附帯決議が付されておりました。これらを踏まえ、学識経験者からなる研究会での論点整理を経て、昨年八月より、労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会において、特定労働者派遣事業の在り方や派遣労働者の待遇なども含めて、公労使による精力的なご議論をいただいております。
今年は、まずはこの議論の結果を踏まえ、速やかに必要な措置を講じます。
二.個人のライフスタイルや希望に応じて、柔軟で多様な働き方を可能とするとともに、非正規雇用の労働環境の改善を図っていくことが、労働者のニーズに対応するためにも、また、労働者の意欲と能力を十分に発揮させ、経済成長を支える上でも重要となっています。
このため、多様な働き方を実現するための方策の検討を進めるとともに、事業主の方に対する助成措置を強化するなど、非正規雇用労働者のキャリアアップのための環境を整備し、非正規雇用労働者の雇用の安定・人材育成・処遇改善等を総合的に支援していきます。
三.今春の大学新卒者の内定率は、昨年十月現在で六四・三%と前年を上回ったものの、未内定の新卒者や既卒者が未だに多い状況にあり、また、フリーター数も高止まりしていることから、若者の就職環境は依然として厳しい状況にあります。
社会保障の担い手となる若者の雇用の安定を図ることは重要であるため、これまでもジョブサポーターを増員し、大学等と連携して「新卒応援ハローワーク」でのきめ細かな職業紹介を実施するなど、新卒者の就職支援を強化するとともに、全国にわかものハローワーク等を設置し、フリーター等の正規雇用に向けた支援を推進してきました。
今年も、新卒者等に対しては、一人でも多くの新卒者の就職が卒業までに決まるよう集中支援を行うほか、卒業後も「正社員をあきらめさせない」継続的な支援、就職後の定着支援等を強化するなど、就職活動から職場で活躍するまでの総合的なサポートを進めていきます。また、フリーター等に対しても、わかものハローワークの拡充により、一人一人のニーズに応じた支援メニューを提供する等、正規雇用化に向けた支援を一層推進していきます。
四.生活保護受給者は、昨年九月末時点で約二一六万人となっており、特に稼働年齢層の方が多いと考えられる「その他世帯」の割合も増加傾向が続いています。
このため、福祉事務所へハローワークの常設窓口を設置するなど、生活保護受給者などを含めた生活困窮者に対し、ハローワークと地方自治体が一体となった就労支援の抜本強化を図りました。
今後は、常設窓口を増設するほか、生活困窮者に対する相談支援をモデル的に実施する関係機関に対して、ハローワークから巡回相談を実施するなど、新たに両機関の連携を構築し、生活困窮者の就労支援のさらなる強化を図ります。
五.「求職者支援制度」の開始から二年が経過し、求職者支援訓練の受講者は十九万人を超え、修了者の就職率は七割以上と一定の成果を上げています。
これまでの施行状況を踏まえ、昨年、労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会において、制度が十分に認知され、訓練の受講につながっているか、また、訓練期間中の生活支援を含め、制度の利用が安定した就職につながっているかといった観点から制度の見直しについてご議論いただきました。
今年は、この議論の結果を踏まえ、速やかに必要な措置を講じ、求職者支援制度が第二のセーフティネットとしての役割を果たし、雇用保険を受給できない求職者の早期就職の実現を図れるよう取り組んでいきます。
六.外国人労働者を取り巻く雇用環境は、経済危機後の最悪期からは持ち直したものの、依然として厳しい状況です。今年も日系人集住地区を中心に、通訳や相談員を配置したハローワークにおいて、マッチングの更なる強化や、地方公共団体、職業訓練機関との連携を強化し、日本語コミュニケーション能力の向上などに対応した就労支援を推進していきます。また、国際競争力強化の観点から、高度の専門的な知識や技術を有する高度外国人材の就業を促進するためにも、高度外国人材にとって魅力ある環境の整備を進めていきます。さらに、高度外国人材の卵というべき外国人留学生の就労支援を強化していきます。
また、経済連携協定に基づく看護師や介護福祉士候補者の特例的な受入れについては、インドネシアやフィリピンに続いて、本年にベトナムから新規受入れを予定しており、国内労働市場への影響を考慮しつつも、受入れ方法の改善や、適正な雇用管理を推進していきます。
派遣・有期労働対策部は、政府の喫緊の課題を数多く抱えておりますが、これらの課題に全力で取り組んでいきますので、一層のご支援とご協力をよろしくお願い申し上げます。
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