« 学び直しと求職者支援訓練の報告書を了承 【第76回 職業能力開発分科会】 | トップページ | 雇用保険に関する業務取扱要領 【平成25年6月1日以降】 »

2014年1月 1日 (水)

年頭所感 【田村憲久 厚生労働大臣】

年頭所感

 

 

平成二十六年の新春を迎え、心よりお慶び申し上げます。本年も何とぞよろしくお願い申し上げます。

厚生労働大臣に就任してから一年が経過しました。その間、国民の皆様の安全・安心の確保に万全を期すべく努力して参りましたが、引き続き、私自身が先頭に立って、様々な課題に全力で立ち向かう決意を新たにしています。

 

 第一に、東日本大震災からの復興を加速させなければなりません。

東日本大震災の発災からもうすぐ三年が経とうとする今もなお、多くの方々が避難生活を送っておられます。私もこれまで、被災地を訪問し、復興に向けた取組を把握するとともに、被災された方々からお話を伺いました。こうした方々の心に寄り添った支援や、将来を見据えた復興に向けた取組について、スピード感を持ちつつ、今後とも全力を尽くしていきます。

具体的には、避難生活の長期化に対応するとともに、地域の復興を進めるため、被災者の健康確保や心のケア、医療・介護の体制整備、雇用対策等に取り組んでいきます。

また、東京電力福島第一原子力発電所事故への対応も重要な課題であり、発電所での作業や除染作業などに従事する方々の放射線障害防止や食品中の放射性物質の安全対策に努めていきます。

 

第二に、社会保障と税の一体改革を着実に進めていかなければなりません。

昨年十二月、社会保障制度改革国民会議の報告書における審議の結果等を踏まえ、社会保障制度改革の全体像・進め方を明らかにした「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律」が公布されました。この法律に沿って、個別制度の改革を着実に実施し、世界に誇る我が国の社会保障制度を、次世代に安定的に引き渡していきます。

医療・介護については、住み慣れた地域で日常生活を営むことができるよう、質の高い医療・介護サービス提供体制や地域包括ケアシステムの構築を通じ、医療と介護サービスの提供体制の改革を推進していきます。医療保険制度については、国民皆保険を今後とも堅持するとともに、広く国民の納得・信頼・安心を実現できる制度を構築することが重要であり、医療保険制度の財政基盤の安定化、保険料の国民負担に関する公平の確保、療養の範囲の適正化等を推進していきます。また、新たな基金の活用や、診療報酬改定を通じて、医療提供体制の改革や救急・小児等の分野の充実等にしっかりと取り組んでいきます。

国民の生命や健康を守るため、難病及び小児慢性特定疾患に係る総合的な対策の構築、新たに策定する予防接種基本計画に基づく予防接種施策の推進、肝炎、がん、生活習慣病等、様々な疾病を抱える方々への支援策や予防策、原爆症認定制度の見直しなど被爆者への施策も進めていきます。

年金については、国民の老後の安定した生活を支えるセーフティネットであり、将来にわたって制度を持続可能で安心できるものとすることが重要です。昨年公布された厚生年金基金制度の抜本的な見直し等を定めた法律の円滑な施行に取り組むとともに、社会保障制度改革国民会議の報告書等で指摘された課題の検討に資するような財政検証を行うなど、更なる年金制度の改善に努めていきます。年金記録問題については、年金記録問題に関する特別委員会における議論等も踏まえ、必要な取組を進めていきます。また、年金保険料の納付率の向上等に向けて、制度の見直しも含め、しっかりと取り組んでいきます。

子ども・子育て支援については、平成二十四年に成立した子ども・子育て関連三法に基づく新制度の円滑な施行に向けた準備を内閣府・文部科学省とともに進めていきます。

保育所待機児童の解消については、昨年四月に策定した「待機児童解消加速化プラン」に基づき、保育所の整備、保育士の人材確保等の取組を強力に進めていきます。保育の利用者が就学後に引き続き放課後児童クラブを利用できるよう拡充し、質の確保を図っていきます。児童虐待については、子どもの命が奪われるという痛ましい事件が後を絶たないなど、依然として深刻な状況が続いています。児童虐待防止対策を強化するとともに、家庭的養護の推進など、社会的養護の質・量の拡充に努めます。

ひとり親が就業し、仕事と子育てを両立しながら経済的に自立するとともに、子どもが心身ともに健やかに成長することができるよう、ひとり親家庭への支援を強化するとともに、制度の見直しを進めます。

 

第三に、雇用・労働対策に迅速・着実に取り組んでいかなければなりません。

企業収益の向上が賃金の上昇や雇用の拡大をもたらすような経済の好循環の実現に向け、全ての人材が能力を高め、その能力を存分に発揮できる「全員参加の社会」を構築していきます。

 そのため、日本再興戦略に基づき、成長産業への失業なき労働移動の実現、民間人材ビジネスの活用によるマッチング機能の強化、多様な働き方の実現、女性や若者の活躍促進等のための施策に取り組んでいきます。具体的には、個人が円滑に転職等を行い、能力を発揮し、経済成長の担い手として活躍できるよう、再就職を支援する助成金の拡充や中長期的なキャリア形成支援のための雇用保険制度の見直しなど労働移動支援型の政策を大胆に実施していきます。

若年者や非正規雇用の方々への支援については、新卒応援ハローワークの機能強化やわかものハローワークの充実、非正規雇用労働者のキャリアアップの支援など着実に取り組んでいきます。また、パートタイム労働者の公正な待遇をより一層確保するための取組を行います。

また、人生百年時代を見据え、高齢者の方々についても、意欲と能力に応じて年齢に関わりなく働ける「生涯現役社会」の実現に向けた取組を進めていきます。

このほか、男女ともに育児休業の取得を促進するための育児休業給付の引上げや労働者派遣法の見直しを進めます。

公共職業訓練、求職者支援訓練を始めとする職業能力開発施策を積極的に推進し、成長分野などで求められる人材育成の強化に取り組んでいきます。

現内閣の成長戦略の中核である女性の活躍の促進については、個別企業の訪問により男女労働者間の格差の解消を目指した自主的かつ積極的な取組や女性の活躍状況の情報開示について働きかけを行うなどの取組を推進していきます。また、次世代育成支援対策推進法を延長・強化するとともに、仕事と子育てを両立しやすい職場環境を整備することにより、女性が活躍する社会の実現を目指します。

また、若者の「使い捨て」が疑われる企業等が問題となっており、私自身、強い危機感を持っています。我が国の将来を担う若者等が活躍しやすい環境を整えるために、相談体制等の対応策を強化するなど、力を入れて取り組んでいきます。また、ワーク・ライフ・バランスや労働生産性向上の観点を踏まえて、労働時間法制の見直しの検討を進めます。

労働者の安全と健康の一層の確保を図るため、化学物質の管理のあり方の見直しやメンタルヘルス対策の強化を進めます。

以上のような施策の実施について、労使の皆様との相互理解と信頼の下に行政を推進していきます。また、今後とも安定した労使関係を維持・構築していくため、様々な機会を通じて、労使の意思疎通、合意形成の促進に努めていきます。

 

これまでに述べた以外にも、国民の皆様の安全と安心の確保に向けた取組についても、迅速に進めていかなければなりません。

障害のある方への支援については、障害者総合支援法及び昨年公布された改正精神保健福祉法、改正障害者雇用促進法の円滑な施行に取り組むことなど、障害のある方を地域全体で支える取組や就労支援の充実を進めていきます。

生活保護・生活困窮者対策については、昨年公布された生活保護関連二法に基づき、すべての人が自立した生活を送ることができるよう、新たな生活困窮者自立支援制度の円滑な施行に向けた準備を着実に進めるとともに、生活保護制度について、不正・不適正受給対策の強化や医療扶助の適正化を図るほか、受給者の自立に向けた就労支援の強化等を進めていきます。

医薬品・医療機器については、世界に先駆けて革新的医薬品・医療機器、再生医療等製品の実用化を促進するため、昨年公布された医薬品医療機器等法の円滑な施行に向けた取組を進め、医療機器や再生医療等製品の特性を踏まえた規制の整備等を図っていきます。

また、一般用医薬品のインターネット販売については、日本再興戦略を踏まえ、消費者の安全性の確保のための適切なルールを整備するための法律が公布されたところであり、消費者の利便性と安全性を高める観点から、円滑な施行に向けて取り組んでいきます。さらにこの法律には、いわゆる脱法ドラッグ対策として、指定薬物の所持・使用等の禁止も盛り込まれており、健康被害の発生防止に向け、取締りを強化していきます。

新型インフルエンザ対策等の健康危機管理対策にも万全を尽くすほか、生活衛生関係営業の振興や水道施設の耐震化等を推進していきます。

食品の安全については、食生活の多様化、食品流通のグローバル化が進むなか、食中毒防止のための監視指導や輸入食品の監視等に取り組んでいきます。

援護行政については、硫黄島などにおける戦没者の遺骨収集帰還事業の強化や、慰霊事業、戦傷病者、戦没者遺族に対する支援に着実に取り組むとともに、昨年公布された改正中国残留邦人等支援法に基づく中国残留邦人等死亡後の配偶者の方々に対する新たな支援の実施など、中国残留邦人等に対する支援策をきめ細かく実施します。

 

以上、厚生労働行政には多くの課題が山積しています。国民の皆様には、一層の御理解と御協力をお願い申し上げ、年頭にあたっての私の挨拶と致します。

 

 

厚生労働大臣 田村 憲久

00_2

|

« 学び直しと求職者支援訓練の報告書を了承 【第76回 職業能力開発分科会】 | トップページ | 雇用保険に関する業務取扱要領 【平成25年6月1日以降】 »

お知らせ」カテゴリの記事

大臣・副大臣・政務官」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 年頭所感 【田村憲久 厚生労働大臣】:

« 学び直しと求職者支援訓練の報告書を了承 【第76回 職業能力開発分科会】 | トップページ | 雇用保険に関する業務取扱要領 【平成25年6月1日以降】 »