「日雇派遣の原則禁止」抜本的に見直しへ~規制改革会議の雇用ワーキング・グループ~
1 背景
〇 本年6月の当会議答申及び規制改革実施計画を受けて厚生労働省の研究会報告がまとめられた(①いわゆる26 業務の廃止、②有期雇用派遣のみを「常用代替防止」の対象とし個人レベルで派遣期間に上限設定など)。現在、労働政策審議会で審議中。
○ 関係団体からヒアリングを行ったところ、それぞれの団体の間で意見や現状認識の相違。
2 総論(基本的な考え方)
〇 労使が納得した上で多様な働き方が選択できる社会を構築すべきであり、派遣労働者、派遣元及び派遣先事業者の実情を踏まえ、かつ見直しの影響を十分勘案して、働く機会の縮小を招くことがないようにすべきではないか。
○ 報告書の基本的な方向性は、規制改革会議の主張に沿ったものであり、堅持されるべき。現状では有期雇用派遣が多いことから、これまで期間制限がなかった26 業務においては新たな期間制限が設けられることになる。上限設定に当たってはその影響に十分配慮するべきではないか。
○ 報告書では、依然として、正社員の仕事を奪うべきではないとする「常用代替防止」が規制の根拠として維持されている。派遣労働の規制根拠を「派遣労働の濫用防止」(実態にそぐわない派遣の利用や低処遇・不安定雇用の防止)に転換すべきではないか。
○ 派遣労働を「臨時的・一時的な業務」、「専門業務」、「特別の雇用管理を要する業務」に限定するという現在の規制体系・手法を抜本的に見直し、簡素でわかりやすい制度とし、我が国の実情に即して派遣先の正規雇用労働者との均衡処遇の推進を図っていくことにより、「派遣労働の濫用防止」を図るべきではないか。
3 期間制限の在り方について
(1)派遣先レベルでの規制
継続的な受入期間が上限を超す場合に必要とされる労使のチェックは、派遣期間に制限のない(労使のチェックもない)無期雇用派遣労働者を受け入れるケースとのバランスにも留意して、不透明な手続き等により派遣を望む労働者の就業の機会を奪ったり、事業者の効率的経営を阻害する過重なものにならないようにすべきではないか。
(2)雇用安定措置
有期雇用の場合に派遣元に求められる雇用安定措置については、その内容によっては雇止めが増加する懸念もあり、派遣労働者の契約期間への影響等を注視しながら、実効性のあるものとすべきではないか。
4 平成24年改正法の規定について
平成24年10月施行の改正労働者派遣法に新たに盛り込まれた規定について、契約締結・職業選択・採用の自由といった根本原則や、他の労働規制とのバランスがとれたものになるように見直しを行うべきではないか。
(1)日雇派遣の原則禁止
日雇派遣(契約期間30日以内)の原則禁止は、直接雇用の日雇契約等との整合性を考慮し、濫用的利用の防止を図りつつ、例外規定も含めた抜本的な見直しが必要ではないか。
(2)労働契約の申込みみなし制度について
労働契約申込みみなし制度(一定の違法状態が発生した場合に、派遣先が派遣労働者に対して直接雇用の申込みをしたものとみなす制度。平成27年10月施行予定。)については、他の制度、報告書に記載された雇用安定措置との関係、契約締結の自由との関係も考慮すべきであり、廃止を含めた見直しが必要ではないか。
(3)グループ企業派遣の8割規制
グループ企業派遣は、派遣労働の濫用防止を図りつつ、8割という基準の妥当性を含め、規制の抜本的な見直しが必要ではないか。
(4) マージン率等の情報提供
マージン率の明示義務については、派遣先労働者と派遣労働者の均衡処遇を推進しつつ、廃止すべきではないか。
(5) 1 年以内に離職した労働者への規制
直接雇用されていた労働者を派遣労働者で置き換えることで労働条件の切り下げが行われないように、離職後1年以内の者と労働契約を結び、元の勤務先に派遣することが禁止されているが、適切な例外を認めるべきではないか。
☆雇用ワーキング・グループ資料より
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