来年度にも70~74歳の医療費自己負担2割に引き上げ~社会保障制度改革「プログラム法案」骨子の内容②~
高額療養費の限度額は負担能力(所得区分)に応じて細分化
医療・介護・年金など社会保障制度改革の実施時期を示した「プログラム法案」骨子(8月21日閣議決定)には、社会保障制度改革国民会議報告書に掲げられた各種施策の具体的な実施時期が盛り込まれています。
今回は、「プログラム法案」骨子の中から「医療制度改革」の内容を紹介します。
国民会議報告書では、現在、暫定的に1割負担(法律上は2割)となっている70~74歳の医療費の自己負担について、「この特例措置については、世代間の公平を図る観点から止めるべきであり、・・・低所得者の負担に配慮しつつ、既に特例措置の対象となっている高齢者の自己負担割合は変わることがないよう、新たに70歳になった者から段階的に進めることが適当である」とされています。
プログラム法案骨子では、70~74歳の医療費自己負担の2割への引き上げについて、平成26年度から29年度までを目途に順次講ずるとしています。
また、高額療養費制度について報告書では、「低所得者に配慮し、負担能力に応じて応分の負担を求めるという保険料負担における考え方と同様の制度改正が求められる。具体的には、高額療養費の所得区分について、よりきめ細やかな対応が可能となるよう細分化し、負担能力に応じた負担となるよう限度額を見直すことが必要である」とされていました。
プログラム法案骨子では、所得区分に応じた高額療養費の限度額の見直しについても、平成26年度から29年度までを目途に順次講ずるとしています。
~社会保障制度改革「プログラム法案」骨子の内容②~
2.医療制度
高齢化の進展、高度な医療の普及等による医療費の増大が見込まれる中で、国民皆保険制度を維持することを旨として以下のとおり、必要な改革を行う。
(1) 個人の選択を尊重しつつ、健康管理や疾病予防など自助努力を行うインセンティブを持てる仕組みの検討など、個人の主体的な健康の維持増進への取組を奨励する。
(2) 情報通信技術、レセプト等を適正に活用しつつ、事業主、地方公共団体及び保険者等の多様な主体による保健事業の推進、後発医薬品の使用の促進及び外来受診の適正化その他必要な措置を講ずる。
(3) 医療従事者、医療施設等の確保及び有効活用等を図り、効率的で質の高い医療提供体制を構築するとともに、今後の高齢化の進展に対応し、地域包括ケアシステム(医療、介護、住まい、予防、生活支援サービスが身近な地域で包括的に確保される体制)を構築することを通じ、地域で必要な医療を確保するため、次に掲げる事項その他診療報酬に係る適切な対応の在り方等について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる。
① 病床の機能分化・連携及び在宅医療・在宅介護を推進するために必要な次に掲げる事項
イ 病床機能に関する情報を都道府県に報告する制度の創設
ロ 地域医療ビジョンの策定及びこれを実現するために必要な措置
(必要な病床の適切な区分の設定、都道府県の役割の強化等)
ハ 新たな財政支援の制度の創設
ニ 医療法人間の合併、権利の移転に関する制度等の見直し
② 地域における医師、看護職員等の確保及び勤務環境の改善等に係る施策
③ 医療職種の業務範囲及び業務の実施体制の見直し
(4) (3)に掲げる医療提供体制及び地域包括ケアシステムを構築するに当たっては、個人の尊厳が重んぜられ、患者の意思がより尊重され、人生の最終段階を穏やかに過ごすことができる環境の整備を行うよう努める。
(5) 次期医療計画の策定時期が平成30年度であることを踏まえ、(3)に掲げる必要な措置を平成29年度までを目途に順次講ずる。その一環としてこのために必要な法律案を平成26年通常国会に提出することを目指す。
(6) 持続可能な医療保険制度を構築するため、次に掲げる事項等について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる。
① 医療保険制度の財政基盤の安定化について次に掲げる措置
イ 国民健康保険(国保)の財政支援の拡充
ロ 国保の保険者、運営等の在り方に関し、保険料の適正化等の取組を推進するとともに、イに掲げる措置により、国保の財政上の構造的な問題を解決することとした上で、国保の運営業務について、財政運営を始めとして都道府県が担うことを基本としつつ、保険料の賦課徴収、保健事業の実施等に関する市区町村の積極的な役割が果たされるよう都道府県・市区町村で適切に役割分担するために必要な措置
ハ 健康保険法等の一部を改正する法律(平成25年法律第26号)附則第2条に規定する所要の措置
② 保険料に係る国民の負担に関する公平の確保について次に掲げる措置
イ 国保及び後期高齢者医療制度の低所得者の保険料負担を軽減する措置
ロ 被用者保険者に係る後期高齢者支援金の全てを総報酬割とする措置
ハ 所得水準の高い国民健康保険組合に対する国庫補助の見直し
ニ 国保の保険料の賦課限度額及び被用者保険の標準報酬月額の上限額の引上げ
③ 保険給付の対象となる療養の範囲の適正化等について次に掲げる措置
イ 低所得者の負担に配慮しつつ行う、70歳から74歳までの者の一部負担金の取扱い及びこれと併せて検討する負担能力に応じた負担の観点からの高額療養費の見直し
ロ 医療提供施設相互間の機能の分担や在宅療養との公平の観点からの外来・入院に関する給付の見直し
(7) 次期医療計画の策定時期が平成30年度であることも踏まえ、(6)に掲げる必要な措置を平成26年度から平成29年度までを目途に順次講ずる。法改正が必要な措置については、必要な法律案を平成27年通常国会に提出することを目指す。
(8) (6)に掲げる措置の実施状況等を踏まえ、高齢者医療制度の在り方等について、必要に応じ、見直しに向けた検討を行う。
(9) 難病対策に係る都道府県の超過負担の解消を図るとともに、難病及び小児慢性特定疾患に係る公平かつ安定的な医療費助成の制度を確立するため、必要な事項について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる。
(10) (9)に掲げる必要な措置を平成26年度を目途に講ずる。このために必要な法律案を平成26年通常国会に提出することを目指す。
~社会保障制度改革「プログラム法案」骨子の内容①~はこちらから。
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