若者を「使い捨て」にするブラック企業への対応策を強化~安倍政権「日本再興戦略」の内容④~
9月に厚生労働省が約4000社を対象に重点的な監督実施
重大・悪質な違反企業は送検し企業名を公表
安倍政権の新たな成長戦略「日本再興戦略」(6月14日閣議決定)から、今回は、「若者・高齢者等の活躍推進」を紹介します。
日本再興戦略では、過重労働や賃金不払残業など若者の「使い捨て」が疑われる企業について、相談体制、情報発信、監督指導等の対応策を強化するとしています。
これを受けて、厚生労働省では、いわゆるブラック企業への取組強化について、本年9月を「過重労働重点監督月間 」として、労働基準監督署及びハローワーク利用者等からの苦情や通報等を端緒に、離職率が極端に高いなど、若者の「使い捨て」が疑われる企業等に対し、重点的な監督指導を実施します。
監督指導の結果、重大・悪質な違反が確認された企業等については、送検し、企業名を公表するとしています。
田村憲久厚生労働大臣は、この取組強化について、「若者が使い捨てにされている問題を野放しにしては、再興戦略どころか、日本の将来は無い。ブラック企業と言われているような、若者を使い捨てしている企業を無くしていきたい」(8月8日の閣議後会見)と話しています。
~安倍政権「日本再興戦略」の内容④~
●若者・高齢者等の活躍推進
全ての人が意欲さえあれば活躍できるような「全員参加の社会」の構築を目指す。特に、我が国の将来を担う若者全てがその能力を存分に伸ばし、世界に勝てる若者を育てることが重要であり、若者・女性活躍推進フォーラムの提言を踏まえつつ、成長の原動力としての若者の活躍を促進する。
○若者の活躍推進
・インターンシップに参加する学生の数の目標設定を行った上で、地域の大学等と産業界との調整を行う仕組みを構築し、インターンシップ、地元企業の研究、マッチングの機会の拡充を始め、キャリア教育から就職まで一貫して支援する体制を強化する。また、関係団体等の意見を踏まえつつ、インターンシップの活用の重要性等を周知し、その推進を図る。さらに、若者等が経済状況にかかわらず大学等で学ぶことができるよう、奨学金制度を充実する。
・就職活動から入社後の能力開発に至るまでの一貫した支援として、詳細な採用情報等を公開し積極的に若者を採用・育成する「若者応援企業」の普及拡大・情報発信の強化を図るほか、既卒3年新卒扱い、新卒応援ハローワーク等を通じた中小企業と学生とのマッチング強化、若手社員の訓練を行う中小企業団体に対する新たな支援、紹介予定派遣を活用した学卒未就職者への就職支援、及び就職後の定着への支援を行う。
・過重労働や賃金不払残業など若者の「使い捨て」が疑われる企業について、相談体制、情報発信、監督指導等の対応策を強化する。
・地域の中小企業等が、未来の地域経済を支える人材を共同で育成する仕組みを構築し、企業間での出向の円滑化や合同新人研修等を実施することに対する支援を行う。
・ビジネスコンテスト等も活用しながら起業の促進を図るため、ポータルサイトによる情報発信、専門家によるサポート体制の整備を推進するほか、クラウド・ファンディング等を活用した効果的な資金供給の在り方を検討する。
・わかものハローワークの充実、地域レベルの産学官コンソーシアムの組成による就職可能性を高める訓練コースの開発・実施等によるフリーター等の正規雇用化支援や、NPO 等による就労に向けた相談支援などニートの就労支援を実施する。
・学修時間の確保、留学等促進のための、2015 年度卒業・修了予定者からの就職・採用活動開始時期変更(広報活動は卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降に開始し、その後の採用選考活動については、卒業・修了年度の8月1日以降に開始)について、中小企業の魅力発信等、円滑な実施に向けた取組を行う。
・ハローワークの民間活用
・大学、大学院、専門学校等が産業界と協働して、高度な人材や中核的な人材の育成等を行うオーダーメード型の職業教育プログラムを新たに開発・実施するとともに、プログラム履修者への支援を行うなど、社会人の学び直しを推進する。また、高等専門学校について、地域や産業界との連携を深めつつ、社会や企業のニーズを踏まえた学科再編などを促進する。また、若者等の学び直しの支援のための奨学金制度の弾力的運用や雇用保険制度の見直し等を行う。
○高齢者等の活躍推進
・生涯現役社会の実現に向けて、高齢者の継続雇用に取り組む中小企業に対する職域開発等の支援を行うとともに、高齢者等の再就職支援の強化、地域の多様なニーズとのマッチングによるモデル的な就労促進の取組への支援等を実施する。
・障害者、難病患者、がん患者等の就労支援を始めとした社会参加の支援を推進する。
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