均等・均衡待遇について 【今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会 報告書素案】
――では、「第6 派遣労働者の待遇について」において
「均等・均衡待遇について」の見解が示された。
その詳細は、次のとおりとなっている。
第6 派遣労働者の待遇について
1 均等・均衡待遇について
派遣労働者の賃金等の待遇を確保するための仕組みとして、主として欧州の諸国で採用されている均等待遇を我が国で導入することが各方面から提言されている。しかしながら、前出の平成20年の研究会報告書(「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会報告書」(平成20年7月28日))にあるように、欧州諸国では企業を超えた職種別賃金が普及しているのに対し、我が国では職種別賃金が確立しておらず、正規雇用労働者の待遇は企業の内部労働市場で決定されている。一方、派遣労働者は一般には外部労働市場における派遣労働者の賃金を反映して待遇が決定されることが多い。そのため、派遣先の正規雇用労働者との比較において均等待遇を実現するには、比較対象となる派遣先の労働者や業務を位置付けにくいことや、同じ派遣元事業主に雇用されている派遣労働者同士の不均衡が生じ得ること等の課題が多い。
均衡待遇に関しては、平成24年の法改正により、派遣元に対して、派遣労働者と派遣先の労働者等との均衡考慮の配慮義務が課された。派遣労働者と派遣先の直接雇用の労働者が同様の業務に従事しているにも関わらず、派遣労働者という理由だけで待遇が低く抑えられていることは不合理であることから、上記の課題を踏まえつつも、今後とも均衡待遇の取組を進めていくべきである。均衡待遇を進めていくことは、派遣労働者の待遇の改善をもたらすだけではなく、派遣先にとっては、派遣料金の引上げ等の派遣労働者受入れコストの増加につながるため、待遇が低いことによる派遣労働者の安易な利用を抑制する効果があると考えられる。
一方で、派遣労働者の均衡待遇を更に進めていくには、派遣先の更なる協力が不可欠である。平成24 年の法改正で、派遣先には均衡配慮のための情報提供についての協力の努力義務が課せられた。ただし、派遣労働者の賃金の均衡待遇を図るための原資は派遣料金であり、派遣先の協力がなければ、派遣元の待遇改善努力にも限界がある。また、派遣先での業務遂行に密接に関連した教育訓練については、派遣先の協力が不可欠である。なお、派遣労働者への教育訓練は、派遣先にとっても業務遂行を円滑にするために必要なものである。さらに、食堂などの福利厚生施設の利用についても、派遣元で対応することは現実的でないことから、今後、派遣労働者の賃金、教育訓練、福利厚生施設の利用などの面でさらに派遣先の役割が期待される(厚生労働省職業安定局需給調整事業課「労働者派遣の実態に関するアンケート調査(派遣先調査)」(2012年12月実施)によれば、派遣先事業所で行っている派遣労働者の均衡待遇の確保のための取組みとしては、「派遣労働者が他の社員と同じように福利厚生施設を使えるようにしている」が65.5%と最も多く、「特に行っていない」と回答した事業所は3.7%となっている。また、派遣労働者のスキル向上のために行っている取組みとしては、「事業所でのOJT」が67.3%と最も多く、次いで「事業所の従業員と合同でのOff-JT」が30.2%となっており、「派遣労働者に教育訓練は行っていない」と回答した事業所は16.5%となっている。(いずれも複数回答))。
また、均衡待遇の配慮については、現行では、具体的にどのような配慮が行われているかを派遣労働者本人が知る手段が担保されていないことから、派遣労働者の納得性の向上の観点から、派遣元に対し、パートタイム労働法第13 条(待遇の決定に当たって考慮した事項の説明)のような説明義務を設けることも一つの方法として考えられる。
| 固定リンク
« 入職率 と離職率ともに14.8%に上昇 【平成 24 年「雇用動向調査」の結果】 | トップページ | 労働・社会保険の適用促進について 【今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会 報告書素案】 »
「お知らせ」カテゴリの記事
- 厚労省・第1回「労働市場における雇用仲介の在り方に関する研究会」を開催 IT化等による新しい事業モデル・サービスに対応した制度の在り方などを検討【令和3年1月6日】(2021.01.07)
- 令和三年 年頭所感 【田村憲久厚生労働大臣】(2021.01.05)
- 『労働基準広報』2020年12月1日号の特集は「政府のテレワーク関係『令和3年度予算概算要求』」(2020.11.25)
- 令和二年 年頭所感 渡辺由美子 子ども家庭局長(2020.01.08)
- 令和二年 年頭所感 宮嵜雅則健康局長(2020.01.08)
「労働者派遣法」カテゴリの記事
- 厚生労働省・労働者派遣事業関係業務取扱要領(平成28年11月2日以降)を公開!(2016.11.08)
- 厚生労働省・「労働者派遣事業関係業務取扱要領」(平成28年4月1日以降)を公表!(2016.04.19)
- 「第111回 労働政策審議会職業安定分科会」開催される ~雇用の分野における障害者の差別禁止、合理的配慮の提供義務に対応した派遣元指針・派遣先指針の改正告示案要綱が「おおむね妥当」と認められ労働政策審議会に報告される(2016.02.24)
- 日雇派遣の原則禁止の見直しや労働契約申込みみなし制度の撤廃求める~経団連・「2015年度経団連規制改革要望」~(2016.02.23)
- 第234回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会 ~ 改正障害者法の施行にあわせて派遣元・派遣先指針の改正案示される(2016.01.27)
「賃金」カテゴリの記事
- 「平成31年 就労条件総合調査」勤務間インターバル制度を導入している企業は3.7% 【厚生労働省】(2019.11.28)
- 厚生労働省・平成31年4月分の毎月勤労統計調査の結果確報を公表(2019.06.21)
- 「2018年度 決定初任給調査」の結果を発表(産労総合研究所)(2018.07.24)
- 厚生労働省が「黄」と「紫」の賃金引上げに向けた生産性向上の2冊の事例集を作成(平成30年5月17日)(2018.05.23)
- 不当解雇の金銭解決制度、「設計を検討すべき」にとどめる ~厚労省の検討会が報告書案~(20170529)(2017.05.30)
「経営」カテゴリの記事
- おすすめ!新刊書籍 「もう職場から“うつ”を出さない!」さくらざわ 博文 著 ―ストレスチェック時代の最新メンタル不調予防法(2016.11.22)
- 厚生労働省・平成28年熊本地震の発生に伴い「地域雇用開発奨励金」の特例措置(2016.10.19)
- 厚生労働省・「65歳超雇用推進助成金」創設へ~66歳以上の継続雇用制度の導入措置を実施した場合に一定額を助成~(2016.08.31)
- 大阪労働局と大阪信用金庫が「働き方改革にかかる包括連携協定」を締結します~労働局と金融機関との協定締結は全国初~(2016.07.25)
- 「社長目指す」新入社員は過去最低水準~日本生産性本部・新入社員「働くことの意識」調査結果~(2016.07.13)
「福利厚生」カテゴリの記事
- 「第107回 雇用保険部会」開催される!議題は高齢者、財政運営、求職者支援制度など(2015.11.11)
- 「特集/ケースで見る最近の年次有給休暇トラブルへの対応~勤務日数少ないアルバイトであっても年次有給休暇は取得できる」「人事大事の時代<事例編>(19)社員の活力増進を目指す「健康経営」を掲げる 残業削減など「働き方改革」が大きく前進~SCSK株式会社~」~労働基準広報2015年10月11日号の内容~(2015.10.08)
- 【新刊書籍】「労使で納得できる WG(ワーキング・グループ)式就業規則づくり」 【経営書院】(2014.10.21)
- 10月20日からマイカー通勤の非課税限度額が引き上げに~「片道55キロメートル以上」の区分も新設~(2014.10.17)
- 確定拠出年金Q&A 【厚生労働省】(2014.05.19)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント