改正労働者派遣法の注意点⑤ 【派遣契約の中途解除時への対応】
5回目は、【派遣契約の中途解除時への対応】についてです。
「派遣契約の中途解除に関する課題」としては、労働者派遣契約の中途解除に伴い、派遣労働者の雇用が失われることがあります。そこで、改正法では、派遣契約の中途解除に当たり講ずべき措置が明確化されました。
具体的には、派遣先の都合により派遣契約を解除する場合には、
派遣労働者の新たな就業機会の確保、休業手当等の支払いに要する費用の負担等の措置を講ずるよう、派遣先に対して義務化され、
派遣契約に、派遣契約の解除時に講ずる派遣労働者の新たな就業機会の確保、休業手当等の支払いに要する費用の負担等に関する事項を盛り込むことが明示されました。
上記の事項については、政省令委任事項はなかったため、印象が薄いと感じる方(そのような新しい義務が課されたの?という方)もおられるかもしれませんが、詳細については、9月19日に発表された新しい「労働者派遣事業関係業務取扱要領」に記載されています。
「業務取扱要領」には、
労働者派遣契約の解除に際して、派遣労働者の雇用の安定を図る観点から、当該労働者派遣契約の当事者である派遣元事業主及び派遣先が協議して次の事項等に係る必要な措置を具体的に定めること(法第29条の2、「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」第2の2の(2)(第8の23参照)及び「派遣先が講ずべき措置に関する指針」第2の6の(1)(第9の16参照))。
――とされています。
そして、①~④の事項が示されています。
① 労働者派遣契約の解除の事前の申入れ
派遣先は、専ら派遣先に起因する事由により、労働者派遣契約の契約期間が満了する前の解除を行おうとする場合には、派遣元事業主の合意を得ることはもとより、あらかじめ相当の猶予期間をもって派遣元事業主に解除の申入れを行うものとすること。
② 派遣先における就業機会の確保
派遣元事業主及び派遣先は、労働者派遣契約の契約期間が満了する前に派遣労働者の責に帰すべき事由以外の事由によって労働者派遣契約の解除が行われた場合には、当該派遣先の関連会社での就業をあっせんする等により、当該労働者派遣契約に係る派遣労働者の新たな就業機会の確保を図るものとすること。
③ 損害賠償等に係る適切な措置(派遣元事業主の休業手当等の支払いに要する費用の負担)
派遣先は、派遣先の責に帰すべき事由により労働者派遣契約の契約期間が満了する前に労働者派遣契約の解除を行おうとする場合には、派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ることとし、これができないときには、少なくとも当該労働者派遣契約の解除に伴い当該派遣元事業主が当該労働者派遣に係る派遣労働者を休業させること等を余儀なくされたことにより生じた損害の賠償を行わなければならないものとすること。
例えば、当該派遣元事業主が当該派遣労働者を休業させる場合は休業手当に相当する額以上の額について、当該派遣元事業主がやむを得ない事由により当該派遣労働者を解雇する場合は、派遣先による解除の申入れが相当の猶予期間をもって行われなかったことにより当該派遣元事業主が解雇の予告をしないときは30日分以上、当該予告をした日から解雇の日までの期間が30日に満たないときは当該解雇の日の30日前の日から当該予告の日までの日数分以上の賃金に相当する額以上の額について、損害賠償を行わなければならないものとすること。その他派遣先は派遣元事業主と十分に協議した上で適切な善後処理方策を講ずるものとすること。また、派遣元事業主及び派遣先の双方の責に帰すべき事由がある場合には、派遣元事業主及び派遣先のそれぞれの責に帰すべき部分の割合についても十分に考慮するものとすること。
④ 労働者派遣契約の解除の理由の明示
派遣先は、労働者派遣契約の契約期間が満了する前に労働者派遣契約の解除を行おうとする場合であって、派遣元事業主から請求があったときは、労働者派遣契約の解除を行った理由を当該派遣元事業主に対し明らかにするものとすること。
上記①~④については、何らかのアクションをおこせばよいというはけではなく、実際に結果が出るように取り組むことが求められるといえましょう。
例えば、②については、「新たな就業先を探したが見つからなかった」と言うだけでは措置を講じたと認められない可能性があります。
なお、これらの措置が定められていない、または、定められていても実際には講じられていないなどのケースについては、行政指導の対象になることも考えられます。
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