厚労省・第1回「労働市場における雇用仲介の在り方に関する研究会」を開催 IT化等による新しい事業モデル・サービスに対応した制度の在り方などを検討【令和3年1月6日】

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求人・求職サイトやアグリゲーター(おまとめサイト)、

人材紹介エージェントなどの多様化する人材サービスについて

「多様化、国際化、求職者保護」などをキーワードに

法的・制度的観点から専門的検討を行う

 

 厚生労働省は、令和3年1月6日、「労働市場における雇用仲介の在り方に関する研究会」(以下「研究会」)の初会合を開催した。

 研究会では、求人サイトなどのIT等を活用した人材サービスへの対応、人材紹介エージェントなどの有料職業紹介事業及び求人メディアなどの募集情報等提供事業などの適正・効果的運営のための制度などについて、「多様化、国際化、求職者保護」などをキーワードに法的・制度的観点から専門的検討を行う。今年4月までは関係者からのヒアリングを実施し、5月から論点整理に入る予定。

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研究会の初会合には、構成員として、

阿部正浩 中央大学経済学部教授

安藤至大 日本大学経済学部教授

大久保幸夫 リクルートワークス研究所 アドバイザー

鎌田耕一 東洋大学名誉教授

武田洋子 株式会社三菱総合研究所 政策・経済センター長

中田るみ子 三菱ケミカル株式会社 取締役常務執行役員

山川隆一 東京大学大学院法学政治学研究科教授

――の7名の学識経験者が出席した(五十音順・敬称略)。

  

 研究会では、新しい時代に対応した労働市場の整備と就労マッチングサービスの発展の観点から、多種多様となっている採用プロセスにおける人材サービスを明らかにした上で、我が国のこれからの雇用仲介制度の在り方を検討する必要があるため、労働市場における雇用仲介の在り方について、法的・制度的な観点から専門的な検討を行うこととしている。

 開催に当たって、田中誠二職業安定局長が「一人ひとりが自分のキャリアを大切にする意識が出てきた。企業もそれを意識しないと…。先生方には忌憚のない意見をいただきたい」を述べ、座長には鎌田耕一東洋大学名誉教授が選出された。

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 同省からは、まず、「労働市場における雇用仲介の現状」について、

ア)転職者の割合の高い産業ほど、広告を経由して入職する者が多い

イ)求人の年収帯を見ると、民間職業紹介事業者の取り扱うものが最も高い一方、ハローワークの取り扱う求人は年収の幅が狭く、おおむね220550万円の間となっている

ウ)民間職業紹介では、保健師・助産師・看護師を中心に専門的職業の求人が多い

エ)飲食関係・接客関係の求人は、コストの高い民間職業紹介よりもハローワークや求人メディアに多く見られる

オ)ハローワークを経由した就職件数が景気動向等を受け2012年度以降減少する一方で、民間職業紹介事業者を経由した就職件数は景気動向に関わらず増加している

カ)雇用仲介の中での単純な求人数では募集情報等提供事業者の規模が大きくなっている

キ)IT技術の進展により、アグリゲーター(おまとめサイト)や利用者DB、SNS(求人企業のダイレクト採用)など新しいサービスが登場している

――などがデータとともに示された。

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 その後には、全ての構成員が発言し、

 

国際的にみて日本の長期失業者の(割合が)高い

 

ITAIの進展によりアルゴリズムを主体としたマッチングが増加し、ブラックボックス化してしまうことをどう考えるか、どのように適正化していくか

 

求職者保護を第一に考えるべき

 

現在の状況は雇調金の影響がある

 

在職中に新しい仕事をみつけ雇用の継続を

 

仲介業はどこからお金をもらっているのか

 

他市場の仲介業を参考にする

 

求職者が仲介業の仕組みを理解していないケースが。事業の特性をみせていく(べき)

 

人材ビジネスは20年で激変した。プレイヤーが変化した。プラットフォーマー、SNS事業者などが

 

1998年に大改革を行った。ハローワークと民間の役割をわけるテーマだった

 

一言で言うと多様化。様々な雇用仲介が拡大している。区分が曖昧になっている。どう整理していくのか。法規制が全く違う。基本は企業と労働者だが仲介事業者の責任は決して少なくない

 

高齢者をどう考えるか

 

転職者が安心して働ける仕組みを

 

就職弱者に雇用機会を本当に提供できているか

 

将来を見据えてどう考えていくか?

① 労働市場の真の目的は何か?人手不足とAIに雇用が奪われるとの相反する意見があるが、問題はミスマッチにある。タスクの変化に対して、変わっていかないと雇用に行き着かない。コロナによりその傾向は加速する

② ではどうすればいいか?

FLAP(フラップ)が必要

F(ファインド)気づきを正して示す

L(ラーン)学び

A(アクト)行動する

P(パフォーマンス)活躍する

フラップを回していくには、マッチングのバラバラな情報をどう共通言語化していくか

 

新しいサービスが出てくることを阻害してはならないが、個人情報、人権に配慮を

 

自分はこの環境下で何のために働いているか?

今はオンライで簡単に面接できる

 

企業側の問題意識として、

①非常に求人には手間がかかる(属人的で時間がかかる)

②インターンシップはマッチングには重要。まずは体験!が増えてくるのでは(出向など)

③仲介事業者の料金が高い。使いにくい。着手金がある

④マーケットに出てくる人が限定されている。登録者しか出てこない。社内失業状態の人が出てくればいいのだが

 

法の目的、マイナス面の除去にプラス面の促進を理念に追加することを

 

市場がより機能するように、労働市場を高度化していくことが課題に

 

国際化への対応を入れていく必要が

 

他国の状況を把握できれば

 

ILOの条約も注目していく

 

求人誌には必ずしも雇用労働者に限らない求人が載っている。どう対応するかという視点も

 

日本は最も転職により賃金が上がらない国

転職すればするほど上のキャリアに上がれない

 

日本の転職者は最も海外に行っていない。ドメスティック

 

ちょっとマッチング機能が弱すぎないか?

どうやってその機能を高めていくか議論を

 

避けられるミスマッチと避けられないミスマッチがある

避けられるミスマッチを避けていない

情報提供を

どう避けられるミスマッチを削減していくか?

 

転職して満足している者も6割以上いる

 

求職者のニーズ、属性のデータを

30代、40代、新卒者のデータがあれば(事務局にお願いしたい)

 

――などの意見が出ていた。

 

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 そして、検討事項として、

①IT化等による新しい事業モデル・サービスに対応した制度の在り方

②有料職業紹介事業及び募集情報等提供事業等をより適正かつ効果的に運営するための制度の在り方

③働き方や職業キャリアの在り方が多様化する中で、需要サイドと供給サイド双方にとって機能的な労働市場を実現するための制度や官民連携の在り方

――の「主な論点(案)」が示されて、了承された。

 今後は、「求人・求職サイト」や「人材紹介エージェント」についての議論も集中して行われる見通し。

 

 検討会では、令和3年2月から4月に関係者((募集情報等提供事業者、職業紹介事業者、有識者等)からのヒアリングを実施し、5月からは、論点整理を行い具体的な議論が行われ、年内のそう遅くない時期にはとりまとめが行われるものとみられる。

 初会合の締めくくりに、鎌田座長は、「多様化、国際化、(個人情報の保護などの)求職者の保護などのキーワードが出てきた。利用者が安心して利用できる雇用仲介事業者(の在り方)を…」との旨を述べていた。

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2021年1月 5日 (火)

令和三年 年頭所感 【田村憲久厚生労働大臣】

年頭所感

 

(はじめに)

令和三年の新春を迎え、心よりお慶び申し上げます。本年も何とぞよろしくお願い申し上げます。

厚生労働大臣に再び就任し、三か月余りが経ちました。この間、国民の皆様の安全・安心の確保に万全を期すべく努力してまいりました。引き続き、私自身が先頭に立ち、厚生労働省一体となって様々な課題に全力で取り組んでまいります。

 

(感染症対策等)

取り組むべき喫緊の課題は新型コロナウイルス感染症の対策です。直近の感染状況ですが、依然として厳しい状況が続いています。厚生労働省としても、国民の皆様の命と健康を守るため、引き続き最優先で取り組んでまいります。

昨年来の対策の経験を活かして、感染リスクや重症化リスクに応じたメリハリの利いた感染対策を講じるとともに、医療機関への支援や保健所の体制強化、検査体制の確保等を進めてまいります。加えて、行政検査については、感染拡大防止のため、高齢者施設等への積極的な検査に引き続き取り組んでまいります。

 季節性インフルエンザによって、発熱患者等が大幅に増え、検査や医療の需要が急増する場合に備え、身近な医療機関に直接電話相談し、地域の診療・検査医療機関を受診する仕組みの整備を都道府県とともに行いました。

併せて、病床の確保については、各都道府県の病床・宿泊療養施設確保計画に基づき、引き続き都道府県のご協力をいただきながら、医療提供体制の整備を図ってまいります。

感染拡大地域の保健所への国からの専門家派遣や専門人材等の都道府県間の広域的な応援派遣の調整を行うなど、引き続き機動的に現場を支える体制を強化してまいります。

ワクチンについては、本年前半までに全ての国民の皆様に提供できる数量の確保を目指すとともに、昨年施行された予防接種法及び検疫法の改正法に基づき、円滑、迅速な接種を実施するための体制の整備等に取り組みます。

また、新型コロナウイルス感染症対策について確実な取組を推進するため、制度改正も見据えて議論を進めます。併せて、国際的な人的往来の段階的な再開に向けて、空港等における検疫体制を強化してまいります。

加えて、感染症の影響を踏まえた産業政策と、雇用政策が、車の両輪となり実施されることが必要です。昨年十二月にとりまとめた経済対策に基づき、雇用の維持・確保や、新たな分野への円滑な労働移動の支援、求職者向け支援の拡充等の雇用対策パッケージに取り組んでまいります。

今年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会は、人類がウイルスに打ち勝った証として開催するものです。日本国内の皆さんはもちろん、海外から集まるアスリートや観客にも安全・安心な大会を実現するため、関係省庁と連携し、万全を期してまいります。

 

(災害への対応等)

 近年、台風や記録的な大雨による甚大な被害が全国各地で発生しております。改めまして亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災された皆様にお見舞い申し上げます。被災された方々が一日も早く安全・安心な生活を取り戻せるよう、対策等を講じるとともに、相次ぐ自然災害から国民生活を守れるよう、「防災・減災・国土強靱化のための五か年加速化対策」として、重点的かつ集中的に医療・福祉・水道施設等の強靱化に取り組みます。

 また、本年は東日本大震災の発生から十年という節目となります。私自身も復興大臣であるとの強い意識の下、被災者の心のケア、医療・介護提供体制の整備、雇用対策などに全力で取り組みます。

 

(全世代型社会保障制度への改革)

全世代型社会保障検討会議において「全世代型社会保障改革の方針」が取りまとめられ、昨年末に閣議決定されました。

この方針に沿って、全世代対応型社会保障制度の構築のため、不妊治療の保険適用や待機児童の解消といった少子化対策、後期高齢者の医療費の窓口負担割合の見直し等の医療制度改革を進め、次期通常国会に関連法案の提出を目指します。

 

(地域医療体制の整備、地域包括ケアシステムの構築等)

医療分野では、今般の新型コロナウイルス感染症対応で得られた知見を踏まえつつ、人口構造の変容に伴う地域の医療ニーズの変化に対応した病床機能の分化・連携を目指す「地域医療構想」、医療現場における長時間労働の是正を目指す「医師の働き方改革」、医師の適切な配置により地域間、診療科間の医師偏在解消を目指す「医師偏在対策」を一体的に進めます。また、良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制を構築する観点から、次期通常国会に関連法案の提出を目指します。さらに、オンライン診療の在り方について、安全性と信頼性をベースに検討を進めていきます。

また、本年四月に予定されている介護・障害福祉サービス等の報酬改定による対応など、新型コロナウイルス感染症下においても、地域において継続的に介護・障害福祉サービス等が提供されるよう、しっかりと支援してまいります。

 

(子ども・子育て支援)

不妊治療への支援については、昨年末に策定した工程表に基づき、保険適用に向けた検討を進めます。また、保険適用の実現までの間の不妊治療に対する助成金の大幅な拡充や、不妊治療を受けやすい職場環境整備の推進等を行ってまいります。加えて、不育症患者や小児・AYA世代のがん患者等に対する支援を推進します。

待機児童解消について、昨年末に定めた「新子育て安心プラン」に基づき、保育の受け皿確保に取り組んでまいります。

また、全ての子どもたちが夢や希望を持てる社会を目指し、児童虐待防止対策や子どもの貧困対策に取り組みます。

 

(働き方改革の推進、多様な就労・社会参加の促進)

一億総活躍社会の実現に向けて、働き方改革関連法の円滑な施行等に努めるとともに、リカレント教育をはじめとした人材育成の強化、女性・若者・高齢者・障害者等の就労支援等に取り組んでまいります。

また、男性の育児休業取得促進のため、出生直後の休業の取得を促進する新たな枠組みの導入や、個別の労働者に対する休業制度の周知の措置を事業主に義務付けるなど、審議会での議論を踏まえ、次期通常国会に関連法案の提出を目指します。

併せて、最低賃金の全国的な引上げに取り組みます。

 

(難病対策等)

難病対策について、法施行後五年の検討規定に基づき、関係審議会において議論を進めるとともに、総合的な支援策を推進します。また、B型肝炎ウイルスに感染した方々への給付金の支給の請求の状況等を勘案し、当該給付金の請求期限を延長する等の措置を講ずるため、次期通常国会に関連法案の提出を目指します。

 

そのほか、社会経済の変化に対応しつつ、厚生労働省に対する要請に適時・的確に応えることができるよう、医薬品・医療機器施策、年金制度改革、社会福祉、援護施策等、山積する課題に果断に取り組んでまいります。

 

 おわりに、本年が、国民の皆様お一人おひとりにとって、実り多き素晴らしい一年となりますよう心よりお祈り申し上げ、年頭に当たっての私の挨拶といたします。

 

令和三年元旦

厚生労働大臣 田村 憲久

 

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本年もどうぞよろしくお願いいたします 『労働基準広報』編集部

2021 あけましておめでとうございます
昨年はたいへんお世話になり誠にありがとうございました
皆様のご健康とご多幸をお祈りいたします
本年もどうぞよろしくお願いいたします

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『労働基準広報』編集部
(1月5日から令和3年の業務を開始いたしました。)

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2020年11月25日 (水)

『労働基準広報』2020年12月1日号の特集は「政府のテレワーク関係『令和3年度予算概算要求』」

労働基準広報』2020年12月1日号の特集は

政府のテレワーク関係『令和3年度予算概算要求』

地方のサテライトオフィス整備等支援し東京圏一極集中の是正図る交付金を創設

――を掲載!

 

 テレワークに関しては、政府全体でその普及促進に当たっている。内閣官房IT室が政府目標を設定して、総務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省が連携して普及展開を図っているが、コロナ禍における感染拡大の防止の観点からも、政府の「骨太方針2020」や「成長戦略フォローアップ」(令和2年7月17日閣議決定)などに、その導入支援を強力に推進することなどが盛り込まれた。
 令和2年10月26日の所信表明演説の中で、菅総理がテレワークの普及促進に意欲的な姿勢をみせるなど、今後、政府のテレワーク関係施策は、その加速度を増していくものとみられる。令和3年度予算の概算要求額として、厚生労働省では、「良質な雇用型テレワークの導入・定着促進」に約31億円を、内閣府地方創生推進室は、「地方創生テレワーク交付金の創設」に150億円を計上した。
 ここでは、厚生労働省をはじめとする関係府省のテレワーク関連施策の令和3年度予算概算要求などをみていく。

 

ニュースは、

◆ 大阪医科薬科大学・メトロコマース事件最高裁判決/賞与・退職金不支給は不合理と認められない

◆ 日本郵便事件で最高裁判決/扶養手当や年末年始勤務手当などの格差は不合理

◆ 令和元年度新卒者内定取消し/79事業所で201人が内定取消うち102人が就職済

◆ 「もにす認定制度」で初の認定/「有限会社 利通」など優良中小事業主の3社を認定

――などを掲載!

 

 

 

北海学園大学法学部教授・弁護士 淺野高宏氏の

「転ばぬ先の労働法」

第55講のテーマは、

ウイズ・コロナ時代の労働法の論点《1》テレワーク②

企業がテレワークに適した雇用形態や業務を熟考し選択することが重要

テレワークでも労働時間は管理しなければならないが、労働時間管理を厳格に考えてしまうと、テレワークのメリットを全く活かしきれない事態にもなりかねない。指揮命令下の労働といっても、日常的な人事管理が要らない業種や職種がテレワークに適しているので、これからは、自社のどのような仕事がテレワークに向くかということを企業が熟考し選択していくことが問われているといえよう。

テレワークを導入するのであれば、使用者には、「多少サボるのは織り込み済みと割り切る覚悟」や「従業員を信頼して細かいことには目くじらを立てない度量の広さ」も必要だろう。

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デリバリー配達員の交通事故防止で通知 ~飲食物配達途中の交通事故防止の注意喚起を依頼(令和2年10月26日付 厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課長)

 厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課長は、令和2年10月26日、自転車及び原動機付自転車を用いた飲食物のデリバリーにおける交通事故防止について、都道府県労働局労働基準部長に通知した(令和2年10月26日 基安安発1026 第2号)。

 

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 それによると、新型コロナウイルス感染防止の影響により、自転車または原動機付自転車を用いて飲食物の商品を消費者に配達するデリバリーサービスへのニーズが高まっている中、①デリバリーの途中で、配達員が交通事故でけがをしたり、通行人に危険を及ぼしたりすることがあり、配達中の交通事故を防止することが課題となっていること、②飲食物のデリバリーサービスのプラットフォームを提供する事業者に対し自社の配達員またはプラットフォームサービスを利用する配達員へ交通事故防止のための具体的な注意喚起等の取組を行うよう関係団体に対し傘下会員への周知を依頼したこと、③交通事故防止のポイントをまとめたリーフレットをとりまとめ、事業者及び配達員に対する周知啓発に活用するよう促すこととしたこと――を通知している。

 

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 なお、関係団体に対する通知は、配達員の就業の状況は様々で、労働者ではない配達員も対象に含め事故防止の注意喚起が行われるよう、事業や交通事故防止を所管する省庁(内閣府、警察庁、農林水産省、国土交通省)との連名となっている(令和2年10月26日 基安安発1026 第1号等)。

 

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2020年1月 8日 (水)

令和二年 年頭所感 渡辺由美子 子ども家庭局長

令和二年 年頭所感

 

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厚生労働省子ども家庭局長 渡辺 由美子

 

謹んで、新年の御祝辞を申し上げます。

皆様には、日頃より子ども・子育て支援の推進に御理解と御協力を賜り、厚く御礼申し上げます。

 

さて、昨年四月時点の待機児童数は、一万六千七百七十二人と、調査開始以来最少の調査結果となりました。しかしながら、現在も保育所等に児童を預けられない方がいらっしゃる事実を真摯に受け止め、引き続き、各自治体における待機児童の特性に応じた、きめ細やかな支援を行ってまいります。あわせて、「子育て安心プラン」に基づき、二〇二〇年度末までに三十二万人分の保育の受け皿整備に取り組みます。

また、保育人材の確保を更に進めてまいります。保育士の処遇改善については、二○一三年度以降、月額四万一千円、約十三パーセントの改善を実現しました。これに加えて、技能・経験に応じた月額最大四万円の改善も行っております。さらに、保育士資格の取得促進、就業継続のための環境づくり、離職者の再就職の促進について、引き続き、総合的に取り組んでまいります。

昨年十月から実施している幼児教育・保育の無償化については、関係省庁とも緊密に連携し、円滑な施行に努めるとともに、保育の質の確保・向上についても一層取り組んでまいります。

 

放課後児童対策については、子どもの小学校入学後に仕事を辞めざるを得なくなる「小1の壁」を打破するとともに、次代を担う人材を育成するため、「新・放課後子ども総合プラン」に基づき、二〇二三年度までに約三十万人分の更なる受け皿の整備や育成支援の内容の向上に取り組んでまいります。あわせて、放課後児童支援員の処遇改善等を通じた人材の確保と子どもへの質の高い支援を実現するための施策の充実を図ります。

 

子どもたちの健やかな成育を確保するため、昨年十二月に施行された成育基本法に基づき、成育医療等協議会を設置し、成育医療等基本方針の策定に向け、関係省庁と連携して検討を進めてまいります。

また、安心して妊娠、出産、子育てができる環境づくりに向けて、同法に基づき、妊娠期から子育て期まで切れ目ない支援を提供するため、二〇二〇年度末までに「子育て世代包括支援センター」の全国展開を進めるとともに、昨年十一月に成立した母子保健法の改正法を踏まえ、産後ケアの充実を図ります。また、若年妊婦等や多胎家庭、不妊治療への支援等にも取り組みます。

さらに、乳幼児健診等の健診情報の利活用について、骨太の方針二〇一九に基づき、二〇二〇年六月の運用開始に向けた取組みを推進してまいります。

 

児童相談所における児童虐待に関する相談対応件数は年々増加し、昨年度は約十六万件となりました。子どもの命が失われる痛ましい事件も後を絶たず、児童虐待の現状は依然として深刻な状況が続いています。

児童虐待の防止については、子どもの命を守ることを最優先に、全力を尽くしてまいります。具体的には、昨年六月に成立した児童福祉法等の改正法や昨年三月に決定された「児童虐待防止対策の抜本的強化について」等に基づき、保護者等による体罰の禁止、児童福祉司等の増員や児童相談所の設置基準の策定などの児童相談所の体制強化・設置促進、転居時の情報提供やDV対策との連携といった関係機関の連携強化などに取り組みます。

 

虐待などの事情により、親元で暮らせない子どもたちも、温かい家庭的な環境で育まれるようにする必要があります。里親のなり手を増やすため、里親制度の広報啓発や里親家庭に対する相談・援助体制の充実に努めます。また、児童養護施設等の小規模・地域分散化や職員配置基準の強化などを推進してまいります。

 

子どもの貧困の問題に対しては、昨年十一月に閣議決定された「子供の貧困対策に関する大綱」等に基づき、全ての子どもたちが、置かれた環境に左右されることなく、夢や希望を持って健やかに育っていくことができる社会の構築を目指していく必要があります。今後、新たな大綱を踏まえ、支援が届きにくい家庭の早期発見や特に厳しい経済状況にあるひとり親家庭等の支援を含め、関係施策の一層の充実に向けてしっかりと取り組んでまいります。

 

なお、東日本大震災等により被災した子どもの心のケアについても、引き続き支援を実施してまいります。

 

本年が皆様にとりまして幸多き年となりますよう御祈念申し上げ、新年の御挨拶とさせていただきます。

    

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令和二年 年頭所感 宮嵜雅則健康局長

令和二年 年頭所感

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厚生労働省健康局長 宮嵜 雅則

 

新年を迎えるに当たり、謹んでご挨拶を申し上げます。

皆様方には日頃から健康行政に対して格段のご理解とご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。

 

健康局は、人生一〇〇年時代を見据え、健康寿命の延伸を図り、国民一人ひとりができるだけ長く、元気に暮らすことができるよう、健康づくり、疾病の予防や重層化予防、健康危機管理対応などを担っています。今年7月のオリンピック・パラリンピックの開催に伴う訪日外国人の増加や、生産年齢人口の減少が加速化する二〇四〇年を展望し、健康寿命の延伸を図ることで社会保障の担い手を確保していかなければならないことを考えると、当局は、個人の生活のみならず、社会保障制度の基盤づくりや国家プロジェクトへの対応においても重要な役割を担うこととなり、本年は、いっそう気を引き締め、健康行政の舵取りに当たっていかなければならないと考えています。

 

昨年は、台風十五号や台風十九号など、多くの災害が発生しました。災害時こそ保健衛生が重要です。災害発生時には、自治体との連携を強化し、住民の皆様の健康の保持を支援するため、災害時健康危機管理支援チーム(DHEAT)や保健師等の応援派遣の調整を迅速に実施するなど、地域における健康危機管理について万全の体制を期すよう取り組んでいきます。

 

感染症対策については、二〇一八年から、コンゴ民主共和国でエボラ出血熱の流行が続いており、世界保健機関(WHO)が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」に該当すると宣言しています。感染症対策は国境を超えた、かつ、国内での徹底した対応が必要になります。引き続き、感染症に関する正しい知識や予防接種などの国民への普及啓発のほか、感染症発生時に迅速かつ適切な対応が取れるよう対策に万全を期していきます。

 

結核については、結核の高まん延国の出生者が日本滞在中に結核を発症する事例が増加していることを踏まえ、結核を発病していないことを確認する入国前の結核スクリーニングの運用開始に向けて、法務省、外務省など関係省庁と連携して取り組んでいきます。

 

風しんについては、二〇一八年十二月にとりまとめた追加的対策に基づき、抗体保有率が約八十%と他の世代に比べて低い、現在四十歳から五十七歳の世代の男性について、予防接種法に基づく定期接種の対象とし、二〇二二年三月まで全国で原則無料で抗体検査及び定期接種を実施しています。事業者健診の機会等を利用して抗体検査を受けられる環境を整えることや、対象者本人や周囲の方に啓発を図ることで、二〇二〇年七月までに、まずは当該世代の男性の抗体保有率を八十五%以上に引き上げることを目指します。

 

薬剤耐性(AMR)対策については、国民や医療従事者に対する普及啓発活動や医療従事者向けガイドラインの見直し等を通じて抗菌薬適正使用の取組強化を図るとともに、令和二年度診療報酬改定で小児外来診療における抗菌薬の適正使用を評価する対象年齢の拡大を検討しています。また、国際協力の観点から、今年二月には、世界保健機関西大西洋事務局(WPRO)との共催で第三回AMRワンヘルス東京会議の開催を予定しており、アジア諸国で一丸となってAMR対策を進めていきます。

 

東京オリンピック・パラリンピックに向けては、昨年八月にとりまとめられた「東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた感染症対策に関する推進計画」に基づき、海外における感染症の発生動向を踏まえた検疫体制を強化するとともに、国内で発生した感染症に関するサーベイランス機能の強化に引き続き関係省庁や世界の国々とも連携して取り組んでいきます。

 

予防接種施策については、厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会において、近年の諸課題を踏まえ、予防接種の一層の信頼性向上等に向け、引き続き総合的な検討を行っていきます。また、ロタウイルスワクチンについては、同分科会において定期接種に位置づけることとされたことから、本年十月からの円滑な施行に向け取り組んでいきます。

 

受動喫煙対策については、二○二○年の東京オリンピック・パラリンピック等を契機に、国民の健康増進を一層図るため、本年4月の改正健康増進法の全面施行に向けた準備や普及啓発の促進等を進め、望まない受動喫煙のない社会の実現を目指します。

 

生活習慣病対策については、「健康日本21(第二次)」の中間評価を踏まえ、最終年度である二〇二二年度までに目標が達成できるよう、健康無関心層を含めた疾病の発症予防や重症化予防に向けた取組をさらに推進していきます。上昨年5月に厚生労働省の「二〇四〇年を展望した社会保障・働き方改革本部」においてとりまとめた「健康寿命延伸プラン」に基づく取組も着実に進めていきます。次期健康づくり運動を見据えた国民健康・栄養調査の実施や、フレイル対策も視野に入れた新たな食事摂取基準を活用した取組、国民の健康を支える保健師や管理栄養士等の更なる育成にも取り組んでいきます。

また、二〇二〇年に開催予定の栄養サミットでは、我が国の栄養政策に関する経験や知見を国際社会と共有し、栄養に関する更なる国際貢献に取り組んでいきます。

さらに、PHRについては、国民・患者の保健医療情報として、まずは健康(健診)等情報について、本人自身が予防や健康づくりに活用するとともに、それを患者の同意のもとに医療・介護現場で役立てる仕組みの構築に向けて取り組んでいきます。

 

がん対策については、第3期のがん対策推進基本計画に基づき、がん検診の受診率向上、がんゲノム医療提供体制の強化等に取り組むとともに、同計画について、今年、中間評価を実施する予定です。また、企業及び医療機関とそれらをつなぐコーディネーターによるトライアングル型のサポート体制の構築など、がんになっても自分らしく生きることのできる地域共生社会の実現を目指します。

 

循環器病対策については、昨年十二月に施行された「循環器病対策基本法」に基づき、循環器病対策推進基本計画を定め、予防や発症直後からリハビリを経て社会に復帰するまでの幅広い対策を推進していきます。腎疾患対策については、昨年から開始した慢性腎臓病診療連携構築モデル事業等を活用し、腎疾患対策の都道府県における好事例の横展開等を推進していきます

 

アレルギー疾患対策については、アレルギー疾患対策基本指針を踏まえ、都道府県における拠点病院の整備を進め、地域の実情に応じた対策を推進します。リウマチ対策については、平成三十年十一月に取りまとめられたリウマチ等対策委員会報告書を踏まえ、一層の対策を進めていきます。

 

肝炎対策については、平成二十八年六月に改定した肝炎対策基本指針に基づき、肝硬変、肝がんへの移行者を減らすことを目標に、肝疾患治療に対する医療費助成や肝炎検査の体制整備、肝がん・重度肝硬変の治療研究と患者の支援などを総合的に推進していきます。

 

B型肝炎訴訟については、特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法に基づき、和解手続が適正かつ迅速に進むよう、引き続き取り組んでいきます。

 

難病・小児慢性特定疾病対策については、昨年五月から、法施行後五年の検討規定に基づき、関係審議会において、医療費助成にとどまらず、医療提供体制の整備や治療方法の開発に向けた疾病の調査・研究、就労支援の充実、小児慢性特定疾病児童等に対する自立支援など幅広い事項について検討を進めており、その結果を踏まえ、必要な対策を講じてまいります。

 

 

原爆被爆者対策については、原爆投下から75年を迎える中で、原爆症の認定について引き続き迅速な審査に努めるなど、原爆被爆者の方々への支援を進めていきます。

 

臓器移植対策については、臓器提供施設間の連携構築などの体制整備に取り組むとともに、臓器提供に関する意思表示を促すための普及啓発を進めてまいります。造血幹細胞移植対策については、患者の疾病の種類や病状に応じ適切な移植術を選択し、実施できる医療体制を整備することにより治療成績の向上を図るとともに、移植後の患者の長期フォローアップ体制を充実させるための施策を推進していきます。

 

最後に、ハンセン病対策については、安倍総理の熊本地裁判決を受け入れる決断を契機に、原告団や弁護団の皆様との協議や、議員懇談会のご尽力の下、先の臨時国会で関連法が成立しました。厚生労働省としても、かつて採られた施設入所政策の下で、ハンセン病の元患者のみならず、ご家族の皆様も、偏見と差別の中で、長年にわたり多大の苦痛と苦難を強いられてきたという事実を深刻に受け止め、関連法に則り、昨年十一月に施行されたハンセン病元患者のご家族への補償制度の着実な実施に万全を期してまいります。あわせて、ハンセン病元患者の方々の社会復帰の支援や、元患者とそのご家族の名誉の回復、家族関係の回復の支援及び偏見・差別の解消などに全力で取り組みます。

 

国民一人ひとりが健康で質の高い生活を安心して送り、それぞれの能力を発揮できる社会の実現に向け、これらの課題のすべてに真摯に取り組むことをお誓い申し上げ、私の新年の挨拶とさせていただきます。

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令和二年 年頭所感 高橋俊之年金局長

新年を迎えて(年頭御挨拶)

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厚生労働省年金局長 高橋 俊之 

 

令和二年の新春を迎えるに当たり、謹んでお慶び申し上げます。

また、日頃からの年金制度・事業運営へのご理解とご協力に、厚く御礼を申し上げます。

近年は、働き方の多様化、平均余命の伸長による高齢期の長期化が進んでおり、現役世代の人口が減少する一方で、高齢者や女性の就業率が上昇し、これまでよりも長く多様な形で人々が就労する社会となっています。こうした時代の変化を年金制度に反映し、長期化する高齢期の経済基盤の充実を図ることができるよう、制度の見直しを行っていくことが必要です。

公的年金については、昨年八月に発表した財政検証結果では、現行制度でも、経済成長と労働参加が進むケースでは、引き続き所得代替率五十パーセント以上を確保できることが確認されました。また、財政検証で実施したオプション試算では、被用者保険の適用拡大等が、更に年金水準を充実させることが明らかとなりました。

これを踏まえ、①多様な就労を年金制度に反映する短時間労働者等への被用者保険の適用拡大、②就労期間の延伸による年金の確保・充実のための在職老齢年金制度の見直しや、在職定時改定の導入、年金受給開始時期の選択肢の拡大、③その他の制度改正・業務運営改善事項について、社会保障審議会の年金部会において、議論を行うとともに、与党の年金委員会等でご議論をいただきました。本年は、その議論の結果等を踏まえ、年金制度改正法案を、令和二年通常国会へ提出してまいります。

こうした制度改正には、国民の皆様のご理解とご納得が不可欠です。年金制度の役割や意義、制度改正案の内容や必要性について、分かりやすい説明に努めます。また、国民の皆様がご自身の年金をご理解していただくことができるよう、分かりやすい通知類やホームページの改善等、年金広報の充実に取り組んでまいります。

老後の生活についての国民の皆様の希望やニーズは多様であり、公的年金が老後生活の基本を支えるとともに、それぞれのご希望やニーズに対応する私的年金の普及、促進が重要です。企業年金・個人年金については、確定拠出年金の加入可能要件の見直しや、受給開始時期の選択肢の拡大、中小企業向け制度の対象範囲の拡大、手続の改善等について、社会保障審議会の企業年金・個人年金部会において、議論を行ってまいりました。また、与党のご議論を経て、税制上の措置の要望が認められました。これらを踏まえ、公的年金とともに、制度改正法案を、今通常国会に提出してまいります。

年金積立金の運用については、専ら被保険者の利益のために、長期的な観点から、安全かつ効率的に行うこととされており、二〇〇一(平成十三)年度の自主運用開始以来、昨年九月末までに、累積で六七・九兆円の運用収益を確保しております。今年四月から開始するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の次期中期目標・中期計画に則り、引き続きGPIFの業務が適切に運用されるよう、取り組んでまいります。

年金事業の運営については、厚生労働省と日本年金機構の一体的な連携の下、昨年三月に策定した第三期中期目標・中期計画に基づき、国民年金保険料の収納対策、厚生年金保険の適用促進、お客様へのわかりやすい情報提供、迅速で正確な事務処理、効率的効果的な業務運営(ビジネスプロセス改革)、情報システムの改善等に着実に取り組んでまいります。また、年金生活者支援給付金制度については、昨年十月に施行されたところであり、引き続き着実な実施に努めてまいります。

社会保障協定については、昨年七月にスロバキア、九月に中国との協定が発効し、これまでに協定が発効した国の数は二十カ国となりました。また、昨年四月にはスウェーデン、九月にはフィンランドとの協定が署名されましたが、同協定の早期発効を目指し、引き続き両国政府とも協力しつつ作業を進めていきます。さらに、現在交渉や協議を行っている三カ国を含め、今後とも、協定締結国の一層の拡大に向けて取り組んでまいります。

年金制度には、取り組むべき多くの課題がありますが、長期的な視野に立って全力で取り組んでいく所存です。結びに、本年が皆様方にとって実りある年となることを祈念いたしまして、御挨拶といたします。

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令和二年 年頭所感 定塚由美子人材開発統括官

年頭所感

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厚生労働省人材開発統括官 定塚 由美子

 

 

 謹んで新春の御挨拶を申し上げます。

 令和二年の年頭に当たり、日頃からの人材開発行政への多大なる御理解と御協力に御礼を申し上げますとともに、所信の一端を述べさせていただきます。

 

 少子高齢化が進展し、人生百年時代を迎える中、第4次産業革命による技術革新に対応しつつ、全ての方がその能力を存分に発揮できる社会を実現することが重要です。

 このためには、個々人の主体的なキャリア形成をすすめるとともに、生産性の向上を図っていくことが不可欠であり、幾つになっても、誰にでも学び直しと新しいチャレンジの機会を確保するリカレント教育の充実や、高齢期を見据えたキャリア形成支援等を推進していく必要があります。

 また、雇用環境が厳しい時期に就職活動を行ったいわゆる就職氷河期世代の方々への支援は、我が国の将来に関わる、社会を挙げて取り組むべきまったなしの課題であり、不本意ながら不安定な仕事に就いている方、長期間無業の状態にある方、また、社会参加に向けた支援を必要とする方など、個々の様々な状況に応じたきめ細かな支援を行い、働くことや社会参加を支援していく必要があります。

 本年も、このような重要課題を踏まえ、人材開発行政に寄せられている期待を受け止め、働く方々をとりまく社会・経済情勢の変化に対応し、様々な方々がその能力を十分に発揮できるよう、人材開発政策を推進してまいります。

 

 まず、公的職業訓練については、地域、産業等のニーズに応じた多様な訓練機会を提供するため、都道府県労働局、都道府県、(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構、民間教育訓練機関の連携を更に強化し、効果的に実施してまいります。特に、人手不足が顕著な中小企業等に対し、労働者への職業訓練を通じた生産性向上のための支援を引き続き実施してまいります。

 また、障害者職業能力開発校等における職業訓練の着実な実施を通じて、障害者の職業能力の向上にも取り組んでまいります。

 更に、民間教育訓練機関における職業訓練の質の向上を図るため、引き続き、職業訓練サービスガイドラインの普及に努めるとともに、「職業訓練サービスガイドライン適合事業所認定」制度の一層の活用促進を図ってまいります。

 こうした多様な公的職業訓練については、より多くの方々にその存在、機能をご理解いただき、ご活用いただけるよう、愛称(ハロートレーニング)・キャッチフレーズやロゴマークも活用して積極的な広報に努めており、人材開発施策のさらなる活用促進を図ってまいります。

 

 次に、若者の安定した雇用を確保する視点から、「学卒者全員正社員就職」実現に向け、大学等との連携による支援対象者の確実な把握、新卒応援ハローワークへの誘導、特別支援チームの活用等による就職実現までの一貫した支援を図ってまいります。

 また、若年無業者等への支援については、「地域若者サポートステーション」を拠点に、地方公共団体と協働した専門的な相談等の支援の充実を図るとともに、就職氷河期世代等の無業者の支援のため、対象年齢を四十九歳まで拡大するとともに把握・働きかけのための福祉機関等へのアウトリーチ展開等に着手してまいります。

 

 そして、労働者のキャリア形成支援等については、生涯を通じたキャリア・プランニング及び職業能力証明のツールであるジョブ・カードを活用して、高齢期も見据えた労働者のキャリアプラン再設計や企業内のキャリアコンサルティング導入等を支援する拠点(キャリアサポートセンター(仮称))の整備、昨年度拡充した専門実践教育訓練、今年度新たに指定基準を設けた特定一般教育訓練をさらなる広報の実施等により活用を促進し、一層効果的に推進してまいります。

 

 人材開発に取り組む事業主等の支援については、その雇用する労働者の職業能力の向上や企業の労働生産性の向上に資する職業訓練を積極的に実施する事業主等に対し、人材開発支援助成金によって訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を支援することにより、企業内における人材育成の推進を引き続き図ってまいります。

 

 職業能力評価については、技能検定について職種の統廃合を進めつつ、サービス系等の職種について、業界団体等による検定制度の構築を進めてまいります。

 また、職業能力評価基準を活用し、ホワイトカラー職種に求められる能力情報等を調査・研究する事業を開始しており、その結果を踏まえて、職業能力診断を支援するツールの開発に向けた検討を進めてまいります。

 さらに、若者の技能の向上及び技能尊重気運の醸成を図るため、技能五輪全国大会、国際大会の参加者の裾野を広げ、選手強化の取組を進めてまいります。

 

 人材開発分野における国際協力として、開発途上地域等への技能等の移転を目的とする技能実習制度については、悪質な送出機関の排除等に取り組むとともに、外国人技能実習機構等の実地検査能力の強化等により、運用の適正化に努めていくほか、ASEANの開発途上国を中心に日本の技能検定や職業訓練の移転の協力に取り組んでまいります。

 

 これらの取組を含め、人材開発行政に対する皆様の御理解と御協力をお願い申し上げるとともに、皆様の御多幸を祈念いたしまして、私の新年のご挨拶といたします。

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令和二年 年頭所感 藤澤勝博雇用環境・均等局長

令和二年 年頭所感

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            厚生労働省雇用環境・均等局長

藤澤勝博

 

 新春を迎え、謹んでお慶び申し上げます。

 皆様には、日頃から雇用環境・均等行政の推進に御理解と御協力を賜り、厚く御礼申し上げます。

 昨年は、女性活躍推進法等の一部改正法が成立し、その施行に向けた準備を進めたほか、同一労働同一賃金の施行に向けた周知啓発に取り組むなど、労働者がより活躍できる職場環境の実現に尽力した一年でした。

 新たな元号で初めて新春を迎えるに当たり、これらを受けて、更なる発展過程にある雇用環境・均等行政を一層充実させる年にするべく、職員一丸となって取り組んでまいります。

 

 具体的には、働き方の多様化がますます進んでいる状況の中で、女性活躍の推進や職場におけるハラスメントの防止、同一労働同一賃金の実現、育児休業の取得促進といった仕事と生活の両立支援、雇用類似の働き方の検討、勤労者の福利厚生の充実など、いずれも重要かつ差し迫った課題であると考えています。雇用環境・均等局においては、今年も、これらの課題や施策の実現に総力を挙げて取り組んでまいります。

 

 急速な少子高齢化の進展や社会経済情勢の変化に対応していくためには、女性をはじめとする多様な労働者がその能力を十分に発揮して活躍できる就業環境を整備することが重要です。こうした観点から、昨年五月末に、女性の活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律が成立しました。改正法では、女性活躍に関する一般事業主行動計画の策定や情報公表義務の対象企業の拡大、情報公表の強化、プラチナえるぼし認定の創設等を行うとともに、社内方針の明確化と周知啓発、相談体制の整備等といった、パワーハラスメント防止のための事業主の雇用管理上の措置義務の新設やセクシュアルハラスメント等の防止対策の強化といった内容を定めております。来年度からの施行が円滑に進むよう、取組を進める事業主に対する必要な支援を行っていきたいと考えています。

 

 働き方改革における大きな柱の一つが、同一労働同一賃金の実現です。同一企業内でのいわゆる正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差を解消し、どのような雇用形態を選択しても納得感をもって活躍できる社会を目指します。本年四月(大企業と派遣労働。中小企業は令和三年四月)からの施行に向けて、特に中小企業・小規模事業者の方に改正内容を十分理解していただく必要があります。関連省令、指針等の周知とともに、全都道府県に設置している働き方改革推進支援センターによる相談援助、業種別の同一労働同一賃金導入マニュアルや業種横断的な取組手順書、キャリアアップ助成金などによる支援にしっかりと取り組んでまいります。

 

 さらに、男性が積極的に育児を行うことは、女性の活躍推進や子育て環境の充実の観点から重要です。そのため、男性の育児休業取得を推進するために、イクメンプロジェクトの実施や両立支援に取り組む企業への助成金を支給するとともに、男性の育児休業取得を一層強力に推進するための対応策について検討を進めてまいります。

 また、子の看護休暇制度及び介護休暇制度の一時間単位での取得を可能とする法令改正を昨年末に行ったところであり、令和三年一月一日からの円滑な施行に向けて、改正内容の周知に取り組んでまいります。

 

 併せて、中小企業等における働き方改革を定着させるためには、短納期発注など長時間労働につながる商慣行の見直しを進めなければなりません。このため、昨年六月に策定された「大企業・親事業者の働き方改革に伴う下請等中小事業者への『しわ寄せ』防止のための総合対策」(しわ寄せ防止総合対策)に基づき、労使団体への要請やセミナーの実施等を通じ、中小企業が働き方改革を進められる環境整備に取り組んでまいります。

 

 また、「働き方改革実行計画」では、いわゆるフリーランスの方など、雇用類似の働き方に関する保護等の在り方について中長期的に検討することとされています。二〇一八年十月に立ち上げた検討会において、その法的保護の必要性を含めて、引き続き、特に優先すべき検討課題を中心に、検討を進めてまいります。

 

 勤労者生活の向上に関しては、中小企業退職金共済制度の安定的運営、勤労者財産形成促進制度の利用促進に取り組むなど、勤労者の福利厚生の充実を図ります。また、労働金庫の適正な運営のため、引き続き、指導・監督を行ってまいります。

 

 このように、雇用環境・均等局は、社会の関心の高い多くの課題を担っておりますが、本年も労使をはじめとする国民の皆様の期待に応えられるよう全力で取り組んでまいります。本年が皆様にとりまして幸多き年となりますよう御祈念申し上げ、新年の御挨拶とさせていただきます。

    

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